孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

エスカレートする北朝鮮の挑発的言動 高まる朝鮮半島の緊張

2013-04-03 22:45:23 | 東アジア

(上陸作戦訓練で指揮を執る金正恩第1書記 北朝鮮の挑発行為はいつものことではありますが、この若い指導者が何を考えているのか把握できないことで、今回の緊張の危機感はより大きなものとなっています。 “flickr”より By DTN News  http://www.flickr.com/photos/dtnnews/8611174653/

【「統制不能な域に達する恐れがある」】
北朝鮮・金正恩政権の真意を図りかねるような強硬姿勢・挑発的言動、それへの韓国・アメリカの対応によって、朝鮮半島では緊張がエスカレートしており、懸念も広がっています。

****北朝鮮:米韓挑発の度合い強める 局地的衝突も否定できず****
北朝鮮が、米国と韓国に向けた挑発の度合いを強めている。朝鮮半島情勢を緊張させることで住民を団結させて体制を引き締めるとともに、米国を交渉の場に引き出そうと狙っていると見られる。

ただ、北朝鮮は近年、延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件(10年)のように従来では考えられなかったような武力行使に出ることもあり、米韓両国は局地的衝突も否定できないとして警戒を強めている。

北朝鮮は27日には、南北軍当局間のホットラインを遮断すると韓国側に通告した。韓国国防省によると、南北間には、軍事境界線近くでの偶発的な衝突防止などのため8回線のホットラインが引かれており、現在は3回線が稼働していた。

北朝鮮が挑発行為を強め始めたのは昨年12月、事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験をしてからだ。今年1月22日に国連安全保障理事会が北朝鮮に対する新たな制裁決議を採択すると、北朝鮮国防委員会は2日後に「核実験は米国を狙うことになる」という声明を発表。2月12日に3回目の核実験に踏み切った。

米韓両軍は今月1日に野外機動演習「フォールイーグル」、11日に指揮所演習「キー・リゾルブ」と相次いで定例の合同演習を開始。
北朝鮮は対抗する形で、朝鮮戦争休戦協定の「全面白紙化」や韓国との不可侵合意破棄を宣言。さらに26日には、米本土や太平洋地域の米軍基地へのミサイル攻撃を示唆しながら、「1号戦闘勤務態勢」を発令したと発表し、強硬姿勢をエスカレートさせている。

一連の挑発で明確なのは、対米メッセージという面が強調されていることだ。北朝鮮はこの間、ミサイル攻撃で米本土が炎上していると受け取れる動画をインターネットで公開。これも、米国を刺激しようとしたことは明らかだ。

こうした北朝鮮の姿勢は、緊張を高めて米国を交渉の場に引き出そうとする「瀬戸際戦術」と呼ばれる従来通りの手法だといえる。
ただ、米国が現時点で交渉に応じる可能性は極めて低い。そのため一部の専門家からは、朝鮮戦争の休戦協定が署名された日で、北朝鮮が「戦勝記念日」とする7月27日に向けて、北朝鮮がさらに挑発の度合いを高めていくのではないかと懸念する声が出ている。【3月27日 毎日】
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金正恩第1書記が3月29日深夜に召集した作戦会議で米軍「攻撃計画」を決定したとの報道、更には、4月2日、寧辺の核施設再稼働宣言・・・と、その後も北朝鮮の“暴走”は止まりません。

アメリカ側も北朝鮮の動きに呼応する形で、米韓合同軍事演習「フォールイーグル」に核搭載可能なB2ステルス爆撃機やF22ステルス戦闘機を参加させ、更に、イージス艦配備を進めています。

****北のミサイル防衛にイージス艦2隻を展開 米国防総省****
国防総省のリトル報道官は2日の記者会見で、北朝鮮の脅威に対処するミサイル防衛(MD)の一環として、ミサイル迎撃能力を持つイージス艦「ジョン・S・マケイン」と「ディケーター」の2隻を西太平洋に展開したことを明らかにした。派遣水域に関する具体的な言及は避けた。

リトル報道官は、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験などの挑発を「実行する可能性は排除できない」との認識を示し、イージス艦の展開は米国だけでなく、「日本などの同盟国を守ることにも役立つ」と述べた。

一方、海上配備型(SBX)の移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」の展開については、定期的なシステム試験を洋上で実施中だと説明し、現時点では北朝鮮情勢には対応しておらず、今後の配備計画は未定だと述べた。【4月3日 産経】
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こうした事態に国連事務総長も「統制不能な域に達する恐れがある」との警告を発しています。

****国連事務総長、北朝鮮危機は「行き過ぎ」と警告****
北朝鮮が核兵器開発のために国内の核施設を再稼働すると発表したことを受け、国連の潘基文(パン・キムン、)事務総長は2日、訪問中のアンドラ公国で記者会見し、朝鮮半島の「危機」は統制不能な域に達する恐れがあると警告した。

潘事務総長は「現在の危機はすでに行き過ぎの域に達している」と述べて各国に冷静な対処を要請するとともに、今後取り得る唯一の手段は交渉だと付け加えた。
また潘氏は、「核開発に関する意見の相違を理由に北朝鮮への攻撃を企図している国はないと確信しているが、一部の国は軍事挑発に断固とした対処をする恐れがある」と述べた。【4月3日 AFP】
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北朝鮮の脅威に直面する韓国では、米韓による「先制攻撃」計画に改めてスポットが当たっています。

****北の挑発、エスカレート 米韓「先制攻撃」策定も****
抑止戦略 「核」兆候把握の段階で
韓国国防省は1日に行った朴槿恵(パク・クネ)大統領への業務計画報告で、北朝鮮による核兵器使用の兆候をつかんだ段階で先制攻撃する「抑止戦略」を、米国とともに策定していると説明した。韓国メディアが2日、伝えた。

核使用の兆候把握段階で先制攻撃を加えるという方針は、韓国軍幹部がこれまでも表明してきたが、核攻撃に言及するなど北朝鮮は威嚇のボルテージを上げ続けている。こうした状況で、米韓一体となった体系的な対応計画の確定を急ぐ必要性が出ている。(中略)

この計画は、北朝鮮の核兵器の使用兆候の段階に応じて対処要領を定めたものになるという。当初は14年に策定する方針だったが、前倒しして検討する方針を打ち出している。

先制攻撃は朝鮮半島の安全保障に重大な影響を与えることから、在韓米軍との密接な連携が不可欠だ。このため、韓国の国土防衛に責任を持つ米当局との戦略的なすりあわせが必要-と韓国政府は判断したとみられる。(中略)

在韓米軍は最近、北朝鮮の局地的挑発に対し韓国軍と一体となって反撃する共同作戦計画に署名するなどしており、米韓は軍事的に一体感を一層強化している。

核関連施設の再稼働を宣言し、軍事挑発をちらつかせる北朝鮮に対し、米韓協調での強固な安全保障体制を改めて確認し、今後は北朝鮮のいかなる挑発にも、米韓でより適切に対応する姿勢を示したものとみられる。【4月3日 産経】
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米韓による「先制攻撃」という話になると、やはり中国側の暗黙の了解が必要でしょうから、なかなか難しいようにも思えます。

【“不測の事態”の可能性のひとつ、開城工業団地
今の段階では、北朝鮮にしても、米韓にしても実際に事を起こす意図はないでしょう。多分。
ただ、緊張状態にあれば意図しない“不測の事態”も起こりえます。
そのひとつの可能性が、開城工業団地の韓国人従業員の問題です。

韓国と北朝鮮の経済協力事業として運営されている北朝鮮南部の開城(ケソン)工業団地について、北朝鮮当局は3日、韓国側関係者の団地への立ち入り(入境)を禁止しました。

北朝鮮が米韓への威嚇を続け緊張を高めつつも、これまで開城工業団地への入境を認めていたことから、韓国側では「北朝鮮は最後の一線で踏みとどまっている」「外貨獲得源なので、北朝鮮は団地を閉鎖できない」との指摘が出ていましたが、今回措置は、こうした韓国側の見方に北朝鮮側が反発したものとも報じられています。【4月3日 産経】

現在は工業団地に滞在している韓国側関係者が戻ることは許可されており、団地には韓国人約860人が残っていると言われています。
もし南北間で衝突が起きると、この韓国人は北朝鮮側の人質にもなりかねません。
韓国側は、もし抑留されるようなことがあれば軍事作戦を行っても救出することを明らかにしています。

****従業員抑留なら軍事作戦で救出も…韓国国防相****
韓国の金寛鎮(キム・グァンジン)国防相は3日、北朝鮮が同日から南北協力事業で運営する開城(ケソン)工業団地への韓国人従業員の立ち入りを禁じたことを受けて、同団地に従業員が抑留された場合、「軍事措置とともに万全の準備ができている」と述べ、軍事作戦での救出も辞さない考えを示した。

与党セヌリ党の党内委員会で語った。朴槿恵(パク・クネ)大統領も2日、外交・安全保障担当の閣僚を集めた会議で、開城工業団地で働く韓国人従業員らの安全確保に万全を尽くすよう指示。韓国政府として、軍事作戦を含む対策を備えていることを打ち出すことで、国民の不安を打ち消すとともに、北朝鮮をけん制する狙いがある。

委員会に出席したセヌリ党議員によると、金国防相は北朝鮮が開城工業団地の閉鎖のほか、サイバー攻撃によるテロや、全地球測位システム(GPS)の障害を引き起こす妨害電波を発信する可能性を指摘。北朝鮮全面戦に出る動きは見られないとの見方を示したが、金正恩第1書記の「誤った判断で、軍事挑発の可能性もあると判断している」と語った。【4月3日 読売】
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ここまで表明した以上、もし開城工業団地の韓国人従業員の往来が意図的・偶発的を問わず、何らかの理由で止まると、韓国としては軍事行動による救出が世論的にも求められます。実際に行えば、当然、北朝鮮は軍事的に反発します。

中国軍部 北朝鮮を支援してアメリカに対抗
軍事的緊張も高まるなかで、北朝鮮の暴走を止められる最も有効な手段は、やはり中国による北朝鮮への圧力でしょう。
“血盟”“血の友誼”とも呼ばれる北朝鮮と中国の関係にも変化が見られる・・・という話は、3月9日ブログ「北朝鮮制裁 実効性は中国次第 中国独自の制裁措置も」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130309)でも取り上げましたが、そうは言っても、やはり軍部にはこれまで同様に北朝鮮支援の意向が強いようです。

***中国、北朝鮮に相反する対応―「北切り捨て論」の編集者は停職処分****
中国共産党系の新聞「学習時報」の編集者、トウ聿文氏が2月に「中国は北朝鮮を見捨てるべきだ」と題する論説記事を執筆した際、北朝鮮の3度目の核実験実施を受けて中国が北朝鮮との関係を再検討している兆候と受け止める外交官が少なくなかった。
幾人かの指導的な中国の学者も同様に対北朝鮮政策見直しの呼び掛けを行った。

しかし関係筋によれば、トウ氏のこの論説記事が英紙フィナンシャル・タイムズに掲載された直後、トウ氏は学習時報で1カ月間の停職処分を受けたという。(中略)トウの処分は、米韓両国に対して繰り返される北朝鮮の威嚇と、これに対する米国の異例の軍事対応に対する中国新指導部のちぐはぐな対応ぶりを浮き彫りにしている。

多くの観測筋は、中国指導部は自らの対北朝鮮政策の失敗に焦燥感をますます募らせており、国境でのもう一つの軍事衝突見通しを懸念していると述べている。
しかしこうした懸念よりも、北朝鮮を米国に対する戦略的な緩衝として堅持したいとの中国人民解放軍司令官の希望の方が依然として勝っている。そうした軍の希望は米国のアジアへの「ピボット(方向転換)」政策の結果、一層強まった。

幾人かの学者が中国が北朝鮮との関係を格下げし、援助や投資を削減するよう呼び掛ける中で、トウ氏は2月の論説記事で、一歩踏み込んで中国政府に朝鮮統一を追求するよう促した。
中国指導部は、ミサイル防衛システムの強化や韓国への高性能爆撃機や戦闘機の投入など最近の米国の動きが、中国の安全保障上の利益への直接的な脅威になるとみている。しかし、北朝鮮が崩壊するか、あるいは韓国と再統合するとの見通しのほうがもっと大きな脅威になるともみている。いずれも米国にとって中国「封じ込め」に役立つためだ。

中国は1950−53年の朝鮮戦争で北朝鮮を支援し、現在もなお最大の援助国であり、最大の投資国であり、最大の貿易相手でもある。中国はまた、北朝鮮の体制が崩壊すれば、難民が洪水のように中国東北部の各省に流入するきっかけになると長年懸念してきた。
その結果、中国は対北朝鮮政策を大幅に変更する公算はほとんどない、とアナリストや外交官は言う。北朝鮮での経済改革を推進し、北朝鮮、韓国、中国、日本、米国、そしてロシアの6カ国協議を通じて対話を促進するとの中国の努力が失敗したにもかかわらず、大幅変更する見通しはほとんどないのだ。

中国指導部は、北朝鮮の3度目の核実験に不快感を示し、北朝鮮に対する新たな国連制裁を支持するとともに、税関の検査強化によって北朝鮮との貿易を若干遅らせた。
中国の税関統計では、北朝鮮向けのコメ輸出は1月にゼロとなり、2月には盛り返した。原油輸出も2月にゼロとなった。3月の原油輸出に関する公式統計はまだ入手されないため、こうした落ち込みが循環的なものか、あるいは中国指導部の政策決定の結果なのかは不透明だと幾人かのアナリストは言う。

しかし、こうした落ち込みが懲罰的な措置だとしても、中国指導部はこうした措置を以前に講じた例はあるとアナリストは指摘している。例えば2006年に北朝鮮が最初の核実験を実施した後だが、それは北朝鮮指導部にはほとんど効果はなかった。アナリストによれば、米国が最近アジアで防衛関係を強化しているだけに、中国は今回、北朝鮮に対する懲罰措置を打ち出す公算は小さいという。

上海の復旦大学国際問題研究院の沈丁立(Shen Dingli)副院長は「中国は5−30日ほど原油輸出を停止するかもしれないが、それは政治的なメッセージを送るだけで、何の効果もないだろう。北朝鮮は、自分たちが崩壊すれば、中国がもっと不安定になると知っているからだ」と語った。(中略)

沈氏は、中国が対北朝鮮政策を格下げすべきだと公に主張した学者の1人だ。同氏や中国の他の国際関係論学者によれば、政策決定者たちのサークルでは、中国の対北朝鮮関係をどう再定義するか異例にオープンな討議が進行しているという。

しかし沈氏のような学者は、討論の一方の側を代表しているに過ぎず、これら学者の党指導部への影響力は限定的かもしれない。とりわけ人民解放軍と比較するとそうだ。人民解放軍はアジアにおける米国の軍事的な影響力に対抗する方策を見いだそうと専念している、と幾人かの専門家や外交官は指摘している。

実際、中国の軍や安全保障部門にリンクしている論者は、極めて異なった立場を表明している。彼らは、戦略的な「ピボット」を通じて中国を封じ込めようとする米国の努力に対抗するため、中国は北朝鮮との関係を強化すべきだと主張している。(中略)

人民解放軍機関紙・解放軍報は最近の論説で、米国は朝鮮半島を不安定にしていると非難した。この論説記事は「北朝鮮が核兵器開発に傾く主な理由は、基本的には米国が北朝鮮の安全保障に脅威をもたらしているからだ」と書いた。【4月3日 Wall Street Journal】
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いずれにしても、北朝鮮をめぐり中国側と意思疎通をよくしておく必要はあるでしょう。
****北朝鮮核問題で連携を=中国国防相と電話―米国防長官****
ヘーゲル米国防長官は2日、中国の常万全国防相と電話で話し、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、米中間で対話と協力を続けていく必要があると強調した。
米国防総省によると、デンプシー統合参謀本部議長が月内に中国を訪問し、北朝鮮情勢や米中軍事交流の強化などについて、中国側と協議する予定だ。【4月3日 時事】 
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