2日からアメリカ観光中です。
グランドサークルツアーから昨日戻り、今日はラスベガスでゆっくりしています。明日は帰国です。
核兵器開発疑惑から欧米主導の経済制裁を受けているイランですが、大統領に近い革命防衛隊関連企業などはいろいろな抜け道もあって大きな打撃は受けていないといった指摘もありますが、市民経済は制裁の影響で苦しくなっています。
特に、先月あたりから通過リアルが暴落し、かねてからのインフレを加速させ、今月3日はテヘランで抗議デモがあり、警官隊と衝突したことなども報じられています
****イラン通貨リアル暴落、テヘラン市民怒り爆発****
イランの首都テヘランで3日、通貨リアルの暴落に怒ったテヘラン市民が政府への抗議デモを行い警察と衝突した。中東の衛星テレビ・アルジャジーラをはじめとした各種メディアが報じている。デモは商業地区グランド・バザールでなどで行われ、警察は暴落に怒った為替ディーラーを含むデモ参加者に催涙ガスを使用して鎮圧を図った。長引く欧米の経済制裁でイラン国民の不満は高まっており、政府は対応に苦慮しそうだ。
アルジャジーラは目撃者の話として、治安当局は抗議デモ鎮圧の一方、暴動鎮圧用の装備をした警官数百人が為替両替商の集まる地区を中心に突入し違法両替商を逮捕した。公式ライセンスを持つ両替商にも店舗を閉鎖するよう命令しており、暴落を誘導した投機筋を摘発する目的があったようだ。アフマディネジャド大統領は通貨急落について内的、外的両方に要因があるとしたが、特に「西側諸国がイランに対して行った心理戦の結果発生したもの。(西側諸国)との経済戦争の一環」と、欧米諸国の制裁が主要因との認識を示す。
メヘル通信によるとリアルは1日、非公式市場において対ドルで17-18%の急落を見せ、実勢値は過去最安値の1ドル=3万4500リアルを記録。9月20日過ぎが2万6500リアル、月末は2万9600リアルで推移していたとされ、その下落ぶりが分かる。1日以降も下落は続いており、報道によって幅はあるが現在は一段と下落し3万8000リアルから4万リアルで推移しているという。リアルの価値は1年前から約70%下落した。中央銀行が設定する公式レートは1ドル=1万2260リアル。
リアル急落の背景は核開発問題に絡んだ欧米の経済制裁にある。米国は1995年から米企業によるイランとの取引を禁止し、翌年にはイラン向け石油・ガス開発投資を行った外国企業に対し制裁を課す対イラン・リビア制裁法(ILSA)を成立させた。
加えて02年には、現在に至るまで欧米諸国とイラン最大の摩擦となっている未申告の核開発が発覚。米国はイラン銀行と取引を行う外国の銀行を制裁対象にするなど、順次制裁を強化していった。11年12月にはイラン中央銀行と金融取引を行った外国金融機関に対し、米国での銀行間決済を禁止する規定を含む米国防授権法が成立。今年に入り欧米はイラン産原油の輸入を実質的に削減もしくは禁止するなど、締め付けを一段と強化していた。
イラン側は収入源の原油輸出を実質的に断たれたため原油収入は半分以下になったとされ、経済は急速に悪化。インフレも公式の数字は20%前後だが、実際はもっと高いとの指摘は多い。当局が厳しく市民生活を監視するなか、イランで今回のような抗議・デモが発生したことは、経済制裁で国民生活が苦しくなっても核開発を強行する現政権への不満が高まっている証拠といえる。
なお、テヘラン証券取引所(TSE)のTEPIX指数には影響なく、3日終値は前日比1.45%高の2万9085.5。TEPIXは8月上旬以降、上昇基調にある。【10月4日 EMeye】
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原油収入が半分以下に落ち込むと、これまでのバラマキ政策による国民懐柔もままならなくなります。
他の商品同様に、投機の対象となる通貨価値は、いったん弱気が市場を支配すると、みなが一斉にその方向で走り出し、弱気の期待を現実が追認し、更に悲観的な予想が強まる悪循環に陥り歯止めが効かなくなります。
“このままリアル安が続けば、同国経済が崩壊するとの見方”も出ています。
****イラン、経済制裁で崖っぷち 通貨大暴落 預金保護に走る国民 ****
欧米がイランへの制裁を強めるなか、イラン通貨リアルの実勢値が暴落し、イラン経済は苦境に立たされている。このままリアル安が続けば、同国経済が崩壊するとの見方も出ている。
通貨リアルは過去1年以上にわたり下落が続いていたが、2日までの1週間で下落が加速。1日には前日比で約18%低下し、1ドル=3万5000リアルの過去最安値を記録した。テヘランのトレーダーによると、2日は3万9000リアルで取引されている。
これを受け、イランのアフマディネジャド大統領は2日の記者会見で、対イラン制裁がリアル暴落の要因だと指摘したうえで、これは同国に仕掛けられた「心理戦」だとして欧米を非難。国民に冷静な対応を呼び掛けた。同大統領はさらに「われわれは運命を共にしている。イランは偉大な国家であり、この危機を乗り越える。状況は改善するだろう」と続けた。
米国と欧州連合(EU)はイランの核開発の阻止を目的に、過去1年間にわたり貿易や金融機関への制裁を強化している。これに伴い、イランは同国最大の輸出品である原油などをドル建てやユーロ建てで売却する能力を制限されている。
同国メヘル通信の2日付の報道によると、リアル下落に伴いインフレに拍車がかかるなか、イラン市民の多くは預金を保護しようとドルや金への交換を急いでいる。現金を増やすため外貨取引を始めた人もいるという。
同報道で、地元のバザール協会のカリミ・エスファハニ会長は「外貨の価格高騰は政府の誤った判断が原因だ。一般市民が通貨を市場に大量投入した結果、インフレがさらに加速した」との分析を述べている。
イラン中央銀行によれば、同国のインフレ率は8月20日時点で23.5%を記録。7月は22.9%だった。同国紙シャルグは9月の報道で、実質的なインフレ率は29%としていた。
米ワシントンにある超党派の政府調査機関、米議会調査局(CRS)の中東専門家、ケネス・カッツマン氏は「イラン通貨の崩壊は同国経済の崩壊の前兆だ。生活必需品の配給施設も含めて国全体に深刻な影響が及ぶ可能性がある」と指摘。こうした事態に陥ったことで、イラン国民は指導層に対する不信感を一層強めており、社会騒乱が発生するのは確実との見方を示している。【10月4日 Sankei Biz】
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民主加要求を弾圧して欧米世界からは宿敵ともみなされているアフマディネジャド大統領ですが、最近の通過暴落・経済混乱で支持基盤が揺らげば、欧米とイランの関係が好転するかと言えば、必ずしもそういう訳でもありません。
国会議員選挙での保守派反大統領派の勝利、アフマディネジャド大統領とイラン最高指導者ハメネイ師との関係悪化に見られるように、近年、アフマディネジャド大統領の保守派内部における基盤の弱体化が進んでいます。
今回の通過暴落についても、保守派反大統領派からの大統領の失政の責任を問う声が強まっています。
この保守派反大統領派は、多分に現実主義的側面もあるアフマディネジャド大統領に比べ、より宗教的原則重視の強硬姿勢を持つとも見られていますので、アフマディネジャド大統領後に対外関係改善・国内政治民主化が進展することには繋がりません。
****イラン大統領は「国民バカにしている」非難集中****
米欧の制裁で経済悪化が表面化したイランで、イスラム体制指導部がアフマディネジャド大統領への批判を強めている。
「大統領は国民をばかにしている。経済悪化の原因は制裁ではなく、国政にある」
中部イスファハンで5日行われたイスラム教の金曜礼拝で、有力イスラム法学者のタバタバイネジャド師が、大統領を激しく非難した。首都テヘランや中部コムなどでの金曜礼拝でも、今月初めの通貨リアル大暴落など経済悪化の責任は大統領にあるとの声が相次いだ。
イスラム体制の頂点に立つ最高指導者ハメネイ師に近く、反大統領派の中心人物でもあるラリジャニ国会議長も2日、経済悪化の理由を「20%は制裁、80%が国政の運営だ」と大統領を糾弾した。
体制指導部の狙いは、物価上昇やインフレによる国民の不満を、大統領一人に向け、来年夏の大統領選で、より体制に忠実な人物を当選させることにあるとの見方がある。
イランの大統領は、国民の直接選挙で選ばれるが、イラン革命(1979年)で確立されたイスラム体制下で、行政府の長としての限定した役割しか与えられていない。アフマディネジャド大統領は庶民出身で、2005年の初当選以来、貧困層などを中心に根強い人気を誇る。大衆の支持を背景に貧困対策などを推し進める大統領に対し、体制指導部は独断専行への警戒感を強めてきたとされる。
大統領の任期は来年夏に満了を迎え、3選が憲法で禁じられているため、アフマディネジャド氏の退任は動かない。大統領は後継に、盟友のマシャイ大統領府長官を据え、院政を敷きたい考えだが、体制内の保守派はマシャイ氏が宗教的規律を軽視する言動を取っているとして嫌っている。一連のアフマディネジャド批判は、次期大統領選をにらんでのアフマディネジャド派追い落としの側面がある。
ハメネイ師の影響下にある司法当局は9月下旬、体制指導部を批判したとして大統領顧問ジャバンフェクル氏を逮捕。ラヒミ副大統領の訴追の可能性も浮上するなど、大統領派に対する攻勢が強まっている。【10月8日 読売】
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一方、国際的には、イランへの軍事行動・核施設空爆を主張してきたイスラエルが、昨今のイラン経済苦境を見て、経済制裁強化でイランを更に締め上げることを主張する方向を見せています。
****イスラエル、対イラン政策転換か…制裁強化へ****
イスラエルが、イランの核武装を阻止するため、欧米などに一層の制裁強化を求める戦略を強化している。
イラン経済が急激に悪化していることに加え、対イラン軍事攻撃に踏み切る姿勢をちらつかせ、イランの譲歩を引き出すという従来の方針が、国際社会の支持を集め切れていないためだ。
イスラエルのメリドール副首相は3日、訪問先のフランスで、イランの通貨リアルの下落が続いていることに触れ、「今こそ制裁を強化すべきだ」と訴えた。スタイニッツ財務相も先月末、制裁でイランの石油収入が大幅に落ち込んでいると指摘し、「イラン経済は崩壊寸前だ」と制裁が一定の効果を上げているとの認識を示した。【10月6日 読売】
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経済制裁の効果が強まるということは、それだけ市民生活の苦境も強まるということでもあります。
本来は早期の事態打開が求められるところですが、国家間の利害対立においては、市民生活への配慮は二の次にされることは、イランに限らず、いつでも、どこでも同じです。
グランドサークルツアーから昨日戻り、今日はラスベガスでゆっくりしています。明日は帰国です。
核兵器開発疑惑から欧米主導の経済制裁を受けているイランですが、大統領に近い革命防衛隊関連企業などはいろいろな抜け道もあって大きな打撃は受けていないといった指摘もありますが、市民経済は制裁の影響で苦しくなっています。
特に、先月あたりから通過リアルが暴落し、かねてからのインフレを加速させ、今月3日はテヘランで抗議デモがあり、警官隊と衝突したことなども報じられています
****イラン通貨リアル暴落、テヘラン市民怒り爆発****
イランの首都テヘランで3日、通貨リアルの暴落に怒ったテヘラン市民が政府への抗議デモを行い警察と衝突した。中東の衛星テレビ・アルジャジーラをはじめとした各種メディアが報じている。デモは商業地区グランド・バザールでなどで行われ、警察は暴落に怒った為替ディーラーを含むデモ参加者に催涙ガスを使用して鎮圧を図った。長引く欧米の経済制裁でイラン国民の不満は高まっており、政府は対応に苦慮しそうだ。
アルジャジーラは目撃者の話として、治安当局は抗議デモ鎮圧の一方、暴動鎮圧用の装備をした警官数百人が為替両替商の集まる地区を中心に突入し違法両替商を逮捕した。公式ライセンスを持つ両替商にも店舗を閉鎖するよう命令しており、暴落を誘導した投機筋を摘発する目的があったようだ。アフマディネジャド大統領は通貨急落について内的、外的両方に要因があるとしたが、特に「西側諸国がイランに対して行った心理戦の結果発生したもの。(西側諸国)との経済戦争の一環」と、欧米諸国の制裁が主要因との認識を示す。
メヘル通信によるとリアルは1日、非公式市場において対ドルで17-18%の急落を見せ、実勢値は過去最安値の1ドル=3万4500リアルを記録。9月20日過ぎが2万6500リアル、月末は2万9600リアルで推移していたとされ、その下落ぶりが分かる。1日以降も下落は続いており、報道によって幅はあるが現在は一段と下落し3万8000リアルから4万リアルで推移しているという。リアルの価値は1年前から約70%下落した。中央銀行が設定する公式レートは1ドル=1万2260リアル。
リアル急落の背景は核開発問題に絡んだ欧米の経済制裁にある。米国は1995年から米企業によるイランとの取引を禁止し、翌年にはイラン向け石油・ガス開発投資を行った外国企業に対し制裁を課す対イラン・リビア制裁法(ILSA)を成立させた。
加えて02年には、現在に至るまで欧米諸国とイラン最大の摩擦となっている未申告の核開発が発覚。米国はイラン銀行と取引を行う外国の銀行を制裁対象にするなど、順次制裁を強化していった。11年12月にはイラン中央銀行と金融取引を行った外国金融機関に対し、米国での銀行間決済を禁止する規定を含む米国防授権法が成立。今年に入り欧米はイラン産原油の輸入を実質的に削減もしくは禁止するなど、締め付けを一段と強化していた。
イラン側は収入源の原油輸出を実質的に断たれたため原油収入は半分以下になったとされ、経済は急速に悪化。インフレも公式の数字は20%前後だが、実際はもっと高いとの指摘は多い。当局が厳しく市民生活を監視するなか、イランで今回のような抗議・デモが発生したことは、経済制裁で国民生活が苦しくなっても核開発を強行する現政権への不満が高まっている証拠といえる。
なお、テヘラン証券取引所(TSE)のTEPIX指数には影響なく、3日終値は前日比1.45%高の2万9085.5。TEPIXは8月上旬以降、上昇基調にある。【10月4日 EMeye】
******************
原油収入が半分以下に落ち込むと、これまでのバラマキ政策による国民懐柔もままならなくなります。
他の商品同様に、投機の対象となる通貨価値は、いったん弱気が市場を支配すると、みなが一斉にその方向で走り出し、弱気の期待を現実が追認し、更に悲観的な予想が強まる悪循環に陥り歯止めが効かなくなります。
“このままリアル安が続けば、同国経済が崩壊するとの見方”も出ています。
****イラン、経済制裁で崖っぷち 通貨大暴落 預金保護に走る国民 ****
欧米がイランへの制裁を強めるなか、イラン通貨リアルの実勢値が暴落し、イラン経済は苦境に立たされている。このままリアル安が続けば、同国経済が崩壊するとの見方も出ている。
通貨リアルは過去1年以上にわたり下落が続いていたが、2日までの1週間で下落が加速。1日には前日比で約18%低下し、1ドル=3万5000リアルの過去最安値を記録した。テヘランのトレーダーによると、2日は3万9000リアルで取引されている。
これを受け、イランのアフマディネジャド大統領は2日の記者会見で、対イラン制裁がリアル暴落の要因だと指摘したうえで、これは同国に仕掛けられた「心理戦」だとして欧米を非難。国民に冷静な対応を呼び掛けた。同大統領はさらに「われわれは運命を共にしている。イランは偉大な国家であり、この危機を乗り越える。状況は改善するだろう」と続けた。
米国と欧州連合(EU)はイランの核開発の阻止を目的に、過去1年間にわたり貿易や金融機関への制裁を強化している。これに伴い、イランは同国最大の輸出品である原油などをドル建てやユーロ建てで売却する能力を制限されている。
同国メヘル通信の2日付の報道によると、リアル下落に伴いインフレに拍車がかかるなか、イラン市民の多くは預金を保護しようとドルや金への交換を急いでいる。現金を増やすため外貨取引を始めた人もいるという。
同報道で、地元のバザール協会のカリミ・エスファハニ会長は「外貨の価格高騰は政府の誤った判断が原因だ。一般市民が通貨を市場に大量投入した結果、インフレがさらに加速した」との分析を述べている。
イラン中央銀行によれば、同国のインフレ率は8月20日時点で23.5%を記録。7月は22.9%だった。同国紙シャルグは9月の報道で、実質的なインフレ率は29%としていた。
米ワシントンにある超党派の政府調査機関、米議会調査局(CRS)の中東専門家、ケネス・カッツマン氏は「イラン通貨の崩壊は同国経済の崩壊の前兆だ。生活必需品の配給施設も含めて国全体に深刻な影響が及ぶ可能性がある」と指摘。こうした事態に陥ったことで、イラン国民は指導層に対する不信感を一層強めており、社会騒乱が発生するのは確実との見方を示している。【10月4日 Sankei Biz】
*****************
民主加要求を弾圧して欧米世界からは宿敵ともみなされているアフマディネジャド大統領ですが、最近の通過暴落・経済混乱で支持基盤が揺らげば、欧米とイランの関係が好転するかと言えば、必ずしもそういう訳でもありません。
国会議員選挙での保守派反大統領派の勝利、アフマディネジャド大統領とイラン最高指導者ハメネイ師との関係悪化に見られるように、近年、アフマディネジャド大統領の保守派内部における基盤の弱体化が進んでいます。
今回の通過暴落についても、保守派反大統領派からの大統領の失政の責任を問う声が強まっています。
この保守派反大統領派は、多分に現実主義的側面もあるアフマディネジャド大統領に比べ、より宗教的原則重視の強硬姿勢を持つとも見られていますので、アフマディネジャド大統領後に対外関係改善・国内政治民主化が進展することには繋がりません。
****イラン大統領は「国民バカにしている」非難集中****
米欧の制裁で経済悪化が表面化したイランで、イスラム体制指導部がアフマディネジャド大統領への批判を強めている。
「大統領は国民をばかにしている。経済悪化の原因は制裁ではなく、国政にある」
中部イスファハンで5日行われたイスラム教の金曜礼拝で、有力イスラム法学者のタバタバイネジャド師が、大統領を激しく非難した。首都テヘランや中部コムなどでの金曜礼拝でも、今月初めの通貨リアル大暴落など経済悪化の責任は大統領にあるとの声が相次いだ。
イスラム体制の頂点に立つ最高指導者ハメネイ師に近く、反大統領派の中心人物でもあるラリジャニ国会議長も2日、経済悪化の理由を「20%は制裁、80%が国政の運営だ」と大統領を糾弾した。
体制指導部の狙いは、物価上昇やインフレによる国民の不満を、大統領一人に向け、来年夏の大統領選で、より体制に忠実な人物を当選させることにあるとの見方がある。
イランの大統領は、国民の直接選挙で選ばれるが、イラン革命(1979年)で確立されたイスラム体制下で、行政府の長としての限定した役割しか与えられていない。アフマディネジャド大統領は庶民出身で、2005年の初当選以来、貧困層などを中心に根強い人気を誇る。大衆の支持を背景に貧困対策などを推し進める大統領に対し、体制指導部は独断専行への警戒感を強めてきたとされる。
大統領の任期は来年夏に満了を迎え、3選が憲法で禁じられているため、アフマディネジャド氏の退任は動かない。大統領は後継に、盟友のマシャイ大統領府長官を据え、院政を敷きたい考えだが、体制内の保守派はマシャイ氏が宗教的規律を軽視する言動を取っているとして嫌っている。一連のアフマディネジャド批判は、次期大統領選をにらんでのアフマディネジャド派追い落としの側面がある。
ハメネイ師の影響下にある司法当局は9月下旬、体制指導部を批判したとして大統領顧問ジャバンフェクル氏を逮捕。ラヒミ副大統領の訴追の可能性も浮上するなど、大統領派に対する攻勢が強まっている。【10月8日 読売】
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一方、国際的には、イランへの軍事行動・核施設空爆を主張してきたイスラエルが、昨今のイラン経済苦境を見て、経済制裁強化でイランを更に締め上げることを主張する方向を見せています。
****イスラエル、対イラン政策転換か…制裁強化へ****
イスラエルが、イランの核武装を阻止するため、欧米などに一層の制裁強化を求める戦略を強化している。
イラン経済が急激に悪化していることに加え、対イラン軍事攻撃に踏み切る姿勢をちらつかせ、イランの譲歩を引き出すという従来の方針が、国際社会の支持を集め切れていないためだ。
イスラエルのメリドール副首相は3日、訪問先のフランスで、イランの通貨リアルの下落が続いていることに触れ、「今こそ制裁を強化すべきだ」と訴えた。スタイニッツ財務相も先月末、制裁でイランの石油収入が大幅に落ち込んでいると指摘し、「イラン経済は崩壊寸前だ」と制裁が一定の効果を上げているとの認識を示した。【10月6日 読売】
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経済制裁の効果が強まるということは、それだけ市民生活の苦境も強まるということでもあります。
本来は早期の事態打開が求められるところですが、国家間の利害対立においては、市民生活への配慮は二の次にされることは、イランに限らず、いつでも、どこでも同じです。
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