孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ナイジェリア  新薬開発の実態 米ファイザー社、賠償金支払いで和解

2009-02-27 21:24:33 | 世相

(事件が起きたナイジェリア・カノの子供達 “flickr”より By eekim
http://www.flickr.com/photos/eekim/2635131660/)

医薬品・医療関係者には御馴染みの企業に「ファイザー」という製薬会社があります。
2006年売上世界第1位の超大企業です。
日本で販売されている医薬品としては、高血圧治療薬の“ノルバスク”、高コレステロール治療薬の“リピトール”などは、その分野では最も多く使用されているもののひとつです。
他にも、睡眠薬の“ハルシオン”、認知症治療の“アリセプト”、更にED治療の“バイアグラ”、禁煙補助の“チャンピックス”などのユニークな医薬品もこの会社の製品です。

****米ファイザーの試験薬訴訟、ナイジェリア犠牲者と賠償金和解へ****
米医薬品大手のファイザーがナイジェリア北部のカノ州で、髄膜炎の子どもに未承認の薬を試験的に投与し、11人が死亡、多数の子どもに重度の後遺症が残ったとして、犠牲者の家族らがファイザーに賠償を求めていた問題で、ファイザーは賠償金の支払いに合意した。

26日、交渉筋に近い関係者が明らかにした内容によると、ファイザーが賠償金を支払うことで両者は基本的に和解し、3月にイタリア・ローマで示談書の調印を行う予定だという。数百万ドルといわれる和解金の正確な額は明らかにされていない。
同問題については、ナイジェリアのカノ州政府が犠牲者らを代理し、刑事、民事双方で裁判が行われていた。訴訟で州政府が要求していた賠償額は27億5000万ドル(約2700億円)。
関係筋によると、ナイジェリアの軍事政権時代に最高指導者を務めたヤクブ・ゴウォン氏と、ジミー・カーター元米大統領が交渉を仲介した。

事件は1996年4月に、ナイジェリア北部のカノ州で、はしか、コレラ、髄膜炎が大流行して3000人の犠牲者が出た際、ファイザーが未承認のワクチン「トロバン」を保健当局の承認や親の同意なしに子どもたち約200人に投与したもの。結果11人が死亡、189人に重い後遺症が残った。ファイザー側は過失を一切認めていなかった。
ファイザーに対してはこの件で、ナイジェリア政府も別の訴訟で65億ドル(約6370億円)の賠償を求めている。【2月26日 AFP】
*************************

【対処:変更せず、そのまま続行  結果:死亡】
ファイザー社の「トロバン」で検索すると、feed_the_world_0903さんのブログ「患者番号[0069]、年齢:10歳、性別:女 」(2007年7月4日)(http://blog.livedoor.jp/feed_the_world_0903/archives/64661033.html)がありました。
医薬品開発の実態を明らかにする非常に印象的な内容です。

***************
試験サイト番号[6587]  患者番号[0069]  年齢:10歳  性別:女
体重:41ポンド(18.6キログラム)

その記録には、少女は名前の代わりにそう記載されていた。
患者番号[0069]は試験番号[154-149]において、56ミリグラムの「薬」を投与された。
投薬から1日後、全身の力が抜け、片方の目は一点を凝視した。
投薬から3日後、彼女は死んだ。

記録には次のように記載されていた。
対処:変更せず、そのまま続行   結果:死亡
(後略)
【上記「患者番号[0069]、年齢:10歳、性別:女 」(2007年7月4日)より】
******************

「トロバン」はニューキノロン系と呼ばれる抗菌剤ですが、特に細菌性の脳炎、髄膜炎患者自体がアメリカ国内に少ないため、ファイザー社は早期の商品化のためこの関連データを必要としていたようです。

ファイザー社は、ナイジェリア当局に許可を得たと主張していますが、ナイジェリア政府は否定しています。
また、ファイザー社は、患者の子どもの親に新薬の実験であることを「口頭で伝えた」と言っていますが、親たちはファイザーのことも実験のことも知らなかったと言っています。
ファイザー社はアメリカで新薬の認可を得るために治験データを食品医薬品局(FDA)に提出した際に、病院の倫理委員会の承諾書等を偽造しています。

多くの新薬は世界中の特に発展途上国の貧しい人々を使って試験されているそうです。
貧しくて病院にも行った事のない人々は、他の薬の影響がないため試験データの収集には最適だという事情があります。

新薬の開発には治験が必要であり、その治験にはリスクがつきまといます。
それだけに“人体実験”とならないように、厳しいルールのもとで行う必要があります。
しかし、実際には“ルール違反”まがいの話もときおり聞きます。
アメリカなどでは新薬や新しい治療法にチャレンジすることに同意する患者さんも結構いるようですが、医療制度の違い、国民性の違いもあって、日本ではそうしたリスクをともなう治験について患者さんの同意を得ることが難しいといった話も聞きます。

同じ目的に使用する複数の薬剤、複数の治療法の評価のため、患者群を分けてそれぞれ別の薬剤・治療法があてがわれ、数年かけてその治療成績を比較するような確認試験も行われますが、試験途中で明らかに効果に差があることが判明し、それ以上その薬剤・治療法を継続することに問題があるような場合は、その薬剤・治療法の試験は中止されます。

薬剤だったか、治療法だったか、もう中身は忘れましたが、以前中国で行われた確認試験で“これだけ大きな死亡率の差がでました”といったものがありました。
その試験結果を聞いたとき、「どうしてそんな死亡率が大きく違うような試験を最後まで継続したのだろうか?」「死亡率の高いほうの試験で死んでいった患者さんはどうなるのか?」という疑問を感じたこともあります。

もし、途上国の貧しい人々によって行われる新薬開発のための治験が“いかがわしい”方法で行われているとすれば、主に私たち先進国の患者が使用する薬品が、途上国の人々の“人体実験”によって作られる・・・ということにもなります。

“対処:変更せず、そのまま続行  結果:死亡”・・・事務的な記述に恐ろしいものを感じます。


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