孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

プラごみ海洋汚染対策の国際的ルールづくり インドの深刻な大気汚染 韓国は中国との協議を提起

2019-03-06 21:42:46 | 環境

(ジャカルタで昨年11月撮影【3月6日 ロイター】 世界各地の海は悲惨な状況が進行しています)

【プラごみ海洋汚染対策で進む国際的ルールづくり 日本も支援】
プラスチックごみによる海洋汚染等の問題については、2月23日ブログ“地球温暖化対策を呼び掛ける16歳少女の訴え、欧州各地に拡大 世界で広がるプラごみ対策”でも取り上げましたが、プラごみ対策強化の流れは国際的なルール作りの形で加速しつつあります。

****汚れた廃プラ、輸出入規制案 飲み残しペットボトルなど、バーゼル条約で****
有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約の対象に、汚れた廃プラスチックを加えようとする提案が、4月末からスイスで開かれる同条約締約国会議で議論される。日本もノルウェーとともに共同提案国になる。
 
リサイクル資源として輸出入されてきた廃プラスチックは、条約の規制対象外だ。だが、飲み残しの飲料が入ったペットボトルや食べもので汚れたプラスチック皿など、他の廃棄物が混じったリサイクルに適さない廃プラスチックが、途上国を中心とした輸出先でリサイクルされずに放置され、環境汚染を招いていることが問題視されている。
 
プラスチックによる海洋汚染が地球規模の課題となるなか、ノルウェーが「リサイクルに適さないほど汚れている廃プラスチック」を規制対象物に加える条約付属書の改正案を、4月末からの締約国会議に提案。

具体例として、飲み残しの飲料や食品で汚れた紙、おむつなどが混じった廃プラスチックを挙げている。同条約は187カ国・機関が締結している。提案は締約国会議で反対する国が1カ国もなければ採択される。
 
日本は、廃プラスチックのリサイクルの一部を、途上国を中心とした海外に頼っている。昨年は約101万トン、一昨年は約143万トンが輸出され、その中には汚れたプラスチックも多く含まれている。

同条約の規制対象物になれば輸出は難しくなるが、国内でリサイクル処理能力を増やすなどして対応する方針だ。【2月26日 朝日】
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日本は、すでに中国の受け入れ中止により、プラごみ受け入れ先を東南アジアなどに変更する対応もみせてきましたが、上記のようなルールが実現すれば(“締約国会議で反対する国が1カ国もなければ”というのも随分厳しい条件ですが)、そうした“抜け道探し”も難しくなり、国内での処理システム確立に向けて一層の努力を求められます。

ただ、共同提案国として問題提起しているということは、それなりの覚悟・目算があってのことでしょう。

最もプラごみ対策が急務となっている地域でもある東南アジアでも、問題意識が共有される状況にもなっており、日本は資金拠出などでこの流れを支援しています。

****アジアの高水準海洋プラごみに懸念 ASEAN首脳会議で「バンコク宣言」へ****
東南アジア諸国連合(ASEAN、加盟10カ国)の海洋ごみに関する特別閣僚会合が5日、バンコクで開かれ、「域内における(深刻度が)高水準の海洋プラスチックごみに大きな懸念」を示す共同報道声明を発表した。

6月にタイで予定される首脳会議で、対策指針を取りまとめた「バンコク宣言」の採択を目指す。

インドネシアは海洋プラスチックごみの排出量が中国に次いで世界で2番目に多いと指摘されるなど、ASEAN域内から海に流出するごみの量は世界でも目立っている。加盟国間でも「被害を受けるのも自分たち」との認識が共有されるようになり、削減に向けた取り組みが少しずつ広がりつつある。

域外国も含めた拡大会合には日本も参加し、秋元司副環境相が出席。東南アジアの大河メコン川流域などでのごみの排出源や経路の特定に向けて、国連環境計画の活動に資金を拠出することや、ジャカルタに情報収集拠点を創設することなど、日本政府の支援策を説明した。

会合後、秋元氏は「日本も通ってきた道だ。海洋ごみを含めた廃棄物管理などの経験をASEAN各国に伝えたい」と話した。【3月5日 毎日】
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更に、日本を含むG20の場での世界的ルールづくりの動きも進んでいます。

****プラゴミなど海洋汚染の対策提言、G20に向け=科学アカデミー****
G20(20カ国・地域)各国の科学アカデミーで構成するサイエンス20(S20)は6日、主催の日本学術会議がまとめた海洋汚染対策を共同声明として採択した。

海洋プラスチックなど海の生態系を破壊・汚染する要因を低減・除去するため、各国の科学者によるデータ管理システムの構築など6つの提言から成る。6月に大阪市で開催されるG20首脳会議をにらみ、具体的な対策の立案に向けて日本政府内でも議論が加速する見通し。

S20は、各国科学アカデミーがG20首脳会議での政策提言を行うために2017年に発足。今回が3回目の開催となる。

提言内容は、
1)海洋資源開発に対し、好ましくない影響を防ぐための科学的根拠に基づく助言の必要性
2)水産資源の乱獲や汚染など、海洋生態系へのストレスとなる要因の軽減を目的とした行動
3)科学的根拠に基づく目標設定
4)研究船、観測・監視技術等の調査・研究基盤の強化や人材育成
5)世界中の科学者がアクセス可能なデータ保管装置と管理システムの確立
6)国際協力の下で推進される調査・研究活動と情報の共有化──など。

例えば、抗生物質や殺虫剤などによる河川汚染の海への影響、海洋プラスチックゴミが海洋生物に取り込まれる可能性など、様々な要因で進む海洋汚染を定量的に把握するため多くの研究が必要と主張し、地球環境の悪化に対応する必要性を強調している。【3月6日 ロイター】
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問題がこれ以上深刻化する前に世界的規模で一定の歯止めをかける必要があり、公害問題以来、環境問題への取り組みには実績もある日本の積極的関与が期待されます。

【南アジア、特にインドで深刻な大気汚染】
一方、海洋汚染以上に“一目瞭然”というか、日々の暮らしに密着しているのが大気汚染。
こちらも、連日のように世界各地での劣悪な状況が報じられていますが、その中心地はインド・パキスタン・バングラデシュなどの南アジア、特にインドは最悪です。

****インドのニューデリー、2018年に大気汚染が世界で最も深刻=調査****

(スモッグに覆われたニューデリー市内。昨年12月に撮影)
インドの首都ニューデリーは、2018年に世界で最も大気汚染が深刻な都市だった。各都市の大気汚染状況を監視するエアビジュアルと環境保護団体グリーンピースが5日に調査結果を公表した。

調査は世界の61都市の大気中の微小粒子状物質「PM2.5」の濃度を測定。それによると、ニューデリーの2018年の「PM2.5」濃度は平均1立方メートル当たり113.5マイクログラムで、中国の首都、北京の平均(50.9マイクログラム)の倍以上だった。

ニューデリーに続いて大気汚染が深刻なのは、バングラデシュの首都ダッカ、アフガニスタンの首都カブールだった。北京は8位だった。

ニューデリーでは、車や工場などの排気ガス、建設現場のほこり、ごみの焼却による煙などが大気汚染につながっている。

世界保健機関(WHO)が定める大気中の「PM2.5」の濃度基準値は、1立方メートル当たり25マイクログラム。

エアビジュアルとグリーンピースによると、中国本土では「PM2.5」の水準が前年から大きく改善したと指摘。

一方、インドには、世界で最も大気汚染が深刻な20都市中15都市があると説明した。【3月6日 ロイター】
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インドは、“世界で最も大気汚染が深刻な20都市中15都市”と、ぶっちぎり状態です。

上記記事は「PM2.5」に着目したものですが、多分同じ調査だと思われますが、下記はPM2.5など、汚染物質の濃度を基に算出される「空気質指数(AQI)」に着目しています。

いずれにしても、南アジア、特にインドの独走状態は同じです。

****世界の大気汚染指数、インド7都市がワースト10入り****
世界の都市の大気汚染を比べた新たな調査で、インドがワースト10のうち7都市を占めることが分かった。

国際環境保護団体「グリーンピース」と大気汚染の実態を監視する民間機関「エアビジュアル」が世界3000都市について、米環境保護局(EPA)が定めた汚染の程度を示す指標「空気質指数(AQI)」などのデータを発表した。

それによると、AQIが最も高い数値を示したのはインドの首都ニューデリー郊外のグルグラム。昨年のAQIの平均は135.8と、EPAが「良好」と定める値の3倍近くに上った。EPAが「全ての人に非常に有害」とする境界の200を超えた月も2カ月あった。

AQIは大気中の微小粒子状物質(PM2.5)など、汚染物質の濃度を基に算出される。

報告書によると、世界では大気汚染が原因で死亡する人が、今後1年間で約700万人に達する見通し。グリーンピース東南アジア支部のサニョ事務局長は、世界全体で労働力の損失が2250億ドル(約25兆円)、医療コストも数兆ドルに及ぶと指摘した。

中でも南アジアの状況は深刻で、ワースト20の中ではインドとパキスタン、バングラデシュが18都市を占めた。

報告書に挙げられた3000都市のうち、PM2.5濃度が世界保健機関(WHO)の年間基準値を超えていたのは全体の64%。中東とアフリカの全都市、南アジアで99%、東南アジアで95%、東アジアで89%の都市に及んだ。

中国では平均濃度が前年より12%下がり、北京がワースト100から姿を消すなど改善がみられたものの、インドネシアや韓国、ベトナム、タイの大気汚染は悪化していることが分かった。【3月5日 CNN】
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【韓国 大気汚染対策で中国に共同対策を提起】
日本では大気汚染に関しては中国・北京の状況がひと頃よく報道されましたが、さすがに中国政府も危機感を感じたようで、(北京では)一定に対応が進んだようです。(中国のような国は、“やる”となると容赦ないところがありますので、進出日本企業も対策に苦慮しているところがあるのと話も聞きます)

【3月6日 ロイター】のPM2.5では北京は8位とのことですが、【3月5日 CNN】のAQIではワースト100から姿を消したとのこと。

隣国の韓国・ソウルの大気汚染もしばしば話題になります。

****史上最悪PM2.5 韓国で大気汚染が深刻****
2019/03/06 12:15
韓国のソウルでPM2.5の濃度が観測史上最悪を記録した。韓国では自動車の排ガスや中国から大気汚染物質が飛来していることなどを受け、大気汚染が深刻化している。

ソウルでは5日、PM2.5の平均濃度が1立方メートルあたり135マイクログラムとなり観測史上最悪を記録。日本の基準では1日の平均が70マイクログラムを超えるとみこまれる場合、外出を控えるなどの注意が呼びかけられるが、ソウルではその倍近くの濃度となった。

韓国の大気汚染はしばらく続く恐れもあり、抜本的な対策を求める声が高まっている。【3月6日 日テレNEWS24】
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韓国は、中国から汚染が自国に飛来してきている・・・との不満が強く、中国は韓国自身に由来する汚染だと反論して、しばしばもめていましたが、韓国・文在寅大統領は中国との共同作業で人工降雨などを使った対策を提起しています。

****大気汚染対処へ中国と協議を 「必要なら補正予算編成も」=文大統領****
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6日、大気汚染が深刻化していることに関し、「中国から飛来する粒子状物質(PM)の影響を最小限に抑えるため、中国政府と協議して緊急対策を講じてほしい」と指示した。青瓦台(大統領府)の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官が発言を伝えた。

文大統領は、大気汚染物質の濃度が高い場合に韓中がこれを減らすための措置を同時に取る案を協議し、汚染物質を洗い流すための人工降雨の韓中共同実施を推進するよう指示した。

韓中がすでに人工降雨の技術協力で合意していることを挙げながら、「中国側は韓国の粒子状物質が上海に飛来すると主張しているが、黄海上空で人工降雨を実施すれば中国にも有益だ」と指摘した。また、中国と共同での大気汚染予報システム構築も推進するよう求めた。

文大統領は「必要なら補正予算を組んででも、粒子状物質の低減に尽力してほしい」と強調。金氏は、この補正予算は空気清浄器の設置を増やすなどの支援事業や中国との共同事業に使われると説明している。

文大統領はあわせて、稼働30年以上の老朽化した石炭火力発電所の早期閉鎖を積極的に検討するよう指示した。

金氏によると、青瓦台は独自の大気汚染対策を実施する。粒子状物質の非常低減措置が発令されている間は青瓦台の業務用車両51台のうち電気自動車(EV)6台と燃料電池車(FCV)1台のみを使用し、職員にも原則として自家用車での通勤を禁じる。【3月6日 聯合ニュース】
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もっとも、文在寅大統領の提起の根底には、中国からの汚染飛来で韓国が犠牲を被っているという考えがありますので、中国側がこの提案に乗るのかどうかはわかりません。

もし、こうした対策が有効なら、毎年大陸からの黄砂および付着する汚染物質に悩まされる日本としても、協力するのにやぶさかではないでしょう。

政治的には問題が多い三か国ですが、協力できるところで共同作業ができれば、それはまた有意義なことです。


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