孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

今年の漢字・単語から見る世相 中国は「奮」 台湾は「翻」 アメリカは「正義」

2018-12-22 22:57:36 | 世相

(訪英中のトランプ米大統領に抗議するロンドンっ子たち【12月18日 Newsweek】)

【中国は「奮」 国民がよりよい生活に向け奮闘した?】
例年選定されている「今年の漢字」は「災」でした。
まあ、確かに地震・台風・豪雨と、いろんな災害が続きましたので。気候変動の関係で、こうした災害が“例年のこと”にならなければいいのですが・・・・。

ところで、こうした「今年の漢字」というのは日本だけでなく、中国や台湾などでもやっているようで、中国の「今年の漢字」は「奮」だそうです。

「元々この字は鳥が田を羽ばたく意味で、国民がよりよい生活に向け奮闘した」(中国メディア)【12月22日 毎日】からだとのこと。

****中国の今年の漢字は「奮」、その訳は?****
「2018年今年の漢字・流行語(漢語盤点2018)」の発表セレモニーが21日、人民日報社ニューメディアビルで開催された。

中国国家語言資源モニタリング・研究センターや商務印書館、人民網、騰訊(テンセント)などが共同で主催する「2018年今年の漢字・流行語(漢語盤点2018)」の発表セレモニーが21日、人民日報社ニューメディアビルで開催された。

今年の漢字には「奮」、今年のワードには「改革開放四十年」が選ばれた。世界の今年の漢字には「退」が、世界の今年のワードには「貿易摩擦」が選ばれた。人民網が伝えた。

北京師範大学の于丹(ユー・ダン)教授は中国の今年の漢字について、「『奮』のもともとの意味は『田野を鳥が羽ばたく』。つまり、鳥が羽ばたいて大空を飛ぶ様子を表しているのが『奮』の字。2018年の中国人はまさにそんな『奮』の状態だった」と説明した。(後略)【12月22日 レコードチャイナ】
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中国が急速な経済成長をしており、“国民がよりよい生活に向け奮闘”しているのは、別に今年に限った話でもなく、上記説明だけでは今一つピンとこないものもあります。”奮闘“に何か特別の意味合い・思いがあるのでしょうか?

「奮」という字は「勇気を奮い起こして戦う」という意味合いがあり、市民社会の実相というよりは、習近平国家主席が2018年の新年のメッセージで「闘争」という言葉を挙げていたことと連動する政治的メッセージではないでしょうか。

一方、世界の今年の漢字「退」、世界の今年のワード「貿易摩擦」はよくわかります。

“「退」には、米国のイラン核合意からの離脱や、英国の欧州連合(EU)離脱を進める動きがあり、各国が自国の利益を求める実情が反映された。”【12月22日 毎日】

【昨年は“シェア”を意味する「享」】
ちなみに、昨年(2017年)は、国内の漢字・ワードには「享」と「初心」、国際的出来事に関しては「智」と「人類命運共同体」が選ばれています。

「享」について主催者側は「『共享単車(シェアリング自転車)』の普及や『共享経済(シェアリングエコノミー)』の発展が国民に恩恵をもたらした」と説明しており、納得です。

もっとも、その“中国新四大発明”とも言われた「共享単車」をリードしてきた大手事業主体「ofo」は、破産報道が流れるなど、現在苦境にあるようです。

****中国シェア自転車ofo、保証金返還待ちは1000万人突破、3年以上待ち?****
2018年12月19日、中国のシェア自転車大手「ofo」に大勢の人が保証金の返還を求めている問題で、北京商報は「返金待ちしている人が1000万人を突破した。あと3.6年待たなければ…」との記事を掲載した。これに中国のネットユーザーがさまざまなコメントを寄せている。(後略)【12月20日 レコードチャイナ】
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放置自転車問題や競争の激化で、業界は下り坂にあるようですが、「赤字を垂れ流しながらライバルを潰し合い、最後に残った1社ないし2社が市場を独占した後に利益モデルを構築していく」という中国スタートアップのビジネスパターンのなかで、「ofo」が弾き出されたということもあるようです。

昨年の国際面でのワードに「人類命運共同体」(日本語の「運命」は、中国語では「命運」)が選ばれたというのは、「本気だろうか・・・」という感も。13億中国国民がそのように思っていてくれるなら、心強いことですが。

【台湾はひっくり返るを意味する「翻」 マレーシアは「変」 ともに政治変化から】
一方、台湾の「今年の漢字」は、ひっくり返るを意味する「翻(ファン)」だったそうです。

****「翻」からの再起は @台北****
台湾でも年末は世相を映す「今年の漢字」が選ばれる。先日発表された「翻(ファン)」は「ひっくり返る」を意味する。

理由は11月の統一地方選だ。与党民進党の現職首長が次々と落選し、野党国民党が大勝利。野党候補の選挙集会では「翻転(ひっくり返せ)」のかけ声が響き渡った。

なぜ民進党はつまずいたのか。蔡英文(ツァイインウェン)政権が進めた年金改革などの不人気が指摘されるが、蔡氏の持ち味である慎重さも原因だと私は思う。

「謙虚に、謙虚に、更に謙虚に」。蔡氏は当選直後、こう語っていた。同党が初めて政権を担った陳水扁(チェンショイピエン)時代に対中関係悪化や腐敗など混乱を招いた反省からだ。

就任すると、賛否が割れる政策は先送りが目立つようになった。演説は前方のプロンプターに映された原稿を読み上げるばかり。長所である思慮深さが、逆に「指導力不足」と受け止められた。

「変わらなければならないのは私だ」。地方選大敗を受けて蔡氏は宣言し、プロンプター無しの記者会見で考えを発信し始めた。翻は「翻身」と書くと「立ち上がる」の意味になる。蔡氏は来年、再起できるだろうか。【12月20日 朝日】
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ちなみに、華人が多く暮らすマレーシアの「今年の漢字」は「変」、マハティール首相の復権による変化を示すものでしょう。

【アメリカの「今年の単語」は「正義(justice)」 トランプ時代にこそ模索されている言葉】
アメリカは漢字とは縁がありませんので「今年の漢字」はありませんが、似たようなものとして「今年の単語」があります。

今年は「正義(justice)」・・・・トランプ時代の社会混乱を示しているようです。

****何が「正義」か見えなくなった2018年のアメリカ****
辞書出版大手メリアム・ウェブスターは、今年の単語として「正義(justice)」を選出した。

これは2018年が、ロシアの米大統領選関与疑惑をめぐるロバート・モラー特別検察官の捜査や、「#MeToo」事件の告発など、事実解明が注目を浴び続けたことを受けたものだ。

ウェブスターは声明で、この単語を選んだ理由について以下のように説明している。「人種的正義、社会的正義、経済的正義、刑事司法上の正義──正義は、ここ1年間に全米で交わされた多くの議論の中心だった。」

同社によれば「正義」は、「Merriam-Webster.com」で年間を通して最も検索された単語のひとつで、検索回数は2017年と比べて74%も急増したという。

メリアム・ウェブスターは「正義」に関連した話題の出来事を例として挙げている。その一つが、ロシアが2016年の米大統領選挙に干渉したのではないかという「ロシア疑惑」とその捜査だ。

モラー特別検察官が任命されて19カ月、これまでにトランプの元アドバイザー5人を含む33人が起訴されたが、疑惑解明には程遠い。。

12月12日には、ニューヨーク連邦地裁がドナルド・トランプ米大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエンに3年間の実刑判決を下した。罪状には、2016年の大統領選前にトランプの不倫を隠ぺいすべく口止め料を支払ったことも含まれている。

判決を受けた際にコーエンは、トランプの「汚い行為」を隠ぺいすることに同意したのはトランプへの「忠誠心」からだったと述べた。トランプは、かつて右腕だったコーエンを「ラット」と呼んで非難した。

いったい正義とは何なのか、問いたくなる出来事が多かったのが今年の特徴だという。

性的暴行疑惑もうやむやに

メリアム・ウェブスターはさらに、米連邦最高裁判所判事の指名候補者ブレット・カバノーが、上院指名承認公聴会で過去について深く詮索された点にも触れている。

カバノーはトランプにとって2人目の指名候補者だったが、性的暴行疑惑で全米を巻き込む議論に火をつけた。

少なくとも3人の女性が、カバノーからセクハラと性的暴行を受けたと告発し、カバノーの指名承認手続きは難航した。告発者の1人であるクリスティーン・ブレイジー・フォードが証言をした公聴会はテレビ中継され、連邦捜査局(FBI)が調査に乗り出した。しかしカバノーはその後、賛成50反対48と僅差ながら指名承認を得てしまった。

メリアム・ウェブスターの編集者ピーター・ソコロウスキーはAP通信に対し、これらのニュースは「人種や階級を超えた、全体的な文化や社会に結びつく話」なので、その結果として、「正義」が会話で非常に頻繁に使われる単語になったと述べた。

他の「2018年の言葉」として、オックスフォード・ディクショナリーでは「有毒な(toxic)」、Dictionary.comでは「誤った情報(misinformation)」が選ばれている。【12月18日 Newsweek】
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