孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

地中海  後を絶たない中東・アフリカ難民に関する犯罪 2隻で700人超が死亡

2014-09-16 22:11:58 | 難民・移民

(イスラエルから国連運営学校が攻撃を受けたガザ地区Jabaliya難民キャンプ “flickr”よりBy Outlook1970 https://www.flickr.com/photos/126570461@N02/14823001503/in/photolist-ozRKVr-oW7ZjW-oQgpLk-oAc2U3-oyfxCv-oMQqE1-ovnD2H-ovnNGz-oKQSZS-ovof3d-ovo3ff-ovnFV8-ovo8s9-oMQSAu-oKQS1N-oMQTom-ovo4Ku-oMAFei-ovnGPx-oMQQ8d-oKQo3d-oMStav-oMAEmX-oMALs4-ovofzW-ovouyB-ovnMty-oMACek-oKQEbW-ohUSEv-oBadAF-ojLbxS-oBsMjc-oiduu1-oy4Em2-oLutuf-okp4sA-pbtQQi-oJANhL-oSg9Np-oAhU2f-omBFSr-p9QXng-oECEHZ-p33HFB-oyFby9-oUo9qz-paqGxn-oM6tpT-oy4xeu)

人身売買業者が意図的に船を沈める
ひどいニュースには事欠きませんが、下記のパレスチナなどからの難民に関する犯罪行為などは、その最たるものでしょう。

****地中海で難民700人超死亡か=人身売買業者、船沈める―IOM****
国際移住機関(IOM)は15日、地中海で難民船2隻が相次いで沈没し、計700人以上が犠牲になった可能性があると明らかにした。

船にはパレスチナなどから逃れた難民が乗っており、うち1隻は人身売買業者に意図的に沈められたという。

IOMによると、最初の事故は10日に発生。エジプトを6日に出港した後、マルタ沖で小さな船に移るよう命じられた難民が抵抗したところ、船は故意に沈められた。

救出された難民はIOMに、船にはパレスチナやシリア、エジプト、スーダン出身者ら少なくとも500人が乗っていたと証言。救出されたのは9人にとどまり、大半が死亡したもようだ。

また14日にもパレスチナ難民らが乗った船がリビア沖で沈没。約30人が救出されたが、約200人が犠牲になったとみられる。【9月15日 時事】
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カネのために数百人を海に沈めてしまう・・・人間とは、かくも残酷になれるもののようです。
テロによる無差別大量殺人や、人種的偏見からの民族浄化を目的とした虐殺などが後を絶たないことからすれば、不思議なことではありませんが・・・。

先の50日間に及んだパレスチナ・ガザ地区の戦闘によって亡くなったパレスチナ人が約2100人とされています。
犠牲者の数を比べても仕方ありませんが、2隻の船で700人以上というのは、あまりにも多すぎる数字です。

懸念されるのは、明らかになった上記事件以外に、実際はもっと多くの犠牲者が出ているのでは・・・ということです。

中東・アフリカから欧州に押し寄せる難民とその悲劇については、7月8日ブログ「中東アラブ社会  閉塞した現実世界からの脱出 「アラブの春」、イスラム過激派、そして不法移民」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140708)でも取り上げました。

そのときに“今年、イタリアで救助されたり漂着したりした人(中東・アフリカからの難民)は6万人以上。一方で、小型船に詰め込まれた人が多数死亡する例もある。”とする記事【7月4日 朝日】にも触れたところです。

このことに関しては、以下のようにも報じられています。

****想像を絶するアフリカ難民の死にざま****
イタリア最南端のランペドゥーサ島の沖では、アフリカから来たボート難民をめぐる事故や事件が続発している。


先週、トラブルから難民60人を船上で刺殺し、遺体を海に捨てた容疑で5人が逮捕された。

デンマークのタンカーが救助に当たった難民船には700~750人が乗船していたが、助かったのは569人だけだった。

ランペドゥーサ島はアフリカ大陸に最も近いため、シリアのような紛争地域やエリトリアなどの独裁国家の亡命希望者を詰め込んだ船が押し寄せる。

沿岸警備隊の目を盗んで上陸しようと待つうちに、周辺沖で転覆する事故が後を絶たない。

6月末には漁船の船内で難民40人以上の遺体が発見された。密輸業者に船の冷凍室に詰め込まれ、窒息死したとみられる。イタリア警察によれば、遺体はナチスが虐殺したユダヤ人のように折り重なっていたという。

今年になってイタリアに到着した難民は6万人を数える。これまでの最高記録は、「アラブの春」で難民が急増した11年の年間6万2000人だった。紛争の増加とともに、記録は遠からず塗り替えられそうだ。【7月31日 Newsweek】
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悲惨さにおいても、残虐さにおいても、ナチスのユダヤ人虐殺に比べられるものでしょう。

過酷な日常と「まだ見ぬ世界」への幻想
もちろん、イタリアなど難民が多数押し寄せる側の苦悩も大きな問題です。経済的な問題や治安などで大きな負担を背負うことになります。

難民を救助することは、こうした難民・不法移民が押し寄せることを助長するだけだとして、イタリア国内で移民反対を唱える右派政党からは批判もあります。

さりとて、海に投げ出された人々を何もせず放置すればよいという話にもなりません。

とりあえずの対策としては、難民船を送り出している仲介業者の摘発がありますが、これもあまり進んでいません。

危険を覚悟で(どの程度の危険かを十分に知っているかは疑問でもありますが)、大金を払ってまで欧州に渡ろうとする人々には、向うに行けば夢のような暮らしが実現できる・・・という幻想があります。

出口の見えない貧困と閉塞感の現実からわが身を救い出してくれる唯一の蜘蛛の糸にも思えるのでしょう。
そこに人身売買業者などがつけこむことになります。

しかし、“命懸けの密入国が仮に成功したとしても、自由と繁栄を夢見てたどりついた「まだ見ぬ世界」で彼らを待ち受けるのは、差別と屈辱、そして貧困です。”【前回ブログ】

難民・不法移民の問題は、国家という現実的枠組みをどのように理解するか、国境線を超えようとする人々をどのように扱えばいいのか・・・という問題でもあります。

理想的には、そんな難民・不法移民が発生しないような安定と繁栄が中東やアフリカで実現することであり、そこを国際社会が目指して努力することであることは言うまでありません。

もちろん短期に実現できるような類の話ではありませんが、ただ、パレスチナ、イラク、シリア、アフリカなどで現実に起きている紛争が政治的に解決されれば、少なからず難民発生圧力は減少します。

そうした紛争解決は、必ずしも不可能なことではなく、本来は当事国・関係国の意思さえあれば可能なことでもあります。住民の生命と生活を最大限に尊重すると言う明確な意思さえあれば・・・・。
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