孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラク  米軍死亡者は5月最少の19人、しかし・・・・

2008-06-09 14:50:50 | 国際情勢

(米軍の医療援助活動 薬をもらう列に並ぶ少女 
米軍も戦闘ばかりやっている訳ではないのですが、イラクの人々の心を掴むことはできないようです。“flickr”より By soldiersmediacenter
http://www.flickr.com/photos/soldiersmediacenter/2400262409/ )

【駐留米軍の月間死者数、5月は過去最少】
マリキ首相が陣頭指揮にたった3月末の治安部隊とシーア派反米指導者サドル師傘下の民兵組織“マフディ軍”との戦闘が、イランの影響力とサドル師の存在感を見せつけるかたちで収束したことを4月4日に取り上げましたが、4月に戦闘が再燃。

サドルシティーを中心に、米軍及びイラク政府軍とマフディ軍の間で戦いが行われましたが、5月10日にサドル師側からイラク政府と停戦に合意したと発表がなされました。
その後、戦闘は落ち着いたようです。

この間、「マフディ軍に武器を供与している」とアメリカはイランを非難。
マリキ政権はイランとも友好関係を持っていますが、アメリカとイランの板ばさみになるかたちで、5月1日議員団をイランに送っています。

****イラク駐留米軍の月間死者数、5月は過去最少*****
【6月1日 AFP】5月のイラク駐留米軍の死亡者は19人で、2003年の米軍侵攻以来、月間の死亡者数として最も少なかったことが明らかになった。
これまでイラク駐留米兵の月間死亡者が最も少なかったのは、20人が死亡した2004年2月だった。
一方、月間の米兵の死亡者が最も多かったのは137人が死亡した2004年11月だった。
イラク侵攻以来、4084人の米兵がイラクで死亡した。
米軍は前週、イラク全土で武力衝突の度合いが4年間で最も低いレベルに低下していると発表していた。
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【イラク占領による死亡者数は121万人】
確かに、イラクからの大きな戦闘や事件のニュースは、最近あまり目にしなくなりました。
もちろん、完全に収まっている訳ではなく、今日も「イラクでは8日、北部で車両爆弾による自爆攻撃で米兵1人が死亡し18人が負傷、さらに首都バグダッド中心部や各地でも攻撃が相次ぎ、民間人計13人が死亡した。」【6月9日 AFP】なんて記事が入っています。

そもそも、すでに十分すぎる被害がイラクでは出ています。
ジャスト・フォーリン・ポリシー(米独立系外交研究機関)が発表したイラク占領による死亡者数は121万3,716人でした。(米軍死亡者4084名を含むのかどうかは不明 どちらにしてもイラク人死亡者のほうが桁違いに多くなっています。)

*****イラク占領:推定よりはるかに多い死亡者数*****
「宗派間の抗争でディヤラ川へ投げ込まれた死体は数えられていない」とディヤラ県の県都バグバの住人はいう。あまりに多くの死体が投げ込まれ、川のそばで生活できなくなり、引っ越した人々もいる。
ディヤラ県の警察官は、「逮捕された民兵の自白によると相当数の遺体が処分されていて、その数を正確に把握するのは不可能だ」と語った。
民兵などが支配している地域には警察や軍隊が近づけないため、実際の死亡者数は調査結果をさらに上回ると多くの人は思っている。
「毎日のように多数の人々が拉致されて民兵の支配地域に連れて行かれたが、その後の消息は分からない」と野菜売りの男性は話す。【6月8日 IPS】
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戦闘状態にあるとき、民間人の被害者がどれだけ出ているかを把握するのは困難です。
“121万人”が実際より大きすぎるのか、小さすぎるのかはわかりませんが、すでに十分すぎる数であり、今も増え続けていることは間違いありません。
亡くなった人だけでなく、イラク内外で難民となっている人々も多数存在しています。

【イラク難民】
*****イラク難民受け入れ限界 ヨルダン外相*****
ヨルダンのバシール外相が5日、アンマンで共同通信と会見し、同国に逃れてきたイラク難民の生活を支えるための政府の財政負担が「限界に達している」として危機感を表明、国際社会の早急な支援が不可欠だと訴えた。
ヨルダンにはイラク難民が50万-60万人おり、ヨルダン総人口の約1割に相当。政府は難民受け入れのため、過去3年間で約2100億円以上の財政支出を強いられたという。【6月6日 共同】
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シリアにはヨルダン以上に多くのイラク難民が暮らしています。
受け入れ国が「限界に達している」と表明するということは、難民の生活が困窮していることをも意味します。

【マリキ首相 イランを訪問】
マリキ首相は7日、隣国イランを訪問しました。
イラクの治安や復興支援に加え、中断しているイラク治安問題をめぐる米国とイランの直接協議の再開や、米国とイラクが年末までに合意を目指す駐留米軍の地位協定交渉についても意見交換したものと思われます。
マリキ氏の首相としてのイラン訪問は3回目。
イランは同じイスラム教シーア派主導のイラク政府を支持しています。

*****イラン、イラク治安に関与 大統領「隣国の役割重い」*****
イランのアハマディネジャド大統領は8日、テヘランを訪問中のイラクのマリキ首相と会談、「イラクの平和と安全保障に対し隣国が果たす役割が極めて重くなっている」と述べ、イラクの治安問題にイランが引き続き関与していく意向を表明した。マリキ首相は7日、米国とイラクが交渉中の駐留米軍の地位協定がイランに脅威を与えるものであってはならないと表明しイランに配慮を示した。【6月9日 共同】
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*****自国の攻撃拠点化認めず-イラク首相*****
「マリキ首相は、これに先立ち7日夜に行われたモッタキ外相との会談後「イラクがイランの安全保障を損なうための拠点となることを許さない」と述べた。米国によるイラン攻撃の基地となることを拒否する意向を示した発言とみられる。【6月9日 時事】
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【存在感を増すイラン】
“隣国(イラン)が果たす役割が極めて重くなって”おり、“駐留米軍の地位協定がイランに脅威を与えるものであってはならない”“(イラクは)アメリカによるイラン攻撃の基地となることを拒否する意向”・・・・アメリカの思惑とは異なり、イラクにおけるイランの存在はいよいよ大きくなっています。
アメリカも本気でイラクから抜け出す考えなら、イランと何らかの交渉・合意が必要になっているようにも思えます。

コメント
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