玉川上水の辺りでハナミズキと共に

春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり (道元)

*小説・舟を編む

2024年05月13日 | 捨て猫の独り言

 「辞書は言葉の海を渡る舟だ。ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮びあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で正確に思いをだれかに届けるために」これは小説「舟を編む」の一節だ。舟と船の違いについて、漢和辞典は漢の時代は船でそれ以前は舟と説明している。新しい辞書作りに情熱を傾ける人々のすがたを描いた小説だ。

 辞書を言葉の海を渡る舟に見立てるのは、大きな慈悲を船に例える仏教からきているのは明らかだ。青梅の塩船観音寺を訪問した直後にこの本を手に取ることになったのは、おもしろい縁だと思う。作者は1976年生まれの「三浦しをん」で、2011年35歳の時に光文社から単行本がでて、翌年に本屋大賞を獲得、2013年には映画化もされている。

 この小説が、かなり話題になったというかすかな記憶が蘇った。読み始めは、真締(まじめ)光也、林香具矢(かぐや)、岸辺みどりなどの登場人物の名前に心もとない気がしたが、そのうちそれも解消されていった。小説は玄武書房の辞書「大渡海」の完成までが描かれるが、第四校の際に「見出し語」の記載漏れが発生し、総動員体制でチェックにかかるという事件が起きる。

  

 現実の岩波書店の「広辞苑」や三省堂の「大辞林」などの中型の国語辞典の見出し語は約24万語だという。ことばにも生き死にがあるから「語釈」も変化して改訂版が出される。ひとつの言葉について複数の使われ方が派生した場合、現代の使われ方を優先するのではなく、元々の意味から順番に記すのが広辞苑の鉄則という。それに対抗するかのような、三省堂の「新明解国語辞典」(小型)の語釈はかなり前からそのユニークさが話題を集めていた。

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