11月15日(火)の第6回目の「土木史と技術者倫理」の講義は、「自然災害の克服」がテーマでした。
深く扱ったトピックは、信濃川の治水で、大河津(おおこうづ)分水路の話です。人物としては宮本武之輔に大きくスポットを当て、大成建設が主導でつくったビデオ教材も活用しています。
宮本武之輔の上司は青山士(あきら)でしたが、二人とも廣井勇先生の薫陶を受けています。廣井先生の弟子筋を下っていくと、私もその中にいることになります。大きなつながりの中で生きているし、大河津分水を初めとする様々な公共事業により、新潟の方々の暮らしは激変しました。分水がなされる前は三年に一度は洪水で水田もほとんど台無しなる悲惨な状況で、まさに子女を売らざるを得ない貧困にあったとのことです。
廣井先生がおられなければ、おそらく私が土木史の授業を教えていることはないと思います。コンクリートの研究者にもなっていないのではないかと思います。
また、大河津分水の公共事業がなければ、私の土木史の授業を受けている方の中には存在しなかった人もいるかもしれない。何しろ、新潟の歴史が完全に変わっていますので。
我々すべて、生かされていると思うのが正解のように思います。
昨日の朝、私が今の職業に就いたきっかけのことをぼーっと考えていました。
学部3年生秋のときに、岡村甫先生の小人数ゼミ「人間学とリーダーシップについて考える」を受講しました。今、私は全く同じ名前の少人数ゼミを学部3年生用に開講しています。昨日の3限はこのゼミの2回目でした。
このゼミも大きなきっかけとなり、私は4年生の研究室配属でコンクリート研究室を選びました。
配属された4月の研究室歓迎会(学士会館分館で)で、岡村教授がご挨拶されたとき、6人並んだ4年生の中の私を指差し、「あなた名前なんだっけ。細田君か。皆さん、彼のような姿勢(考え方)で、1年間研究に取り組んでください。」と言われたのです。岡村先生が私のことで知っておられることと言えば、少人数ゼミでのパフォーマンスのみです。これまでと全く違う情報に触れ、岡村先生という人物に魅了され、一所懸命にゼミに取り組んでいたのだろうと思います。それにしても岡村先生の言葉には驚きましたし、うれしかったのも覚えています。
その後、コンクリート研究室で研究活動に携わり始めるわけですが、まあ結果が出ず血ヘドを吐く思いでした。卒論、修論は今思えば完全な撃沈。ですが、このブログにも何度か書いたように、卒論のテーマはコンクリート構造物の品質確保であり、修論は材料と構造をつないだシミュレーションと検証、です。今でもしつこく続けています。下手するとライフワークになりそうです。
博士の研究(膨張コンクリート)は最初は岡村先生にご指導いただきましたが、博士2年になるときに岡村先生が高知工科大に行かれたので、その後は岸先生にご指導いただきました。途中から何とか研究というものが少し分かってきて、最後の1年半くらいは研究にのめり込みましたが、自分の至らなさを多く発見する時間となりました。
修士1年の終わりごろに博士課程に進学する決意をしましたが、昨日の朝、思い返すと、やはり4年生の歓迎会での岡村先生のお言葉が最初のきっかけのように思います。
何とかその言葉(ご期待)に応えられるよう、成長したい、という気持ちが今でも原動力の一つになっているようにすら感じます。
あの歓迎会から21年です。人生の半分近く、あの歓迎会から経過しているわけです。多少は成長していないと何をやってるんだ、という話になりますね。
博士課程への進学、その先に大学教員になりたい、という道を選んだのは、これもブログに何度か書いていますが、その道が、自分にとって最も努力を必要とする道だと思ったからです。これは偽りない理由です。そしてその努力は、大変だろうけど、自分にとっては苦痛ではないだろうと思っていたと思います。
今も、これからも、努力の日々が終わることはないと思いますが、私ももう後進を育てる大きな大きな役割を担っていますので、責任感をしっかりもって日々を過ごしていくつもりです。
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