黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

弁護士所得の現状(平成23年度版)

2013-04-04 16:06:11 | 弁護士業務
 以前,東京国税局の統計による弁護士所得の記事を掲載したことがありましたが,平成23年度分について国税庁(全国版)の統計が公表されていること,以前の記事に一部誤りないし不適切な記述があることが判明したこともあり,改めて最新情報をお送りすることにします。検討会議へのパブコメで国税庁の統計資料を引用する場合には,以前の記事ではなくこちらの記事を参考にすることをお勧めします。

<参考URL>
平成23年度申告所得税統計(国税庁)
http://www.nta.go.jp/kohyo/tokei/kokuzeicho/shinkoku2011/shinkoku.htm
【大誤報】 司法改革の途方もない大成功 弁護士所得の中央値は300万円未満?(街の弁護士日記)
http://moriyama-law.cocolog-nifty.com/machiben/2013/03/300-8147.html

1 平成23年度の弁護士所得分布
 平成23年度は,『弁護士』の事業を行う者として所得税の確定申告をした者(還付申告者を含む)は34,932人であり,所得階級別の人数は以下のとおりです。

  損失額のある者  7838
  70万円以下     5714
  100万円以下     295
  150万円以下     424
  200万円以下     502
  250万円以下     544
  300万円以下     608
  400万円以下    1534
  500万円以下    1596
  600万円以下    1555
  700万円以下    1542
  800万円以下    1353
  1000万円以下   2186
  1200万円以下   1665
  1500万円以下   1816
  2000万円以下   1932
  3000万円以下   1791
  5000万円以下   1152
  1億円以下      639
  2億円以下      194
  5億円以下       38
  10億円以下      13
  20億円以下      0
  50億円以下      1

 右端をうまく揃えられないのが難点ですが,読むのに支障はないでしょう。以前書いた記事では,統計の外数として「損失額のある者」(弁護士業による所得がマイナスになっている者)が表示されているのを見落としていたのですが,これにより弁護士業を行っている者のうち,年間所得がマイナスの者と70万円以下の者を合わせると,それだけで全体の約4割に達しているという恐ろしい実態が浮き彫りになりました。
 ただし,『街の弁護士日記』でも指摘されているとおり,日弁連によると平成23年度の弁護士数は30,518人であり,上記の数字とは一致しません。確定申告における事業の内容はあくまでも自己申告制であり,『弁護士業』として確定申告を行っている者が必ずしも日本の弁護士(弁護士として日弁連に登録されている者)とは限らないことがその原因と思われますが,弁護士登録者数と確定申告者数の相違が生じている具体的な原因としては,主に以下のようなものが考えられます。

<加算要素>
 弁護士登録をしている者であっても,以下のような者は申告者数に含まれていない。
・年間所得が20万円以下であり還付される税金もないので,確定申告をしていない者(法律上確定申告の義務はない)
・給与所得者として扱われている弁護士(いわゆる企業内弁護士やイソ弁で,個人事件を受任していない者)

<減算要素>
 日弁連に弁護士登録をしていない者であっても,以下のような者は弁護士業を行う者として確定申告をしている可能性がある。
・外国法事務弁護士(2012年4月1日時点で357人)
・外国法事務弁護士としての登録をしていないが,外国の弁護士資格を保有しており,主に外国で法律事務を行っている者(実数は不明だが,1億円を超える高額所得者でも還付申告を行っている者が結構いるので,これらの者は外国の弁護士である可能性が高いと思われる)
・既に弁護士登録を抹消しているが,税務署には事業内容の変更を届け出ていない等の理由で,統計上はなお弁護士として扱われている者
・弁護士資格を有しない法律事務所の事務員等であるが,固定給がないなどの理由で事業所得として確定申告をしている者(このような場合でも,『弁護士業』に従事していることに変わりはない)
・弁護士資格を有しないにもかかわらず,弁護士を名乗って法律事務を行っている者(完全に弁護士法違反であるが,国税庁に非弁行為の取締権限はなく,確定申告時に資格の有無が調査されるわけでもない)

 以上のような要因があるため,国税庁の統計も『弁護士の所得分布』として完全なものとは言えないのですが,それでも弁護士の約4割が年間70万円以下の貧困層になっている可能性は十分に高いといえるでしょう。

2 弁護士低所得者層の推移
 以下の数字は,平成20年度以降における弁護士確定申告者の総数(定義は上記と同じ),そのうち年間所得がマイナスであった者及び年間所得が70万円以下であった者の推移です。

            総数       マイナス       70万円以下
  平成20年度 27039(14232)   3569(2615)     2661(2420)
  平成21年度 31687(15894)   6154(5029)     4920(4610)
  平成22年度 33670(16527)   7185(5814)     5818(5468)
  平成23年度 34932        7838         5714

 括弧内は,東京国税局管内の内数ですが,平成23年度分についてはデータ未公表のため掲載しておりません。なお,平成19年度以前の統計については,還付申告を行った者の数が含まれておらず比較の対象として不適当であることが判明したため,掲載しないものとしております。
 上記の数字を見ると,弁護士業を行う確定申告者については,所得金額がマイナスの者・70万円以下の者ともに,この3年間で倍以上に急増しており,しかもその大半が東京国税局管内(東京都,神奈川県,千葉県及び山梨県)に集中していることが分かります。
 「だったら地方で開業すればいいじゃないか」と思う人がいるかも知れませんが,地方の需要はもともとが少ない上に,60期~64期あたりでほとんど食い尽くされています。今どき地方に行っても,下手をすればノキ弁にすらなれません。

3 余談
 なお,新たな弁護士業務の開拓(法曹有資格者の活動領域拡大)については,検討会議の中間的取りまとめ(案)では何やら景気の良いことばかりが書かれており,残念ながらマスコミもその内容を鵜呑みにして報じているところが多いようですが,実際には弁護士の需要なんてほとんどありませんからね。本当は需要がないんじゃないかという有識者の意見は,官僚が圧力をかけて握りつぶしています。
 検討会議のいう『法曹有資格者の活動領域拡大』の現状については,第10回会議における日弁連説明資料のうち以下の部分を引用すれば十分でしょう。

「このように新人弁護士の「就職難」は,法曹志望者の激減とOJTの機会が不足する新人弁護士を多数社会に輩出するという問題を生む大きな要因になっていますが,現時点において最大の問題は,この問題を早急に解決する何らの目途も,方策も提示されていない点にあります。
 第9回法曹養成制度検討会議では,法曹有資格者の活動領域拡大に関して報告がなされましたが,そこでは法曹が各分野で必要とされていることは確認されたものの,その拡大には財政面や制度的な対応が必要であるところ,現状では定量的又は具体的な見通しをもった方策は提示されておらず,したがってその急激な拡大は現実的には見通せないというものであったと理解しています。」


 学生の皆さん,間違っても法科大学院なんて入っちゃだめですよ。間違って法科大学院に入ってしまった人も,どんどん借金が膨らんで取り返しがつかない事態になる前に,早く自主退学した方が身のためですよ。こんな状態になっても政府が何もしようとしない以上,頑張って司法試験に合格しても全く意味はないのです。

9 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-04-04 19:58:02
このデータ、今後の被害防止のために、法科大学院試験会場の前で配ってもいいレベルですね。
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自同律の不快 (ばけねこ)
2013-04-04 22:40:30
くろねこよ、そんなネガティブなことばっかり言うなよ。

そのうち事態は好転するよ。

法科大学院生はみんな頑張ってるんだぜ、希望を捨てずに
①合格者の半減
②ローの半減
③前期修習&給費制の復活
④ローでちゃんと答案練習をさせること
を希望します
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Unknown (Unknown)
2013-04-05 02:45:04
希望したところでロー関係者も弁護士会も政府も叶えてくれるはずもないだろうから、このままロー制度も含め司法を完全に破壊されるのを待てばいいんじゃないかなw
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Unknown (Unknown)
2013-04-06 09:46:52
崩壊やなんてそんなひどいこと言わんといておくんなされ

もう500万も払い込んでしもたがな

①弁は立つけど筆は立たん
②えらそにしてるけど基礎はユルい
③もともとはしにも棒にもかからんのも結構多い

それがロー生。ローに行って後悔しますわ。合格しても貧民の仲間入りだとは。 
もう鼻血も出えへんがな
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Unknown (Unknown)
2013-04-13 01:59:06
法科大学院に合格したと挨拶に来られた学生さんに尋ねたら、
これまでの奨学金とこれからの奨学金あわせて800万円とのことでした。
もちろん、奨学金=借金で返せなくなるから、今すぐ引き返せ、と延々と説得しました。
通じていればいいんですけど。
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Unknown (Unknown)
2013-04-13 13:56:57
多重債務者になる人と同じ感覚かも。
依頼者に共感できる豊かな人間性という意味では、適格なんじゃない?
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Unknown (Unknown)
2013-04-20 18:47:37
少し前の話ですが、わたしの職場に配属になった若い(6※期)弁護士(組織内弁護士)から、配属初日に、登録を一時抹消するから、作る名刺の肩書から弁護士を抜いてくれと言われて、そんなにも懐が厳しいかと思ったことがありましたが・・・
ちなみにうちの組織内弁護士の給料は国の任期付の俸給表と同じ
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Unknown (Unknown)
2013-05-09 17:25:59
↑企業内で弁護士業務をやらないなら、登録抹消するのは当然だと思うけど。業務やらないのに年間数十万円も払うの馬鹿らしいし。
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Unknown (Unknown)
2013-07-14 08:09:32
①肩書きはあるけど実際はあほ
②えらそにしてるけど司法試験のことがわかっていない
③他の学者からばかにされているの知らずに有力学者面するの結構多い

あんたのことや。国立K大 某民訴教授。
大御所に「大の男が一生かけてやるテーマか」といわれてましたで。
あんたが声を発したら迷惑ということがわからんのか。
ほんまに法科大学院なんか行く奴は、あほ。
ぼんくら教授のために高い献上金捧げて自分の人生狂わせてあほちゃうか。
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