四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

冬から春が旬である貝がそろそろ終盤、初鰹・鰈・鱸・鯵など夏の魚が出てきました。

のがみのむきたての貝の話

2016-09-15 23:35:00 | のがみの〇〇の話
のがみのむきたての貝の話

今、築地003_4赤貝(あかがい)です。冬場ちょうど美味しい季節です。Nogami1115_19_2
今、築地トリ貝019です。1月下旬から始まります。今、築地バカ貝(通称:アオヤギ)です。003

3月、4月、最高潮においしくなります。

当店のネタケースには殻に入ったままのむいていない貝がゴロゴロ置いてあります。
帆立、ほっき、海松(みる)貝などもそうです。
何故そうするのか?
むきたての方が美味しいからです。
殻から取り出したばかりの身はその貝が持っている本来の強い香りがします。むいて開くと時間が経つにつれ若干持ち味が薄れていくか僅かに変化していきます。貝は生きています。生食でお出しする時は必ず生きています。
果物のむきたてを召し上がっていただく感覚に近いでしょうか。
オーダーが入ってからひとつずつむきますのでお時間をいただきますが、待っていただくだけの、小さな、静かな感動はあると思います。

おかみノート あおやぎの仕込み

水と塩が入った鍋に、あおやぎのむき身を入れて火にかけ
そのなかに素手を突っ込みかき混ぜていく。
水からお湯へどんどん温度が上昇してくる中、かき混ぜる動作を
主人はひたすら続けている。
鍋のフチに泡が立つ手前くらいの、普通じゃ手を入れ続けていられない
ところまでに達してから
「くぁっ・・・」
という叫びと吐息の中間くらいの声とともに鍋をコンロからはずし
流水で貝のぬめりや汚れを洗い流していく。
右手は手首まで真っ赤になっている。
「なんでそんな石川五右衛門みたいなことするの」
私が訊くと主人は
「あおやぎを仕込むお湯の温度は、ぬるすぎてもダメだし
熱すぎてもダメで、それを見極める温度というのが
自分の手が我慢出来るか出来ないかのギリギリのところなんだ」
と、流水に手を浸したまま言った。
「熱湯にさっとつけて流水にとるっていうやり方もあるけど
俺はこのやり方でずっときてるから」
自分の手を煮るギリギリのところまでもっていくこと自体ビックリしたし
それを揺るぎなく続けていく職人の技は
ほんとにすごいなと思った。
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