煮蛤を作る工程には“茹でる”というのがあります。ぐつぐつ煮ると身が硬くなってしまうので、名前は煮蛤ですが実際には煮ません。さっと火を通すだけです。
仕入れてきた蛤はまず殻から外し、砂などを流水で洗い、冒頭に書いたように身を軽く茹でます。火が入ったらすぐザルの上に引き揚げます。余熱がどんどん入っていかないように団扇で急速に冷まします。
身を開きワタを取りバットに並べます。酒・砂糖・醤油で調味した浸け汁を煮立て、鍋ごと冷水に当てて蛤と同じ温度まで冷まします。
蛤と浸け汁を同じ温度にしてから併せるのには理由があります。傷みにくくすることと蛤のエキスが汁に溶け出すのを防ぐためです。
仕込みが終わった煮蛤はお客様に召し上がっていただくまで浸され、出番を待ちます。
仕入れるところは桑名、鹿島、九十九里などが多いです。
珍しいところでは、千葉・飯岡産の殻が真っ黒な蛤で“黒丸(くろまる)”という品種を入れることがあります。
「旨みが他の蛤と同じようにありながらシャープな味わいだね」と評されることが多いです。「エッジが効いている」とも。
にぎり・つまみ共にハマヅメと呼ばれる蛤の煮汁を煮詰めたタレと一緒にどうぞ…。