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Hanshin Tigers Series 2024

激突! 野間口vs.能見(社会人野球日本選手権・27日)【後篇】

2005-01-30 19:08:08 | Tigers DEN β
【5回裏】シダックスの攻撃。能見にパーフェクトに抑えられているシダックス。4番キンデランが初球(130㎞)を叩いて、打球はセンターへ! センターが背走、フェンスにぶつかりながら、キャッチ。1アウト。続くキューバ人、パチェコには初球スライダー(123㎞)で警戒して、内角にワンバウンド(1ボール)。キャッチャーも捕球できず。2球目もスライダー(125㎞)を続けて、三遊間を破るヒット! キンデランの一発に臆したバッテリー。その隙を突かれた。 

 6番・入江の初球もスライダー(123㎞)だったが、これは左バッターには有効。空振りを取る。2球目(123㎞)は見送られ、3球目(137㎞)の真っ直ぐも外れる。4球目(136㎞)もボール「1-3」。リズムが乱れている。5球目渾身のストレート(139㎞)も低く外れて、四球。能見はガックリうなだれる。帽子を勢いよく脱ぐ。しかし、気を取り直して、キャッチャーに正対する。7番・松岡への初球(125㎞)これを狙われていた。四球の後の初球。定石だ。これを叩いて、レフト前ヒット! パチェコが生還して、「1対1」同点に追いつかれる! 

 8番・徳山に代わる代打、和田隼人。シダックスの攻勢だ。初球スライダー(126㎞)を空振り。初球を狙うのも代打の「定石」。2球目139㎞のストレートが外角一杯に決まって、2ストライク。甦ったか、能見。球審が気持ち良さそうに右手を挙げた。3球目スライダー(126㎞)で空振り、3球三振。この大会不調の和田。力み過ぎて、3つで料理された。

 9番・坂田への初球(141㎞)真ん中高めでストライク。坂田は思わず「高いヨ!!」と左の掌でジェスチャー。「気にするな!!」と3塁側ダッグアウトから声援が飛んだのだろう。頷いて、2球目を待つ。2球目(126㎞)は冷静に見送る。3球目(140㎞)は打って、ファウル。4球目(137㎞)は左打者の一番遠い外角低めにズバッ! 「ストライク!」球審の掌が元気に挙がる。坂田はガックリ。これは「プロ」でも打てない……。能見、会心のピッチングで、失点した【5回裏】を切り抜けた。

【7回裏】シダックスの攻撃。4番キンデランの第3打席目。立ち向かう能見。初球ストレートでストライク。2球目スライダー(121㎞)が低く。3球目ストレート(138㎞)内角低めにズバッ、とストライク。思わず打席を外すキンデラン。読みが外れたか? 4球目スライダー(119㎞)バットが回って、空振り三振! キューバの主砲を抑え込んだ、未来の虎のエース(?)。首を振りながら、ダッグアウトに帰るキンデラン。ダッグアウトに入る前、バットでヘルメットを叩き、ダッグアウトに入っても、首を振っている。キューバの主砲のプライドがズタズタにされたか?

 初球(139㎞)。バッターは5番・同じく、パチェコ。2球目スライダー(124㎞)で空振り。3球目(128㎞)はボール。4球目もスライダー(125㎞)。これを打って、ショートゴロ。その瞬間、パチェコ、何故か思わず手を叩く。「悔しい」。パチェコも首を振る。手を振りながら、ダッグアウトへ。キューバ人のプライドをまたしても傷付けたか? 故国に帰っても、この「ノウミ」の名は忘れないかもしれない。

 初球(125㎞)。バッターは6番・左の入江。2球目(122㎞)。3球目(126㎞)。ここまでスライダー3球。4球目ストレートでストライク。5球目(141㎞)でファウル。5球目、勝負に行ったスライダー(126㎞)で空振ったが、キャッチャーが捕球できず、ファウルチップ。6球目もスライダー(126㎞)今度も空振って、今度はキャッチャーがミットに当て、バッターにタッチ。空振り三振が成立。入江は俯いて、ダッグアウトに帰る。能見、この試合、10個目の三振を奪って、1塁側ダッグアウト、ナインの輪の中に迎えられる。

【8回表】大阪ガスの攻撃。一方、野間口。7回表からセットポジションに変えている。簡単に1アウトを取った後、2番・小兵、溝下に粘られ、2ストライクを取りながら、4つ続けてボールを並べ、四球。1アウトでランナーを許す。ダッグアウトの野村監督も思わず、立ち上がる。顔をしかめる。この辺りが、愛弟子・野間口の「甘さ」か……「プロ」でどう転ぶか?

 3番・岩本への初球(141㎞)は高めに浮いて、ボール。2球目(138㎞)も高めに浮いて、2ボール。フィニッシュで(身体の)バランスを崩している、野間口。もはや「限界」が近づいているか? 「気力」と「体力」。3球目(140㎞)でファウル。4球目、同じく小兵・岩本、バントの構えで、バットを引いて、ボール(138㎞)。「1-3」。揺さぶりを掛けている。揺さぶられる、野間口。マウンドを降りながら、球審に「バットを引くのが遅い」とアピールするが、認められない。この球審には嫌われている? 余裕がない野間口、藁(わら)にも縋(すが)りたい、アウトが欲しい心境か。

 5球目(139㎞)意地でストライク。6球目(141㎞)意地で内角、ファウルを打たせ、「2-3」フルカウント、7球目。勝負球はストレート(139㎞)。これを弾き返した岩本。打球は野間口の頭上を越えて、センターへ。人工芝に弾んだ球はセカンドの脇を抜けて、センターへ転がっていった。ランナー・一、二塁。しかし、4番・澤多をファーストフライに打ち取り、5番・牧野を142㎞のストレートでセカンドゴロに打ち取り、ピンチ脱出。この回を切り抜けた。

【9回表】大阪ガスの攻撃。マウンドに野間口は「いなかった」。2番手、杉本忠。野間口とは一転、下手投げの技巧派投手だ。「エース」からマウンドを譲り受け、しかも【9回表】「1対1」。プレッシャーがあったのだろう。ボールが2つ先行し、ストライクを取りに行った3球目を6番・小野に狙われた。センター前ヒット! ノーアウトでランナー・一塁。

 ふう~と息を吐き、帽子を取り、表情が「硬い」杉本。しかし、緊張感は打席の7番・栗栖も同様。バントの構え。初球で決めて、ランナーを進める。緊張感から解放されて、笑顔で帰る社会人選手、栗栖。窮地に陥ったシダックスは、杉本に見切りを付け、「左腕エース」武田勝を送るが、8番・左の小倉に四球。緊張感の伝播は続く……9番・右の代打、中本拓が出てきたところで、4番手に岩渕秀和を送るが、左中間を破られ、万事休す! 2者が帰り、「3対1」。1塁側のチアガールのお姉さんたちも意気、上がる。

 試合は能見が【9回裏】打者二人を討ち取り、2アウト。「覇権」を目指すシダックスをついに追いつめるが、3番、この試合にキーポイントとなったセカンド佐藤が、レフトスタンドに意地の一発! ホームランを放ち、「3対2」。1点差に詰め寄るが、能見が後続を断つ。最後のバッターは4番キンデラン、だった。キューバの主砲を4打席封じて、ゲームセット! 能見は自信を胸に「プロ野球」に旅立つ。その前に「決勝戦」が待っていたのだが……。

 野間口は途中で力尽きた。あれが「限界」だった。ピッチャーの交代が裏目に出た、と批判されたが。この勝負は「プロ野球」に持ち越される。二人の勝負は「1対1」、タイ・ブレークのまま、だ。「読売ジャイアンツ」対「阪神タイガース」。伝統の一戦にまた一つ「因縁」の対決が生まれた。野間口を送り出したのは、野村克也監督。それもまた「因縁」。二人の決着は……!?

(2004年12月27日/HP掲載)

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