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胃下垂・・気陥

2008-12-10 16:26:27 | 中医学
中医学では、内臓一般の下垂症状を「気陥」という状態ととらえます。なぜ本来
の位置より臓器が下垂するのか、その本質を見極めて治療を行います。

「気」とは車でいえばガソリンのようなものです。人間のからだを動かしたり、
温めたり、栄養したり…と、気には様様な、そして大切な働きがあります。
この「気」の働きのなかに<固摂作用>といわれる働きがあります。

気の固摂作用とは、
○気・血・津液の過剰な排泄を抑え、留める。
○内臓の位置を保つ。
というものです。出血や汗がダラダラと出るのを抑えたり、尿、精液、帯下
などの過剰な排泄を防ぎ、内臓が下がらないように一定の位 置に保つのが、
気の固摂の働きです。
この固摂作用の中で、特に内臓の位置に保つ働きが失調することを「気陥」
と言います。
内臓下垂の症状を呈する治療では、下垂している器官が胃であっても、腸で
あっても、また子宮であっても、考え方は変わりません。「気陥」という気の
失調を改善することが、すべての下垂症状の治療となります。

☆気陥とは?☆
気陥は「中気下陥(脾気下陥)」と言われます。
「中気下陥」は脾気虚の進行した状態で、脾の「昇提作用」が失調して下垂
症状をおこすと考えられ、胃下垂もこの「中気下陥」という証であらわします。
「中気」とは、人体の真ん中にあり、おもに飲食物の消化・吸収を
つかさどる「脾」の気を指します。
「下陥」とは字の通り、下に陥ちる、下がるということです。
脾気が下がる(上がらない)=胃下垂ととらえるのです。

○脾○
では、この「脾」がどのような働きをするのか、脾の生理作用を見てみま
しょう。

<脾は運化を主る>
胃・小腸で飲食物の中から取り出された水穀の精微は脾で吸収され、さらに
上焦部の肺へ送られます。これが気・血・津液を作るもとになります。
脾は、胃や小腸、大腸を含めた飲食物の消化吸収に関わるすべてを管理している
ため、「脾は運化を主る」と言われます。
脾の運化作用が失調すると、食欲不振・腹部のもたれ・食後倦怠感や眠気・
軟便・下痢・むくみなどの症状があらわれます。

<脾は血を統す>
気の固摂作用によって、脾は血が経脈を流れる際に、脈外に漏れださないように
監督して、血の漏出を防いでいます。これを「脾は血を統す」といいます。
この働きが失調すると、鼻血・不正出血・生理がダラダラ続く・皮下出血などの
出血症状があらわれます。

<脾は昇提を主る>
脾には、臓腑・器官の固有の位置を維持する働きがあります。また、小腸から
受け取った水穀の精微を吸収し、肺に持ち上げ送る働きを有します。これを
「脾は昇提を主る」といいます。
この働きが失調すると、腹部の下垂・脱肛・めまい・ふらつきなどの症状が
あらわれます。

<脾は口に開きょうする>
飲食物が口から入り、水穀の精微に変わるまでの過程は、すべて脾の運化作用
によって管理されています。そのため、脾の運化作用の失調は、味がない・口が
粘る・唇の色が淡白など、口や唇の症状としてもあらわれます。さらに運化作用
の失調により水液や飲食物が代謝されず体内に残ると、痰飲という病理に変化
します。この場合、舌苔は厚く、汚いものが付着しているようにみえます。

このように脾は、飲食物から気・血・津液を作り出すためにとても重要な働きを
するとともに、血の漏出を防いだり、内臓の位 置を保っているのです。

では次に、この胃下垂を引き起こす中気下陥の原因や随伴症状、治療法などを
見てみましょう。

◎ 中気下陥(脾気下陥)による胃下垂
脾気の昇提作用が低下したことで、下垂症状が顕著にあらわれる証。
慢性病や長期にわたる下痢、過労や多産、また、もともと脾胃虚弱の者が暴飲
暴食をすることによって脾気を損傷することによって起こる。これらは中気下陥
を悪化させる誘引ともなる。
さらに、中気不足のために、全身に気血を行き渡らせることができない。脾気が
下がるため、清陽が頭部に達しないなど、症状は全身に渡る。

随伴症状―下腹部の下墜感・下痢・脱肛・子宮下垂・遊走腎・息切れ・めまい・
立ちくらみ・疲れやすい、食欲がない、食後に眠くなる、胃もたれ、軟便、下痢、
舌診―淡白・はん大・歯痕あり(気虚)  舌苔―白滑
脈診―沈遅弱
治則―脾気を補い、気を上に引き上げる補中益気・昇陽挙陥、益気昇提
代表配穴―中かん・気海・関元・足三里・脾ゆ・百会

○ 中かん・足三里―胃経の募穴と合穴であり(募合配穴法)。中焦の気を
補う。補法では、益気建中など脾胃の機能を改善する働きがある。
気海・関元―気海は生気の海であり、関元は原気の関。施灸により、大補元気
・昇陽固脱をはかる。
百会―督脈は手足三陽経と連絡しており、全身の陽気を統括する作用がある。
この三陽経は、督脈、足けつ陰肝経と百会穴で交会しているため、諸陽各経を
貫通 することができる。これにより、昇陽益気(全身の気を持ち上げる、下陥
した清陽を昇らせる)作用を持つ
脾ゆ・足三里―両穴に補法を施し、灸を加えることで、健脾助運と補中益気をはかる。

: 代表方剤―補中益気湯
(補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、補剤の王者として別名医王湯と呼ばれ
ます。補中とは、人体を縦に上・中・下の三つに分けた内の真ん中「中」すなわ
ち胃腸の働きを高め、体力を補い元気をつけることをいいます。下垂症状のほか
にも、虚弱体質、食欲不振、病後の衰弱、疲労倦怠、夏負けなど、多くの虚証
症状に用いられます。)

先に述べたように、脾気の低下がおこると、飲食物の消化吸収が妨げられ、
人間が活動するためのエネルギーは産生出来ません。胃下垂の症状がある場合、
その根底には、この脾気が不足し、からだを滋養できていない状態が隠れています。
特に女性は、偏ったダイエットや痩せ願望から、「胃下垂の人は太らない」と
胃下垂を病気ととらえるどころか、羨ましいと考える風潮があります。この風潮
は決して正しいとはいえません。食べたものから、自身のからだを栄養する
気・血・津液が産み出されることは、とても大切なことなのです。

もし、胃下垂や内臓下垂の症状がみられる場合は、

1. 暴飲暴食を避け、睡眠をしっかり取る。
2. お刺身や生野菜、果物、甘いものを取り過ぎない。
3. 飲み物はなるべく常温以上のものにする。
4. からだを冷やさない。

などに注意をしながら、生活を見直してみると良いでしょう。

また脾は「湿」を嫌う為、梅雨の時期は特に疲れやすくなります。生ものや
甘いものが好ましくないのも、からだの中に「湿」を溜め込む性質があるため
です。「湿」は体内でもベトベトと粘着性を持つので、清陽が上に昇るのを
邪魔して、結果 、脾気を傷つけてしまいます。
適度な食事、適度な運動、十分な休息を取り、湿気に負けないからだを作りたい
ですね。