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Amrita Organics

薬膳・美容・掃除・畑つくり

薬膳料理

2009-09-03 17:18:30 | 薬膳
 中国には古くから 『医食同源』 という言葉があります。

 これは、身体に必要なものは食事から摂り、常に体調を整えるという考え方
です。普段からバランスの良い食事を摂ることは、もとより大切なことですが、
薬膳料理は、さらに、病気にかからぬ身体を作り、体内の気を増進していこうと
考えられた料理です。また、もし病気に罹かったとしても、その充実した"気"
の力により、人間が本来持っている自然治癒力を、一層発揮させるよう、工夫
された料理でもあります。
 
 不時不食という言葉があります。これは、日本でいう『旬』の食材しか食べ
ないという意味です。その意味するところは、旬の食材が、美味しいだけでは
なく、栄養価に優れ、薬効が最も高いという考え方です。

 さて、中国料理の食材に、フカヒレや干しシイタケをはじめ、乾物が多いこ
とは、よく知られています。四川料理など内陸料理に乾物が多いのは、その地理
的条件からすぐにわかります。しかし、沿岸地方の料理でも、干しアワビ・干し
貝柱・スルメなどの乾物を、多く使います。

 実はこれまた、医食同源の考え方に基づいています。
 乾燥させるということは、単に保存のためという意味だけではない。天日干し
することにより、『陽の気』(太陽のエネルギー)を、その食材に持たせ、それ
を食べることにより、『陽の気』を体内に入れるということになるのです。

 ところで、陽(陰)という考え方は、中国の古へからある暦法の考え方です。
日本に入ってからは、陰陽道と呼ばれ、天文・暦・卜筮などを扱う術陰陽道と
して定着しました。平安時代中期の安部清明は、映画でもすっかり有名になった
陰陽師です。

 日本の陰陽道の基となったのは、中国から伝わった陰陽五行説です。ただ、
正確には、陰陽説と五行説と分けて考えなければなりません。

 まず陰陽説ですが、よく知られる十干十二支の考え方以前、既に中国にあった
古代哲学です。陰陽説が成立したのは、紀元前500年頃だと考えられています。

 陰陽説とは、森羅万象は、全て相対する『陰』と『陽』の二つの『気』の働き
により盛衰・消長し、この二つの気の働きにより、万物の事象を説明し、未来を
予測するという考え方です。有名な『三国志演義』他にも、その記述が多く見え
ます。
 さらに、陰と陽の二つの気が、お互いに消しあったり調和したりしあいなが
ら、自然界の秩序を保っているのと考えます。同様に、人間界の道徳・政治・
日常生活など、全ての人事もまた、『陰陽』の二つ気の変化に合わせて、秩序
が保たれていると考えます。
 陰陽の考え方は、その後、易にも取り入れられ、中国思想の基本原理の一つと
なりました。

 太陽の陽に対する月の陰、男性の陽と女性の陰、昼と夜、夏と冬、天と地、
気と血、背と腹、動と静・・・などと、考えていきます。

 ただ、陰陽説は二元論ですから、その中間や混沌とした問題を解決するのに、
不都合が生じました。そこで、後に成立した『五行説』が取り入れられていった
と考えるのが、陰陽五行説の起こりだと考えられています。

 五行説は、戦国時代(紀元前300年頃)の陰陽家衍(すうえん)の唱えた
説です。
 衍は、それ以前の各王朝の変遷を、五つの要素(五行といいます)の推移に
見立て、五行説を説明しました。
 五行とは、木・火・土・金・水であり、木は火を生じ、火は土を生じ、土は
金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ずると考えます。これを『五行相生』と
いい、堯(火)・舜(土)・禹(金)・殷(水)・周(木)・漢(火)と、この
法則によって王朝が変遷していったと説きました。『五行相生』は、プラスの
方向性を表します。

 また一方、『五行相克』という考え方があり、水は火に勝ち、火は金に勝ち、
金は木に勝ち、木は土に勝ち、土は水に勝つとします。これは、互いにぶつかり
合うことを表します。ですから、マイナスの方向性ともいえます。ただ、?衍は
王朝の変遷を、周は火の徳により、秦は水の徳により、また、漢は土の徳により
王朝を開いたと説きました。

 木・火・土・金・水の五行は、もともと太陽系の惑星の観察から見出された
ものです。この五星の運行は、古くから世界の各古代文明人により、観察されて
いたことが、よく知られています。
 古代中国でも、その運行の規則性が観察され、人々は、それを神秘の目によ
り、とらえていました。そして、法則性・規則性などから、地上界の森羅万象
が、五星運行に、何らかの関係があると考えました。

 漢代に入ると、陰陽説と五行説が合体し、万物・事象、全ては、陰陽・五行
の相生と相克により成り立っているという考え方が成立しました。

 ところで五行とは、五つの気が巡る(運行する)の意味です。木は、樹木が
発育し、春の象徴とされます。火は、灼熱の性質を表し、真夏の象徴。土は、
地中から植物が芽吹くことを表し、四季の移り変りの象徴であり、方位では中央
とされます。金は、土中の光り輝く鉱物を表し秋を。水は、生命の源である水を
表し冬を、というように、四季の移り変わりの象徴を表現しました。

 また、この五行(五気)は、様々な事柄に当てはめられました。
 たとえば、薬膳料理を調理する基本的考え方である五味は、木が酸・火が苦
・土が甘・金が辛・水が鹹(塩)となります。
 また、木が肝(臓)・火が心(臓)・土が脾(臓)・金が肺・水が腎(臓)
で『五臓』となります。さらに、木が胆嚢・火が小腸・土が胃・金が大腸・水が
膀胱とも考えられました。この他、目・舌・口・鼻・水という『五官』、筋・脈
・肉・気・骨という『五労』、さらに、『五色』・『五方』・『五倫』などと、
当てはめられていきました。

 古来から、食材一つ一つにも、それが当てはめられ、陰陽五行説による分類
とその効用が、きちんと説明されています。
 ネギは、辛で、気をよく通すので、体内の毒を消すとされます。牛肉は甘で、
気を補い、血液を増やし、胃腸を健全に保つとされます。薬膳料理によく用いら
れる枸杞(クコ)も、甘で、食道や胃、心肺の熱を取り去り、滋養強壮に効果
があるとされます。
 ですから、例えば胃腸が弱い人は、甘に分類される食材を、それに応じた
味付けで調理し、食べればよいということになります。
 また、胃腸がよくなれば、五行相生の考え方から、腎臓が強くなり、さらに、
肝臓、心臓と強くなっていきます。

 五味調和という言葉があります。
 例えば、肝臓や胆嚢、筋肉疲労や眼病には、酸の味付けや食材を用いた料理
を摂るのですが、一方、相克の関係で、甘にあたる脾臓・胃・口唇などに悪影響
が出てしまいます。
 そこで、酸味に甘味を組み合わせることにより、互いに害を及ぼす味を中和
し、バランスを取っていくのが、五味調和の考え方です。
 酸辛湯は、その名の如く調和がとれたスープなのです(辛と酸は相克の関係)。
 また、相生の考え方から、プラスの作用をもたらす味を加えることにより、
よく美味しく食べられるようにも料理されます。甘と辛はプラスを及ぼす関係
です。酸と甘の相克の関係をも含め、糖醋肉塊(酢豚)の味付けは、その典型
的な例でしょう。

 食材は、五味の他、薬性という考え方でも分類されます。
 その食材が、身体を温めるか冷やすかということなのですが、寒・涼・平
・温・熱の五つに分類されます。因みに、ネギは温、牛肉は平・温、枸杞は
平です。薬性という言葉に対応して、五味を薬味ともいいます。

 中国料理というのは、食材の持つ五味(薬味)を基礎に、薬性をも考え合
わせ、バランスを取りながら作られる、身体に優しい料理なのです。

 中国の人たちは、長い歴史の中で、自然とこのように料理を作ってきました。
その食文化を基に、さらに漢方薬材・食材をも用い、最も効果的に、心身の健康
を考えて調理されるのが、薬膳料理なのです。

☆参考☆

「酸味」は「肝経」に入りやすいので適量な酸味は肝を養うことができる。

「苦味」は「心経」に入りやすいので、夏に心(しん; 心臓の意)の働きが活発
         な時に摂取し心の熱を取除くと良い。

「甘味」は「脾経」に入りやすい。したがって、適量な甘味は脾を養う。

「辛味」は「肺経」に入りやすい。適量な辛味は、肺の働きを助けて風邪の予防
         をすることができる。

「鹹味」は「腎経」に入りやすいので、適量な鹹味は腎を養う。