57歳から始めるレンタルカートの世界

唄う物書きアマミヤユキト57歳で人生初のレンタルカートデビュー。

リアルスポーツなんです

2018年03月08日 | オトナの世界について
僕は、昨年7月神戸スポーツサーキットで開催された、全日本選手権西地域第3戦を観戦しました。


レースウィークの水曜日から日曜の決勝まで、5日連続で通いつめました。
そこでわかったこと。
参加しているレーシングドライバー。
彼らはやはりスポーツマンであること。

そしてモータースポーツにおけるレースとは「結果が全て」であること。
全日本選手権に参加する選手の多くは小学生、中学生など、10代の若い世代。
レース結果という『現実』は、若すぎる彼らにとっては、あまりにも厳しく感じられる時もあります。
結果の前には、なんの言い訳もできないのです。
それが現実です。

かつて中嶋悟さんがおっしゃっていました。

「モータースポーツは”リアルスポーツ”なんですよ。だから、作りごとはカッコよくないんです」



「僕がレースで走っている姿、一等賞になった僕の姿がカッコいいと、ファンが喜んでくれたら、それでいいとおもうんです」

中嶋さんの想いが込められた言葉です。

僕は文章で表現する人間です。
そこには、あたりまえのように『演出』『つくりごと』が入ってしまいます。
だったら、F1やスーパーGTの「テレビ番組」はどうか? 
リアルな映像は、観たままだろ? 現実だろ? と思われますが、じつはちゃんと演出が入ってます。
撮った映像を編集すること。さらには、人気の選手にインタビューして番組を構成すること。
これは立派な『演出』です。
実は『つくりごと』なのです。
テレビのアナウンサーが大げさに
「最高速度300km/h !!」なんて叫んでますが……。
レースをよく知る方ならご存知でしょう。
直線で最高速度を出している時、ドライバーはなにをしているか?

実は休憩してます。
ドリンクを飲んだり、ホッと深呼吸したり、ピットと無線で話しをしたり。最高速はリラックスタイムなのです。
それを、さもすごいことをしているようにアナウンスすることは、現実ではありません。リアルではないのです。
本当は休憩してホッとして、ドリンクを一口飲んでいるドライバー。
それを
「すごい!! 時速300㎞オーバーだぁぁ~!!」と大絶賛!!
これこそ、
「フィクションです」
「演出です」
それ以外の何物でもありません。
もう一度、中嶋悟さんの言葉をここに。

「モータースポーツは”リアルスポーツ”なんですよ。だから、作りごとはカッコよくないんです」

どんなに人気の選手でも、誰もが天才と認めるアイルトン・セナ選手だって、

マシンの、どこか一つの部品に不具合があったら……。
あっけなく「リタイア」
結果は
「0点」
「ポイントゼロ」
それこそが『現実』であり『リアル』なのです。
レーシングドライバーは、その現実を受け止められる資質が求められます。
***
ここからは僕個人のコラムです。
なぜ、僕が『結果』にこだわるか?
『結果』に特別な感情を寄せるのか?
それは、ぼくがかつて「ハウスメーカーの営業マン」であったことに由来します。
僕は『家を売る』セールスマンでした。
家はご承知の通り、人生最大の買い物。
一般庶民にとって、一生のうち家を建てるチャンスは一度きり、の方が大半だと思います。
僕は華やかな住宅展示場で働いていました。僕は憧れの職場を与えられ、喜びでいっぱいでした。
瀟洒なダブルのスーツに身を包み、おしゃれな臙脂のネクタイを締め、来場されたお客様に
「いらっしゃませ」

「今日はご見学ですか?」

「家づくりのご計画はお進みですか?」

「どうぞ、お茶をお召し上がりくださいませ」

などと、まるで一流ホテルのおもてなしのように、お客様と接していました。
誰もが夢見る、美しい外観の素敵なモデルハウス。

(これは神戸塩屋の異人館、グッゲンハイム邸です)
一歩中に入ると、もう夢のようです。
玄関だけでも、畳10畳分はあろうかというような広さ。
そして二階までど~んと突き抜けるような、エントランスの吹き抜け空間。
20畳以上あるリビングダイニングには暖炉があります。
リビングのソファに座れば、アーチ型の出窓からは、絹織物のような繊細なオーガンジー(レースのカーテンですね)から、朝の木漏れ日が差し込む。
まさに夢にまで見た『マイホーム』の世界観。
そこはドリームランド。
ぼくは、そのお客様の夢を実現するための仕事に携わっていました。

『これこそ天職』
「おとこ一生の仕事」にふさわしい、と思っていました。

しかし、現実は甘くはなかったのです。
僕自身が夢を見ていたのです。
結果は残酷でした。
35歳で中途入社した僕を待っていたのは『8ヶ月間受注ゼロ』という厳しい現実でした。
入社の時、示された条件は
「1年間で4棟の受注をすれば、正社員として迎える。それまでは契約社員」というもの。
僕は残された4ヶ月、それこそ寝食を忘れて働きました。
なんとか、駆け込みで3棟受注出来ました。
これを見た上司は、特例として、もうあと半年、契約期間を延ばすことに決定。
しかし、せっかく与えられた残りの半年がまた、泣かず、飛ばず、の日々。
焦りは、余計にプレッシャーとしてのしかかり、休みも自主返上して、24時間働く覚悟で残りの半年に挑みました。
しかし、受注はゼロ。
僕はクビになりました。
これが僕が味わったリアルな『結果』だったのです。
***
住宅営業をやってわかったことがあります。
『野球選手と同じなんだ』ということです。
たとえば、ドラフト1位で入った選手。
一年目。打率3割、ホームラン30本、盗塁30。
大活躍です。大スターです!!
でも……。
翌年、怪我をしました。1年間試合に出られません。
3年目、自由契約。
要するにクビです。
***
モータースポーツの世界も、大変ドライです。
1987年から中島悟さんがF-1パイロットになったとき、ぼくたちは
F-1グランプリで働く人たち、チームの運営、そしてドライバーの人事の実際をテレビや雑誌の情報で知ることになります。
F-1の世界では、来年のシートを決定するのは、だいたいシーズン半ば、夏頃が多いようです。まだ、シーズン残りのレースは半分も残ってる。

しかも、いまチームに所属して走っているドライバーは、来季、なんとライバルチームへの移籍が決まってしまった!!
F-1の世界のすごいところはここだ、と僕は思いました。
日本人なら「家族主義」「感情論」に流されやすいところがあります。
日本人のチーム、メカニックなら、
「ライバルチームに行くドライバーのマシンなんて、誰が整備してやるものか!!」
と思うでしょう。僕がメカニックの立場ならそう思います。
しかし、F1チームは違います。
彼らは真のプロフェッショナルなのです。
自らに与えられた仕事は完璧にこなします。
レースでは、マシントラブルでリタイアすることがあります。
それはドライバーズポイントがゼロ点になることです。
と同時にレーシングチームにとっても「コンストラクターズポイント」がゼロ点になるということです。
欧米の仕事の仕方はドライです。何が原因でリタイヤしたか?
その部署の担当者にはペナルティが課せられるでしょう。
だから、彼らは自分の仕事を完璧にこなそうとします。
たとえ自分が整備した車に乗るドライバーが、来季、ライバルチームに移る人間だとしてもです。
***
『りある』『リアルスポーツ』に関して、いろんな思いが交差して、まとまりのない文章になってしまいました。ただ、そこには厳しい、厳しい、人生を左右する冷酷なまでの『現実』がある。
そんな厳しさを受け止め、承知し、それでもレースにチャレンジする、そういうモータースポーツを、真に愛する人々を、僕は応援せずにはいられないのです。

***本文の著作権は天見谷行人に帰属します ©️Yukito amamiya 2018人気ブログランキングへPVアクセスランキング にほんブログ村にほんブログ村 車ブログへにほんブログ村
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