57歳から始めるレンタルカートの世界

唄う物書きアマミヤユキト57歳で人生初のレンタルカートデビュー。

 『タッカー』 〜お勧めクルマ映画 その②〜

2020年04月01日 | クルマの映画
タッカー (字幕版)


僕がオススメする「クルマの映画」第2弾です。
レンタルカートにハマるまでの僕は、結構コアな映画ファンでした。
今まで劇場で鑑賞した映画は600本以上。
また、せっかくの映画体験を文章で残したいと思い、映画レビューを500本程度書き綴り、電子書籍で公開してきました。
そんな中から、とびっきりのクルマ映画をご紹介しましょう。

1988年公開の「タッカー」と言う映画をご存知ですか?
アメリカの設計者タッカー(ジェフ・ブリッジス)が、家族や仲間のエンジニアたちと、悪戦苦闘しながらクルマを開発してゆくお話です。
主に、1948年に製造されたこのクルマは「タッカー48」とも呼ばれています。
これ、第二次世界大戦が終わった、わずか3年後ですよ。
ようやく終わった戦争。
その開放感。
アメリカ合衆国は戦勝国で、ラッキーなことに、自国は戦場になりませんでした。
徹底的に破壊されたヨーロッパの街とは対照的です。
やがて迎える1950年代。
華やかなアメリカンドリーム、
大量生産、大量消費。
大衆の文化が、こぼれるバラの花束のように、咲き乱れるのです。
タッカーが車を産み出したのは、そんな時代のほんの少し前でした。


『タッカー』というクルマは当時、夢の車と言われるほど革新的、いや、革命的な車でした。
それは当時の宣伝広告から伺えます。

『全車オートマチック・トランスミッション』*
『革新的なリアエンジン、リアドライブ』
『ディスクブレーキ』*
『シートベルト』
『空気力学を採用したボディ形状』
『ハンドル操作に連動して行先を照らす、可動式ヘッドライト』
『衝突時に前方へ外れるフロントガラス』

どれもこれも今までにない、当時としては50年先をいく、未来のドリームカーのイメージでした。

(なお、*印は技術的問題で、結局市販車には採用されませんでした。しかし、タッカーが60年以上前に提案した装備の多くは21世紀の現代、クルマの標準装備となっているのです。)

タッカーがクルマ造りで、まず第一に考えたのは『乗る人の安全』でした。
当時の自動車に、安全ベルトはありませんでした。

そのため衝突事故を起こすと、ドライバーはフロントガラスに頭から突っ込んで、死亡するケースが多かったのです。
タッカー車では、その問題を解決するため、シートベルトを標準装備し、さらには、衝突時のショックを利用して、フロントガラスが、前方に『外れる』という大胆なアイデアを採用したのです。
そして、ヘリコプターのアルミ製エンジンを流用した、当時群を抜く走行性能と燃費の良さ。
***
でもいざ、作るとなるとなぁ~。
「本当にこんな凄いクルマ作れるのかい?」
と、タッカーチームのメカニックたちでさえ、懐疑的でした。
今あるのは、タッカーが描いたクルマのスケッチだけ。
まさに絵に描いた餅です。
それでも天才的なデザイナー、タッカーの無理難題は、今に始まったことじゃない。
スタッフたちは慣れっこだったのです。
彼らはタッカーの夢を実現すべく、それこそ、寝食を忘れるほど新車開発に没頭します。

車を製造販売するために新しい会社も作ります。
ここで活躍するのがキャラッツ(マーティン・ランドー)という人物。何が本業なのかは、よく分からないような、それでいて、常に美味い儲け話の情報はすぐに嗅ぎつける。
もう、ウサン臭くて、一癖も二癖もありそうな人物。
でも、なぜか憎めない男なんですね。

キャラッツは、様々な業界に顔が利き、タッカー車製造に必要な、人材や、工場を見つけてきます。
プロモーション活動も始まります。
車はまだ、一台も完成していないのに、キャラッツは、クルマのディーラーたちを巡って、販売契約や株式を売りまくります。
タッカーの新会社に客からのお金が入ってきました。
さらに、出来上がった試作車と共に、アメリカ全土を巡る、大広告キャンペーンを繰り広げました。

もちろん、このような革命的で夢のようなクルマの出現を、快く思わない人たちもいます。
それが、アメリカ自動車産業の巨人と言われた『ビッグスリー』
フォード、ゼネラルモーターズ、クライスラー、などの巨大企業です。

彼らから支援されている国会議員たちが、やがて、うごめき始めます。
『設計者タッカー』と『夢の車』を握り潰そうと暗躍するオトナたち。

やがてタッカーは、
「存在しない、作れもしない車を売る権利をエサに、善良なアメリカ国民をだまして、莫大なお金を集めた」
という罪で告訴されます。
もちろん、タッカー本人は、激怒しました。

「夢のあるクルマを作って、何が悪いんだ!!」

すると彼のスタッフが諭します。

「そうじゃない、あんたの作ったクルマは『出来が良すぎた』のさ」

映画の終盤は法廷劇です。
タッカーは、堂々と自分の考えを世に訴えます。

「陪審員の皆さん、アメリカは夢が叶う国のはずですよね」

「しかし、今のアメリカは、私のような夢を見る者、ドリーマーを、寄ってたかって潰しにかかってくるんです」

さらにタッカーは続けます。

「いいですか、皆さん、こんなことを続けていたら、アメリカ国民は、今に敗戦国(日本やドイツ)から『クルマ』や『ラジオ』を買う羽目になるでしょう」

~ハハハッ、そんなバカな~

法廷にいる人たちに笑いが起きます。

しかし、現実はどうでしょう?

タッカーの予言は当たりました。

のちにアメリカは、日本から、安くて性能の良いクルマを、大量に購入する羽目になります。
このため、アメリカの自動車産業の経営は危うくなったのです。

***
本作の監督はフランシス・フォード・コッポラ

『ゴッドファーザー』

『地獄の黙示録』
を作った、伝説的な映画監督です。

本作では、アメリカンドリームに象徴される、当時の明るくて華やかな文化を存分に描きます。

音楽も、ポップで心躍らせる、ジャズ、ダンスミュージックがメイン。
そして衣装もよくご覧ください。
ちょっとレトロだけど、デザインも小粋で、とってもお洒落。
映画鑑賞の楽しみは、ストーリーや配役だけではありませんよ。
劇中で流れる音楽や、衣装の素晴らしさ、また舞台となるロケーション、建物や室内の雰囲気などもぜひご堪能ください。
また、出演者の中に、タッカーチームの一員で、優秀な日本人メカニック役、ジミー・サクヤマとして、マコ岩松氏が出演しているのも嬉しいですね。
(当時、日系アメリカ人は、敵性アメリカ人として強制収容所送り となっていました。
タッカーはジミーの優秀さを認めて保護者になっていたのです)

この映画を見てふと思い浮かんだことがあります。

「アメリカにも、本田宗一郎さんのような人物がいたのだ!」

と言うことです。二人が追い求めたのは『夢』ドリーム。
夢を形にしてゆく、それこそが人生そのもの。
その生き方の”爽やかさ”に心惹かれるのは、僕だけではないでしょう。
***
製作総指揮:ジョージ・ルーカス

出演:ジェフ・ブリッジス、
   ジョアン・アレン
   マーティン・ランドー
   ロイド・ブリッジス
   マコ岩松

音楽 ジョー・ジャクソン
衣装 ミレーナ・カノネロ
1988年公開 製作国 アメリカ
110分

***本文の著作権は天見谷行人に帰属します ©️Yukito amamiya 2020
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お勧め映画『ラッシュ/プライドと友情』

2020年03月28日 | クルマの映画
『ラッシュ/プライドと友情』映画オリジナル予告編


新型コロナウィルスの影響で、『なるべく外を出歩かないように』という自粛ムードの今日、この頃ですが。
こんな時は、レンタルDVDで映画鑑賞、という方も多いでしょうね。
そこで、今回は、個人的におすすめの『クルマ映画』をご紹介したいと思います。
僕のイチオシは

『ラッシュ/プライドと友情』



二人のF1レーサーのお話です。1976年シーズンでの二人の熱い戦いにスポットを当てて、そのライバル関係を描いて行きます。
主役のひとり、イギリス人ドライバーの『ジェームス・ハント』
本人も劇中で言ってますが

「俺は、いつも人生最後の日、みたいに楽しんでるのさ。取り柄はクルマの運転だけなんだ」

というわけで、彼の周りは、いつも女の子と酒と、パーティー三昧。
まあ、この人ほど、『努力』という言葉が似合わない人はいませんな。私から言わせると。
ところがいざ、レーシングカーに乗せると、誰も真似できないようなドライビングセンスを見せます。
つまり『才能とセンス』だけで戦っているような、古き良き時代の、ロマンあふれるカーレーサー。
その典型的な人物なのです。

もう一人の主役は、これとは真逆の人物。
クルマのメカニズムにも詳しい。コンマ1秒でも速く走らせるためには、徹底したマシンの改良をメカニックたちに要求します。そこに一切の妥協はありません。
そのマシンセットアップ能力は『天才的』と評されます。
ドライビングにしても、朝の5時からサーキットを歩いて、冷静沈着にコース分析をしているような人です。
速く安全に走るにはどうしたらいいのか?
その合理的な解決方法を常に考えている人。
ついたあだ名は
「走るコンピューター」
それが、
『ニキ・ラウダ』
というレーサーです。
***
真逆のキャラクターである彼ら二人は、F3,F2選手権で腕を磨き、やがてモータースポーツ最高峰のF1グランプリにステップアップします。
この映画では、今となっては懐かしい、1970年代のF1の世界観が、実にリアルに描かれます。
若い世代が見ると、
「えっ、これがF1マシンなの?!」
とびっくりするかもしれませんね。
例えば『F1のステアリング』

今なら、パドルシフトや、各種スイッチ類がうじゃうじゃついてますが、当時は本当にシンプル。
ただの『輪っか』です。
ちなみに、映画の中で使われているマシンは、当時走っていた本物のF1マシン。
有名なティレルの6輪車も登場します。(当時は”タイレル”と言ってましたよ)

***
僕が大好きなシーンがあります。
ニキ・ラウダが、レースファンの車を借りて、田舎道を走らせるシーン。
横に乗っているのは、後に奥さんになる、マルレーヌ。
彼女は、

「あなたの運転って、まるでおじいちゃんね。とてもF1レーサーには見えないわ」

それぐらい安全運転で、田舎道をトコトコ走るニキ・ラウダ。

「一般道でスピードを出すなんて、危険なだけだよ」

と素知らぬ顔です。
***
ちなみに、この映画を鑑賞するのに、気をつけていただきたいこと。
それはモータースポーツへの偏見と誤解についてです。
劇中で語られるF1の危険性。

『レースで死ぬ確率は20%』

そして

『命をかけて走る』

などという、よくある慣用句。
本作で描かれるのは、あくまで『1970年代のF1』であるということ。
参考までにウィキペディアでの「F1死亡事故一覧」
をご覧ください。
確かに、1970年代までは、『一年のうちに、誰かが死ぬ』
それがレースでした。
しかし、1980年代になって「カーボンモノコック」採用などの安全対策により、死亡事故は激減しました。
また、レースの本場を見習って、日本でも
「レーサーは子供の頃から育てるもの」に変わってきました。
最短距離でレーサーに育てるには?
公道の峠道で危ない走りをすることでしょうか?
いいえ、違います。
レーサーになる最短距離は、レーシングカートでのトレーニングなのです。
かつてのF1王者、ミハエル・シューマッハ氏も、

「F1に乗りたければ、カートを練習しなさい。それ以外のトレーニングは必要ない!」
とさえ言い切っています。
クルマの走る、曲がる、止まる、という基本を体に覚え込ませる。
小さな幼稚園児の頃から、トレーニングを積んだ子供たちが、やがてフォーミュラーカーに乗る。
優れた技能を身につけ、レースでの結果を残した人たちが、上のクラスに上がってゆく。
現代のモータースポーツは、子供たちが安心、安全に参加できるスポーツとなっています。
***
ところで、F1の世界で絶対に避けて通れないこと。
それがズバリ
『お金』『マネー』です。
本作でも、スポンサー探しに奔走したり、あるいはドライバー本人が、持参金を用意して『F1のシートを買う』というシーンも描かれます。
ビジネスとしてのF1、イベント、興行、としてのF1の側面も描かれています。
いくら速いドライバーでも、
『このレーサーに金を出そう』
というスポンサーが見つからなければ、F1という土俵にも上がれないのです。
そういう意味で、レース活動を応援してくれる、『人』や『企業』をいかに巻き込んでゆくか?
それもレーサーにとって大切な資質の一つと言えるでしょう。
***
この映画を見ていて思うのは、世界の頂点で戦うには、強靭なメンタルが必要である、ということです。
ジェームス・ハントは、まさに羨むような才能溢れたレーサーです。本人も『俺が世界で一番速い』と思っている。
方や、ニキ・ラウダ。
冷静に状況を分析し、速いマシンを作り上げ、チャンピオンになるために、何をしなければならないか?
それを確信を持って実行します。
だからニキも
「ジェームスは一戦だけなら勝てるだろう。だけど年間を通したチャンピオンは無理だね」
とサラっと言ってのけます。
自分はF1世界チャンピオンになるために、考えられる全ての課題を成し遂げてきたんだ。
その自負があるからこそ、とてつもない自信を持って

「チャンピオンは僕だ」

と言ってのけられるのです。
彼らを見て、思い出すことがあります。
野球の大リーグに挑戦した野茂英雄選手やイチロー選手。
そして世界トップレベルのサッカー、セリエAでの中田英寿選手。
また、日本人二人目のF1パイロット、鈴木亜久里選手。
彼らに共通するもの。
それは強烈な自意識です。
時に、日本国内ではそれは
『生意気なヤツ!!』
とのけ者にされてしまいます。

それぐらい鼻っ柱が強くないと世界で戦えないのでしょうね。
***
本作は、映画作品として『観る楽しみ』を味わえる作品です。
監督は『アポロ13』(トム・ハンクス主演)
のロン・ハワード。その的確な手腕は名監督と言っていいでしょうね。
映画は、脚本の面白さと、キャスティングの的確さで、おおよそ決まってしまいます。
その点、本作は、1976年のF1シーズンを描いた、ドキュメンタリーの側面を持っています。
『事実は小説より奇なり』
でして、下手な創作ストーリーよりも、現実に起こったことは、よほどドラマチックなのです。
ニキ・ラウダは、この年、命も危ぶまれるレース中の大事故に見舞われます。
その、ニキ・ラウダを演じたのは、ダニエル・ブリュール。
ドイツの俳優さんです。本作では、プライベートシーンではドイツ語で会話し、記者会見などのシーンでは、ドイツ語なまりの英語を話しております。字幕好きな映画ファンとしては、こういうところを聴き比べるのも楽しいのです。
僕はこの人の出演した
「戦場のアリア」

「コッホ先生と僕らの革命」
を映画館で鑑賞しました。
どちらもおすすめですよ。
****
映画データ
「Rush」
監督:ロン・ハワード
脚本:ピーター・モーガン
主演:クリス・ヘムズワース
   ダニエル・ブリュール
   アレクサンドラ・マリア・ララ

音楽:ハンス・ジマー
2013年製作 アメリカ、イギリス合作
上映時間 122分


***本文の著作権は天見谷行人に帰属します ©️Yukito amamiya 2020
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