さて、今となっては、傑作車とさえ言える『NISSAN プリメーラ』初代を乗りつつも、どうしても『HONDA』への憧れは続いていました。
そんなぼくがようやく手に入れたホンダ車が 『ラファーガ』
という4ドアセダンでした。
聴きなれない名前でしょ?
そんな車あったの?! と言われそうですが……。
なんと、2リッター直列5気筒SOHC 20バルブ PGM-FI エンジンを縦置き。
(出力は160Ps。最大トルク19,0Kg .m)
FFミッドシップレイアウトの4ドア・スポーツセダン!!
という大そうな謳い文句で登場したクルマでした。
足回りは、前後とも、ダブルウィッシュボーンサスペンション。
サスペンション構造はF1と一緒なのです。
そして四輪ディクスブレーキが標準装備。
当時、ようやく装備され始めたABS、およびエアバッグもオプションで選べました。
このクルマの魅力については「名車文化研究所」というサイトが好意的な記事で紹介してくれています。
***
エンジンはSOHCなのですが、4気筒エンジンより『一発多い』5気筒エンジン。
その吹け上がりは、圧倒的でした。
信号が青になり、アクセルを底までベタ踏みすると、
『カァァァ~ン』
という乾いたエンジン音。
これぞ、まさにぼくが憧れた、あの
『ホンダサウンド』
そのものでした。
エンジン回転のレッドゾーンは7,200回転以上
タコメーターは、8,000回転まで刻まれていました。
いやぁ~、このエンジンは回る!
喉から手がでるほど欲しかった『HONDAエンジン』を手に入れたぞぉぉ~!
という喜びでいっぱいでした。
(エンジン吹け上がりの動画がありました。今となっては貴重ですね)
***
確か1994年の秋頃だったと思います。
すでにプリメーラを3年ほど乗り続け、
『ボチボチ、次の車が欲しいなぁ~』
などと考えていた頃。ホンダのディーラーから新車発売のハガキが届きました。
そこに載っていたのが、ホンダベルノ店で発売される『ラファーガ』というクルマ。
(ホンダクリオ店では、アスコットという名前でした。)
興味本位で、顔馴染みになっていたホンダベルノ店へ出かけました。
会社の同僚Y君が『プレリュード新型』を買ったのが、このベルノ店でした。
定期点検の時など、ぼくも一緒に遊びに行って、よく無料でコーヒーなど、ご馳走になっていました。
(このお店のスタッフとは、とても仲良くなり、後に、なんとNSXの試乗車に乗せてくれたこともあります。)
さて、店に展示してあった、ラファーガのシートに座ってみました。
『えっつ!! これ、本当にホンダ車なの?!』
ぼくは腰痛持ちです。
そのぼくが全く違和感なく、リラックスできる、素晴らしいシートでした。
Y君のプレリュードの助手席で、腰が痛くて悶絶していたのが嘘のようです。
***
ぼくがまず気に入ったのは、ラファーガのシートであり、そのインテリアでした。
何より
『小物入れがちゃんとある!!』
(今では当たり前でしょうが、当時のHONDA車にとっては珍しかったのです。)
インパネの中央、エアコン吹き出し口の上部には、大きな扉のついた収納スペース。
これはのちに、高速道で領収書をもらう時、パッとしまえる、実に便利なポケットでした。
また、右下には、コインなどが取り出しやすい開閉式のポケットもついていました。
確か、ドリンクホルダーも装備していたと思います。
ドアの内張にはビロードのようなファブリック。
(ドアノブの横は、高音用スピーカーです)
なんとも優しい、さわり心地です。アクセントの2本のステッチ。
仕立ての良さを感じさせる演出。
今までのホンダ車には感じられない、使い勝手の良さと上質なインテリア空間でした。
***
室内空間の『演出』ということでは、やはり
トヨタや日産の車はすごいなぁ~と思います。
トヨタのクラウンに、一度でも乗った方ならわかるでしょう。
高級ホテルのラウンジが、そのまま移動空間になっている、
隅々まで行き届いた、心地よさと『おもてなし。』高級感の演出。
まさに、円熟した大人の室内空間。
あの、やんちゃなホンダが、そんな大人の雰囲気づくりに”無謀にも”挑戦し始めたのが、1990年代でありました。
***
ラファーガの泣き所は、実はその謳い文句とは全く逆の
『非スポーツ性』
でした。
いわゆる
『直線番長』的なのです。
エンジンは大変立派な出来で、素晴らしい吹け上がりと加速が味わえます。
ところが、
「ほんまに、これがミッドシップかいなぁ~?」
と疑わざるを得ないハンドリング。
せっかくのダブルウィッシュボーンサスペンションを生かし切れていない。
そのセッティング、味付けがまずいのです。
高級感を出そうとして、乗り心地優先にした結果
はっきりいってサスが『ふにゃふにゃ』なのです。
そのためブレーキを踏むと5気筒エンジンを縦置きした、重いエンジンルームは、
前につんのめるような感じで、『ノーズダイブ』を起こすのです。
この足回りのセッティングはスポーツセダンとしては致命的でして、
ワインディングでは『全く楽しくない』クルマに仕上がってしまいました。
まして、ぼくはこの前に『欧州車を超えた!』とまで言われた、ポテンシャルの持ち主である、
『プリメーラ』というコーナリングマシーンに乗っていたのですから、その差は歴然でした。
***
では、なぜ、試乗もしながら『ラファーガ』という高い買い物をしたのか?
それは、何より
『HONDAエンジン』の魅力、魔力であり、
また、
『豪華装備を満喫したい!!』
ということでした。
実は最初買った『プリメーラ』は、マイナーチェンジ直前のモデルで、いわば、在庫一掃セールス中でした。
アクセサリーや、オプションは一切なし、という条件で、新車ながら格安で購入できたのでした。
オプション一切なしのプリメーラは、気軽に街中をスイスイ走る、カジュアルなクルマでした。
例えるならば、トッピングなしの『かけうどん』みたいなクルマなのです。
(実もフタもない、何ちゅう、たとえや!!)
基本性能だけを楽しむ、(走りは1級品ですが)そんなクルマでした。
そこで、次回新車を買うのなら
オプション満載の車がいい!!
そして
『スーツが似合う車がいい!!』
とぼくは思ってしまったのです。
ちょっと気取って、背伸びして、おしゃれを楽しむ。そんな雰囲気の車が理想でした。
そこに現れたのが、ホンダがちょっと背伸びして作った車
『ラファーガ』でした。
HONDA TVCM 1993 RAFAGA
このクルマの購入にあたり、ぼくがチョイスしたオプションは
①アンチロックブレーキシステム(ABS)
②フォグランプ
③アルミホイール
④リアスポイラー
⑤本革巻きステアリング
⑥6連装CDプレイヤー
⑦リアワイパー
⑧クルーズコントロール(これはオプションだったか、標準だったか、記憶が曖昧です)
そしてトドメの一発!!
『天井スライドガラスサンルーフ』(メーカーオプションでした。今思えば、持ち慣れないお金を持った、小市民そのものですね)
(天井には、ガラスサンルーフの室内カバーが見えますね。)
***
さらに、車体色は「メタリック・ダークブルー」
この色は、ディーラーの店長自ら、
「これ、めっちゃ、かっこよく見えるよ!!」
と超オススメの色でした。
ラファーガは、室内空間を稼ぐために車高が異様に高いのです。
そのため明るいシルバー系の色では、随分間延びして見えるのが難点でした。
ところがダークな車体色であれば、白っぽい膨張色の反対、『収縮色』なので、車のシルエットが引き締まるのです。
(これは皆さん、是非覚えておいた方がいいですよ。車体色を選ぶときは、『膨張効果』に注意です。小さな色サンプルでは暗く見えても、車全体にその色が塗られると、2割増しぐらい明るく見えるのです)
***
まあ、色々と、不満はあったものの、ぼくはその後、10年ほど、このラファーガを乗り続けることになりました。
特に、つけてよかったなぁ~、というのはやはり
『スライドガラスサンルーフ』でしょうか。
この天井は3つのモードが選べます。
①サンルーフの内扉を閉めた状態。
②内扉を開けて、ガラスルーフだけの状態。
③完全オープン(ガラスルーフは天井内に収納されます)
ぼくは特に、ガラスルーフの状態にしてドライブを楽しむのが好きでした。
天井を開けないので音も煩くないし、ガラスルーフは、スモークなので、太陽も眩しくありませんでした。
座り心地のいいシートと、ビロード生地に包まれた、ちょっとおしゃれな室内空間。
高速道に乗って、クルーズコントロールをスイッチON。
アクセルから足を離しても、もう大丈夫。車は一定速度でゆるやかなコーナーをトレースしてゆきます。
6連装CDチェンジャーで、ドリカムを聴きながらのドライブ。
ちょっと見上げれば、ガラスルーフから差し込む柔らかな光、そして緑の木々。
何より、レギュラーガソリン仕様で高速道をリッター10kmで走ってくれる、お財布にも優しいクルマ。
『これ以上の贅沢なんて、もういいよなぁ~』
クルマという道具との付き合い方。
贅沢を手に入れた後、人は何を目指すのか?
『足るを知る』ということ。
ふと、そんなことをぼくは考え始めていました。
***本文の著作権は天見谷行人に帰属します ©️Yukito amamiya 2020
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そんなぼくがようやく手に入れたホンダ車が 『ラファーガ』
という4ドアセダンでした。
聴きなれない名前でしょ?
そんな車あったの?! と言われそうですが……。
なんと、2リッター直列5気筒SOHC 20バルブ PGM-FI エンジンを縦置き。
(出力は160Ps。最大トルク19,0Kg .m)
FFミッドシップレイアウトの4ドア・スポーツセダン!!
という大そうな謳い文句で登場したクルマでした。
足回りは、前後とも、ダブルウィッシュボーンサスペンション。
サスペンション構造はF1と一緒なのです。
そして四輪ディクスブレーキが標準装備。
当時、ようやく装備され始めたABS、およびエアバッグもオプションで選べました。
このクルマの魅力については「名車文化研究所」というサイトが好意的な記事で紹介してくれています。
***
エンジンはSOHCなのですが、4気筒エンジンより『一発多い』5気筒エンジン。
その吹け上がりは、圧倒的でした。
信号が青になり、アクセルを底までベタ踏みすると、
『カァァァ~ン』
という乾いたエンジン音。
これぞ、まさにぼくが憧れた、あの
『ホンダサウンド』
そのものでした。
エンジン回転のレッドゾーンは7,200回転以上
タコメーターは、8,000回転まで刻まれていました。
いやぁ~、このエンジンは回る!
喉から手がでるほど欲しかった『HONDAエンジン』を手に入れたぞぉぉ~!
という喜びでいっぱいでした。
(エンジン吹け上がりの動画がありました。今となっては貴重ですね)
***
確か1994年の秋頃だったと思います。
すでにプリメーラを3年ほど乗り続け、
『ボチボチ、次の車が欲しいなぁ~』
などと考えていた頃。ホンダのディーラーから新車発売のハガキが届きました。
そこに載っていたのが、ホンダベルノ店で発売される『ラファーガ』というクルマ。
(ホンダクリオ店では、アスコットという名前でした。)
興味本位で、顔馴染みになっていたホンダベルノ店へ出かけました。
会社の同僚Y君が『プレリュード新型』を買ったのが、このベルノ店でした。
定期点検の時など、ぼくも一緒に遊びに行って、よく無料でコーヒーなど、ご馳走になっていました。
(このお店のスタッフとは、とても仲良くなり、後に、なんとNSXの試乗車に乗せてくれたこともあります。)
さて、店に展示してあった、ラファーガのシートに座ってみました。
『えっつ!! これ、本当にホンダ車なの?!』
ぼくは腰痛持ちです。
そのぼくが全く違和感なく、リラックスできる、素晴らしいシートでした。
Y君のプレリュードの助手席で、腰が痛くて悶絶していたのが嘘のようです。
***
ぼくがまず気に入ったのは、ラファーガのシートであり、そのインテリアでした。
何より
『小物入れがちゃんとある!!』
(今では当たり前でしょうが、当時のHONDA車にとっては珍しかったのです。)
インパネの中央、エアコン吹き出し口の上部には、大きな扉のついた収納スペース。
これはのちに、高速道で領収書をもらう時、パッとしまえる、実に便利なポケットでした。
また、右下には、コインなどが取り出しやすい開閉式のポケットもついていました。
確か、ドリンクホルダーも装備していたと思います。
ドアの内張にはビロードのようなファブリック。
(ドアノブの横は、高音用スピーカーです)
なんとも優しい、さわり心地です。アクセントの2本のステッチ。
仕立ての良さを感じさせる演出。
今までのホンダ車には感じられない、使い勝手の良さと上質なインテリア空間でした。
***
室内空間の『演出』ということでは、やはり
トヨタや日産の車はすごいなぁ~と思います。
トヨタのクラウンに、一度でも乗った方ならわかるでしょう。
高級ホテルのラウンジが、そのまま移動空間になっている、
隅々まで行き届いた、心地よさと『おもてなし。』高級感の演出。
まさに、円熟した大人の室内空間。
あの、やんちゃなホンダが、そんな大人の雰囲気づくりに”無謀にも”挑戦し始めたのが、1990年代でありました。
***
ラファーガの泣き所は、実はその謳い文句とは全く逆の
『非スポーツ性』
でした。
いわゆる
『直線番長』的なのです。
エンジンは大変立派な出来で、素晴らしい吹け上がりと加速が味わえます。
ところが、
「ほんまに、これがミッドシップかいなぁ~?」
と疑わざるを得ないハンドリング。
せっかくのダブルウィッシュボーンサスペンションを生かし切れていない。
そのセッティング、味付けがまずいのです。
高級感を出そうとして、乗り心地優先にした結果
はっきりいってサスが『ふにゃふにゃ』なのです。
そのためブレーキを踏むと5気筒エンジンを縦置きした、重いエンジンルームは、
前につんのめるような感じで、『ノーズダイブ』を起こすのです。
この足回りのセッティングはスポーツセダンとしては致命的でして、
ワインディングでは『全く楽しくない』クルマに仕上がってしまいました。
まして、ぼくはこの前に『欧州車を超えた!』とまで言われた、ポテンシャルの持ち主である、
『プリメーラ』というコーナリングマシーンに乗っていたのですから、その差は歴然でした。
***
では、なぜ、試乗もしながら『ラファーガ』という高い買い物をしたのか?
それは、何より
『HONDAエンジン』の魅力、魔力であり、
また、
『豪華装備を満喫したい!!』
ということでした。
実は最初買った『プリメーラ』は、マイナーチェンジ直前のモデルで、いわば、在庫一掃セールス中でした。
アクセサリーや、オプションは一切なし、という条件で、新車ながら格安で購入できたのでした。
オプション一切なしのプリメーラは、気軽に街中をスイスイ走る、カジュアルなクルマでした。
例えるならば、トッピングなしの『かけうどん』みたいなクルマなのです。
(実もフタもない、何ちゅう、たとえや!!)
基本性能だけを楽しむ、(走りは1級品ですが)そんなクルマでした。
そこで、次回新車を買うのなら
オプション満載の車がいい!!
そして
『スーツが似合う車がいい!!』
とぼくは思ってしまったのです。
ちょっと気取って、背伸びして、おしゃれを楽しむ。そんな雰囲気の車が理想でした。
そこに現れたのが、ホンダがちょっと背伸びして作った車
『ラファーガ』でした。
HONDA TVCM 1993 RAFAGA
このクルマの購入にあたり、ぼくがチョイスしたオプションは
①アンチロックブレーキシステム(ABS)
②フォグランプ
③アルミホイール
④リアスポイラー
⑤本革巻きステアリング
⑥6連装CDプレイヤー
⑦リアワイパー
⑧クルーズコントロール(これはオプションだったか、標準だったか、記憶が曖昧です)
そしてトドメの一発!!
『天井スライドガラスサンルーフ』(メーカーオプションでした。今思えば、持ち慣れないお金を持った、小市民そのものですね)
(天井には、ガラスサンルーフの室内カバーが見えますね。)
***
さらに、車体色は「メタリック・ダークブルー」
この色は、ディーラーの店長自ら、
「これ、めっちゃ、かっこよく見えるよ!!」
と超オススメの色でした。
ラファーガは、室内空間を稼ぐために車高が異様に高いのです。
そのため明るいシルバー系の色では、随分間延びして見えるのが難点でした。
ところがダークな車体色であれば、白っぽい膨張色の反対、『収縮色』なので、車のシルエットが引き締まるのです。
(これは皆さん、是非覚えておいた方がいいですよ。車体色を選ぶときは、『膨張効果』に注意です。小さな色サンプルでは暗く見えても、車全体にその色が塗られると、2割増しぐらい明るく見えるのです)
***
まあ、色々と、不満はあったものの、ぼくはその後、10年ほど、このラファーガを乗り続けることになりました。
特に、つけてよかったなぁ~、というのはやはり
『スライドガラスサンルーフ』でしょうか。
この天井は3つのモードが選べます。
①サンルーフの内扉を閉めた状態。
②内扉を開けて、ガラスルーフだけの状態。
③完全オープン(ガラスルーフは天井内に収納されます)
ぼくは特に、ガラスルーフの状態にしてドライブを楽しむのが好きでした。
天井を開けないので音も煩くないし、ガラスルーフは、スモークなので、太陽も眩しくありませんでした。
座り心地のいいシートと、ビロード生地に包まれた、ちょっとおしゃれな室内空間。
高速道に乗って、クルーズコントロールをスイッチON。
アクセルから足を離しても、もう大丈夫。車は一定速度でゆるやかなコーナーをトレースしてゆきます。
6連装CDチェンジャーで、ドリカムを聴きながらのドライブ。
ちょっと見上げれば、ガラスルーフから差し込む柔らかな光、そして緑の木々。
何より、レギュラーガソリン仕様で高速道をリッター10kmで走ってくれる、お財布にも優しいクルマ。
『これ以上の贅沢なんて、もういいよなぁ~』
クルマという道具との付き合い方。
贅沢を手に入れた後、人は何を目指すのか?
『足るを知る』ということ。
ふと、そんなことをぼくは考え始めていました。
***本文の著作権は天見谷行人に帰属します ©️Yukito amamiya 2020
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