渇水に備えて、中電さんとの長篠堰堤排砂門の試験放水に立ち会った。
漁協の役員をやっていてよかった、と思うことは殆んどないが
今日のこの景色は格別だ。(ここは関係者以外立入り厳禁)
「オー・・・」足下に拡がる絶景に暫し我を忘れ見惚れる。この景色を皆んなに
見せてやりたい。夢中でシャッターを切る。
・・・そうだ、此処からなら鵜の首の水神様が見えるはずだが・・・。
あった、あった、やっぱりあった。
【鵜の首】右岸の岩盤の窪みに黒い石が挟まっているのが見える。
此処からだと、黒く小さな豆粒ほどに見えるが確かにある。ズームを一杯にして
シャッターを切る。
もう50年以上前になるが、この辺りはどこでも〔川小僧〕たちの遊び場だった。
ダムの上・鵜の首・大淵、何処でも泳いで潜った。水路でさえ泳いだ。
今は猿や鹿や猪やカワウが大きな顔をしているが、あの頃は確かにこの辺の主役は
〔川小僧達〕だった。そして、その頃もあの石はあった。
大水の時はこの辺は一面、水路の高さまでも平らになる。そして巨大な蛇が
のたうつように一気に大淵に流れ込む。あの石が怒涛の激流に耐え残っているのは
奇跡としか思えない。言い伝えによると大昔から彼処にあって、投げ落としても
元に戻ると云うことだが、試してみる勇気はない。
『これで0.3tの放水です』
中電さんの技師の声に我に返る。
そうだ、今日は試験放水の立会だった。