4月26日;出沢区民を代表して、道敏君と二人で立木トラストの名札掛けに参加した。
当日は雨の予報であったが何とか一日もちそうであった。田口特産物振興センターで昼食後、伊藤会長、伊奈事務局長より経過報告を聞き、家内と二人の名前を書き込んだ札をもって現地に出かけた。
地元では「赤い橋」で親しまれている設楽大橋を回り込んで、寒狭川の支流境川を800m程下った処だ。申込みが少し遅かったので出沢は290番代、林道から100m近く息を切らしながら登って行って漸く自分の番号を打った木を見つけた。
「ウ~ん…。これで伊藤さんからこの木を一本500円で買ったことになるのか、何だか国交省に嫌がらせをしているみたいで、ちょっとセコクないかなあ?」
名札を掛けながら呟いていると、隣で掛け終わった道敏君が
『余計なこと考えんでいいだ、反対の署名と同じだよ。それより証拠の写真を撮ってくれ。』
それもそうだと札を掛けた木と一緒に写真を撮った。
無事に札掛けも済んだし、さて帰るかと思っていたら、道敏君が寒狭の源流を見に行くという。今日は別に用事もないしそれじゃあ付き合うかということになって、ダムが出来れば湖底に沈むことになる大名倉を通って豊川の上流の方にどんどんと上って行った。
『キツネの嫁入りだ・・・』
フロントガラスはまだパラパラと雨粒に叩かれているのに、突然に日が差してきた。途端に辺り一面が明るい新緑色に燃え上がった。丁度斜め前方から巨大なスポットライトが当たっている感じだ。その新緑色の舞台を今や渓流となった豊川が、右に左に躍りながら下っている。美しい・・、言葉には表せない美しさだ。子供の頃にはごく普通の景色だった気がするのだが、今ではこんな情景にお目にかかることは滅多にない。5分程すると日が陰って、以前の灰色がかった薄緑の世界に戻ってしまった。
『此処も沈むんだよな・・・。』
そうだ、此処も沈むのだ。すると今のは、段戸の山の八百万の精霊たち、八百万の神々の別れの挨拶だったのかも知れない。
《加筆予定》