〈イヨタン〉で歌舞伎の新年会があった。
仲間は気心が知れているし、飲み放題、いい気分で呑んでお開きになり
さて帰るかと外に出たら、いつの間にか銀世界。
迎えを呼んでもスリップして危ないし、酔い覚ましに家まで歩いて帰るかと、
一キロ弱の道を歩き出した。
夜十時を過ぎているというのに、雪あかりでうっすらと周りがわかる。
孝太郎の民話の中の「フジュウの狸」がひょっこりと顔を出しそうな気がして、何故か嬉しくなった。
新雪を踏みしめる音、てんてんと残る足あと、子供の頃に戻ったような懐かしい時間だった。