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よこさんのページ

文芸 エッセイ 論文  アイデンティティ

行方定まらぬ思い出

2024-06-03 14:45:41 | 自由詩

ひとときの幸せや苦しみは

時とともにやがて記憶から去り

思い出の森の中の

夜ごとの夢を紡ぐ欠けらとなる

 

けれど節目となる大切な思い出は

日々の生活の片隅に佇み

呼べばすぐによみがえり

今を意味づける日常の友となる

 

だけど心が離れてしまった人の

懐かしい思い出は

至福と悔恨

夢と日常の狭間にあって

近づけばいつも陽炎のように

逝きし日の迷宮の中の

行方定まらぬ世界にたゆとう

 


経済成長より平和

2024-05-02 16:47:17 | 自由詩

屋上から見れば

老若男女が

ありんこのように

動き回っている駅前

自由に入り乱れているが

ありんこのように

それぞれは目的に向かっている

 

もし、ここにミサイルが飛んできたら

一斉に人々は散り乱れ

ガザやウクライナのように

人々は嘆き悲しむ

 

低成長で貧しくなっても

戦争で散り乱れるより

平和こそ大事

利益による成長より

命がつながることが

 

 


選ばれない理由

2024-05-01 12:10:14 | 自由詩

自分が良いと思った作品が

選ばれないのは

選者の感性に合わないから

読者の感性に合わないから

いいえ

自分の感性で

自分の作品を選べないから

 

作品は自分のもの

自分を放棄することは

人間を放棄すること

だから自己満足でよい

選ばれなくても

 

 


年寄りは立っている

2024-03-29 09:53:49 | 自由詩

若者は座っている

疲れを装って

眠ったふりをしたり

スマホを見ていたり

そのとき若者の体は

エネルギーと情報が混ざりあって

ひたすら生き物のように

けだるいオーラを発する

 

年寄りは立っている

元気さを装って

つり革にぶら下がったり

窓の外を見たり

そのとき年寄りの体は

重力を膝に受けながら

窓の外の景色の流れに

ひたすら人間のように

干からびた感性を目覚めさせる

 


異界列車

2024-03-25 12:34:41 | 自由詩

電車は満員なのに

誰も話す者はいない

スマホをしているのか

眠っているのか

 

立っている者だけが

知っている

窓の外はモヤが海面まで降りて

海とひとつになって

電車は白い知らない世界に

向かっている

 

皆はそのことを知らない

もちろん時間が消えていることも

時計を見ないから