幼ない日の思い出は
甘いオブラートに包まれた中に
重く苦い芯があって
高齢になっても解けないなら
寝苦しい夜となって
死ぬ前にその解決を迫っているのだ
僕のそれは
追いかけた年下の子が
その母親の後ろに隠れたとき
母親が僕に言った
「いやらしい子ね」という言葉
永年そのわけはわからなかった
最近になってふと思い出した
その子と納屋で
たわいもない遊びをしていたとき
納戸の節穴から覗いていた
母親の大きな目を
二つの思い出が重なったとき
半世紀以上の謎が解けた
僕は復讐されたのだ
その子をもてあそんでいたと
それは誤解だと言いたい
世紀を隔てた虚空に向かって