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文芸 エッセイ 論文  アイデンティティ

 「幼い日の思い出のわけ」

2021-07-09 22:11:28 | 自由詩

幼ない日の思い出は  

甘いオブラートに包まれた中に

重く苦い芯があって

高齢になっても解けないなら

寝苦しい夜となって

死ぬ前にその解決を迫っているのだ

 

僕のそれは

追いかけた年下の子が

その母親の後ろに隠れたとき

母親が僕に言った

「いやらしい子ね」という言葉

永年そのわけはわからなかった

 

最近になってふと思い出した

その子と納屋で

たわいもない遊びをしていたとき

納戸の節穴から覗いていた

母親の大きな目を

 

二つの思い出が重なったとき

半世紀以上の謎が解けた

僕は復讐されたのだ

その子をもてあそんでいたと

それは誤解だと言いたい

世紀を隔てた虚空に向かって