よこさんのページ

文芸 エッセイ 論文  アイデンティティ

進歩の功罪

2022-07-19 09:33:28 | 自由詩

測量機がなかった頃

人々は縄で測って古墳を作った

鉄道がなかった頃

歩いて東海道を行き来した

きっと土の香りを感じただろう

 

テレビがなかった頃

ラジオの放送劇が待ち遠しかった

今でもそのシーンが思い浮かぶ

見ていないのに

 

電話がなかった頃

約束のドタキャンはハガキだった

返事はできなかったけれど

何回も読んだ

 

自動改札でなかった頃

切符切りの駅員がカチャカチャと

送ってくれた

今はピーッという音で

通行許可してくれる

時々、もう一度とアナウンスされる

 

スマホがなかった頃

車内で本や新聞を読んだ

疲れたら外の景色を見た

海の色がまぶしかった

 

新幹線がなかった頃

窓を開けて駅弁を買った

トンネルで煙が入ってきた

あわてて窓を閉めた

 

労働時間が短くなって

余暇という時間が増えたが

ときを味わう時間が減って

スポーツジムと

マラソン大会が盛んになった


安倍氏暗殺の政治性

2022-07-14 22:39:28 | エッセイ

 安倍氏が凶弾に倒れた衝撃は言葉に言い尽くせないが、与野党の政治家が異口同音に民主主義に対する挑戦やテロと言っていたのには、利益集団が既得権を脅かされたかのような違和感があった。犯人に政治的な意図がなく、また演説時を狙ったのは、安倍氏に接近しやすかったからに過ぎないからである。事件はむしろ近年特有の、やり場のない社会矛盾に対して虐げられた者が行う誇大犯罪のような感じがする。

 バブル崩壊後の経済低迷と所得格差拡大、それを逆なでするかのようなアベノミクスなどの新自由主義は、企業利益の増加と雇用不安をもたらした。政府や議員はそんな国民生活の困難や不満に寄り添い、対策を考えてきたといえるだろうか。政治への失望が低投票率となり、そんな選挙で選ばれた議員や政府が私利や力の論理で政治を支配する。事件は国民から離れた民主主義がもたらした社会のゆがみに対する挑戦と考えれば、政治と無関係とはいえないかもし知れない。