測量機がなかった頃
人々は縄で測って古墳を作った
鉄道がなかった頃
歩いて東海道を行き来した
きっと土の香りを感じただろう
テレビがなかった頃
ラジオの放送劇が待ち遠しかった
今でもそのシーンが思い浮かぶ
見ていないのに
電話がなかった頃
約束のドタキャンはハガキだった
返事はできなかったけれど
何回も読んだ
自動改札でなかった頃
切符切りの駅員がカチャカチャと
送ってくれた
今はピーッという音で
通行許可してくれる
時々、もう一度とアナウンスされる
スマホがなかった頃
車内で本や新聞を読んだ
疲れたら外の景色を見た
海の色がまぶしかった
新幹線がなかった頃
窓を開けて駅弁を買った
トンネルで煙が入ってきた
あわてて窓を閉めた
労働時間が短くなって
余暇という時間が増えたが
ときを味わう時間が減って
スポーツジムと
マラソン大会が盛んになった