斬剣次郎の鉄道・バス斬り

 拙者、斬剣次郎である。たった今から、鉄道・バスを斬る

冬の十和田観光電鉄

2012年03月20日 13時44分26秒 | 鉄道
 先日、日本海で青森に向かった後、
 十和田観光電鉄
 に乗ってきました。十和田観光電鉄は3月末限りで運行終了する事が決定され、いよいよカウントダウンが迫ってきました。
 私は新青森から東北新幹線で七戸十和田駅へ向かい、ここからバスで十和田市駅へ移動し、そこから乗車を開始しました。



 鉄道線の廃止を決定した起因の一つである
 とうてつ駅ビル
 です。この中に十和田市駅が入居しています。このビルは元々十和田観光電鉄が1985年に建設し、所有していました。このビルの中にはダイエーなどのさまざまなテナントが入居していましたが、経営難を理由に撤退が相次ぎ、十和田観光電鉄も手を離す事になりました。そして、新たな所有者は周辺の再開発計画に伴い、十和田観光電鉄に対して駅ビルからの退去を求めました。しかし、十和田観光電鉄は経営難のより自力での移転が難しいとして、周辺に支援を求めました。ところが、周辺は支援が難しいとして拒否しました。そこが十和田観光電鉄の鉄道線の廃止を決断した大きな要因です。
 十和田市駅の駅ビルが鉄道線廃止の大きな要因となるとは皮肉な事です。それだけに経営の難しさを感じさせます。駅ビルの建設をせずに従来通りの駅のままで営業を続けていたらどうなるのかもわかりませんが・・・。



 駅ビルの中に入って、シャッター通りの中を歩くとバスターミナルの待合室にたどり着きます。そこに電車のりばと書かれた看板がぶら下がっている階段があります。その階段を上ると
 改札口
 に着きます。それだけに十和田市駅は駅ビルの中にある駅として建設当初は斬新的な存在だったのです。今にすればエレベーターも無く、移動に大変そうな感じです。




 改札口の側には自動券売機や窓口があり、駅の設備が一通り揃えられています。窓口には鉄道線の営業終了を通告する案内が貼られていました。そして、鉄道時刻表は平日と土休日が別々の場所に掲示されていました。平日と土休日でダイヤが大きく異なるためですが・・・。


 改札口向かいの空きテナントを利用して
 TKD89ミュージアム
 が開館されていました。十和田観光電鉄の写真の展示やグッズの販売が行われていました。これは運行終了を前に3月3日より開館されたものです。



 改札口を通り、線路の上を跨ぐ跨線橋を渡って、階段を降りるとホームにはモハ7200形の2両編成が発車を待っていました。12時15分発の三沢意味の列車です。




 モハ7200形
 は元東急7200系で、2002年に十和田観光電鉄入りしました。入線にあたって単行運転可能のように両運転台に改造されましたが、新設された運転台は切妻構造となりました。単行運転もあるようですが、乗車時は2本を連結した2両編成で走っていました。


 モハ7200形の列車を
 七百
 で下車しました。七百は唯一の交換可能駅で、島式ホーム1本という構成です。駅周辺には車庫が併設されており、いろんな車両が留置されていました。




 七百駅は無人駅で、駅舎はあるものの待合室的な感じで使われている程度です。元々十和田観光電鉄の駅は三沢と十和田市のみ有人で、それ以外は無人駅になっています。
 七百駅の運賃表と時刻表です。時刻表からして七百は平日のほぼ終日と土休日の朝のみ交換が行われている事が伺えます。



 七百駅の全景です。駅のみならず、留置線や車庫や変電所など、十和田観光電鉄の心臓のような感じになっています。しかし、周辺はコンビニも無い静かなところです。これも田舎のローカル私鉄らしい雰囲気ですね・・・。


 七百駅での列車交換風景です。列車交換といっても、ほぼ同時に入線し、乗降扱いを終えるとすぐに発車という感じです。つまり、十和田観光電鉄のダイヤは全体的に停まって乗降扱いしてすぐに発車出来るように組まれている事が分かります。なので、交換風景を撮影しようと思ったら一度下車しないといけなんですね・・・。


 7700系の三沢行きに乗って三沢に向かいます。


 三沢駅は駅ビルとして建設された十和田市駅とは大きく異なり、
 時代を感じさせる駅舎
 が現役で使用されています。その駅舎は1964年に改築されたものですが、建設されたのはもっと昔のだと思われます。しかし、駅舎は内装のリニューアルを行わないまま現在に至っています。そのため、昭和時代の雰囲気が所々残っています。
 しかし、十和田観光電鉄の廃止後は駅舎を解体し、バスの待合室を含む複合施設に建て替える方針が出ているようです。何せ老朽化していますからね・・・。


 改札口です。十和田観光電鉄では発車10分前に改札が始まるため、それまでの間はドアが閉じられています。でも、ドアそのものも時代を感じ汗ます。っていうか、雪国の昔を物語っているような感じです。


 改札口の前には
 そば店
 が営業しています。これも十和田観光電鉄の事業の一つで、HPにも紹介されています。そこでうどんを食べましたが、申し訳なくおいしいものでした。


 これは駅舎の中間の辺りにある2階への階段です。三沢駅舎は2階建てですが、2階は喫茶店などが入っていましたが、今は閉鎖されています。一応階段を登れば2階へ行けますが、立ち入り禁止になっています。階段の半ばにある棚が喫茶店だった名残りです。本当に時代を感じさせます。あと、ガムの自動販売機も・・・。あれ、今ではほとんど見かけなくなったんだけどね・・・。


 こちらは青い森鉄道三沢駅に通じる出口への通路です。


 三沢駅ホームです。島式ホームですが、小さいながらものどかな感じです。


 十和田観光電鉄の車両や駅舎などの所々に掲示されていた
 鉄道むすめデビューポスター
 です。十和田観光電鉄、弘南鉄道、青い森鉄道、津軽鉄道、南部縦貫鉄道の5社の鉄道むすめが2012年にデビューするようです。しかも、既に廃止され、会社名そのものが存在しない南部縦貫鉄道(今は南部縦貫)が出ているとは驚きでした。しかし、十和田観光電鉄があったという事を鉄道むすめという形で後世に引き継がれていくのはうれしい限りです。

 以上です。

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4 コメント

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十和田観光電鉄と私 (黒べえ)
2012-03-22 10:53:26
平成4年8月旧盆の直後、雨の滴る日に初めてここを訪れたとき、三沢駅のホームを出ていく姿を想像します。すなわち進行方向の左側に高い樹木が並んでいて、いくつかの観光ホテルが姿をみせるところを。
後にも何回か乗ったが、乗客の数は乗るごとに減っているようでした。駅ビルのことはさておきとして、(小規模な)地方都市の場合、モータリゼーションのさらなる進展によって、その地域の民鉄線が廃止になるということは今後もありえるでしょう。
ところで時を同じくして長野電鉄の屋代―須坂間が廃止になるが、地方都市における公共交通機関の衰退が背景にあるんですね。路面電車が健闘しているようなところでさえ、その地域のバスに関しては新車を定期的に投入せず、首都圏からの移籍車でまかなっていることが多いようです。
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十和田観光電鉄 (K2)
2012-03-22 22:49:35
十和田観光電鉄は実際に乗ったことも見たこともありません。今から三十数年前、私が小学生のころに買った「私鉄全百科」なる本には、ステンレスではなく、白地に赤いラインが入った
同電鉄ほオリジナル車、譲渡車等が写真で紹介されていて、たくさんの乗客が乗っていました。今からは想像もできませんね。
東北を活性化させるはずの新幹線の開通、かつて威信をかけて作った駅ビルの存在が路線廃止の要因になるとは皮肉なものです。
十和田市駅のホームは、量販店が入っていた駅ビルのなかにあると思っていましたが、外にあったのですね。これなら建物を壊しても駅は残せそうなものですが、やはり鉄道としては役目を終えたということでしょうか。
廃止決定の直前まではイベントなどで盛り上がっていたのが、各鉄道趣味誌で紹介されていただけに本当に残念でなりません。
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Unknown (斬剣次郎)
2012-03-23 00:26:13
 黒べえ様
 コメントありがとうございます。

 三沢駅を出てすぐの樹木・・・、温泉ですね。私は2011年が初乗車で下が、当時は昼過ぎの列車であったため、高校生が多く乗ってきた事に印象が残っています。通学輸送で頑張っていたという印象を持ちました。モータリゼーションのみならず、少子化も痛いところですね。
 地方都市では苦戦が続いていますが、最近は都会でも苦戦の報が出ているのも気がかりです・・・。
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Unknown (斬剣次郎)
2012-03-23 00:32:18
 K2様
 コメントありがとうございます。

 約30年前はモータリゼーションの波が来ていたものの、まだ多くの利用があったころなんですね・・・。その頃に出た本を図書館で借りて読んだことあるのですが、車内にはたくさんに客が乗っていた事に印象が残っています。しかも、オリジナル車やつりかけ車も全盛でしたね・・・。
 駅ビルはテナントの撤退が進んでいますが、駅周辺には最近出来た量販店が並んでいたりします・・・。店舗形態の変化に付いていけなかったのも事実です。私にすれば駅ビルが解体されても小ぢんまりした仮駅舎で営業が続けられると思っていたのですが、そんな体力が無かったとは驚きでした。
 十和田観光電鉄ではイベントに全力を挙げていたのですが、それでも効果が無かったのは残念です。でも、廃止直前の土休日には増便したり、最終日には1時間ヘッドの特別ダイヤを組むなどそれなり対応しているようです。
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