やおぶろ vol.2

スキー大好き、やおりのブログ。

読み合わせ校正。

2006-06-27 | editing(仕事)
「読み合わせ」という校正作業があります(最近 校正ネタ多いな)

細かい数字が並ぶものや、名簿をチェックするときなど、
校正者が二人ひと組になり、一人が原稿を読み上げ、
もう一人がそれを聞きながら校正紙を確認していく作業です。

人名などは漢字を一文字ずつ↓こんな要領で。


松田 聖子なら、
「松竹梅のマツ、田んぼのタ、ヒジリor聖しこの夜のキヨ、子どものコ」

田原 俊彦は、
「田んぼのタ、原宿のハラ、俊敏のシュン、彦左衛門(ひこざえもん)のヒコ」


……


電話で自分の名前を伝えるときなんかと同じです。
漢字の読みは、誰にでもわかるような、ごく一般的なものを示すのがお約束。
「ひこざえもんのヒコ」が一般的にアリなのかどうかは微妙ですが、
編集業界的にはアリ。山本さんなら「マウンテンにブック」もアリ。


さて先日、
クライアントの若手社員と一緒に名簿の校正をしたのですが、
この若手の読み上げが……。


例えば
【斎藤 夏衣】(仮名)

 斎「中が“示す”の斎」
  →○ 「斉・斎・齋」の区別ができる例示です。
     「斉」なら「略字のサイ・横棒2本のサイ」
     「齋」なら「旧字のサイ」となります。


 藤「え~っと、イトウさんとかの“トウ”」
  →× 伊藤さん・伊東さんなど複数考えられるので例として不十分。
     今度から「ふじの花の“フジ”」でお願いします。


 夏「春夏秋冬の夏」
  →○ そうね。そういう明確な表現はいいね。

 衣「イ……イ……イ……、着衣の乱れ とかの“イ”♪」
  →△ ぶははっ。間違っちゃいないけど。
     発見時の遺体の状況について捜査本部より発表がありました的な
     現代社会の世知辛さが漂うね。でも、
     この漢字で何をイメージしますか? って連想ゲームじゃないんで。
     単純に「ころも」でいいと思います。



この手の校正は、要領をつかめばテンポよくできるののですが、
不慣れなうちはなかなか大変。ずば抜けた漢字能力なんて要らないけれど、
漢字を見て、即座に熟語を発想する瞬発力は必要かも。

その点、この若手、おおむね無難な例を示すことができるのですが、
ときどき「着衣の乱れ」のような、聞いてて力の抜けることを言います。
ちなみに本人はいたって真面目。いい例を出そうと懸命です。

他にも、


【郷田 麻子】(仮名)
 郷「ゴウ、ゴウ……う~ん……、ジャパ~ン! の“ゴウ”!」
  →△ やっぱりそうきたかヒロミ ゴー。
     普通は「故郷(こきょう)のキョウ」とかでいいんだけど、
     ま、気持はわかるよ。「ジャパ~ン!」のところで
     もの真似までして見せたアホさ加減に免じて了承だ。



【伊集院 裕子】(仮名)
 院「イン……イン……、え~っと……、少年院 の“イン”!」
  →△ え~っ!
     考えた末にいいの思いついちゃった♪ みたいな元気な声で、
     どうして「少年院」なんだよ。
     この調子だと「所」を読むときは「鑑別所とか刑務所の“ショ”」
     とかになっちゃうのか。
     もっと普通のにしてくれー。




もう名簿の校正なんだか、若手社員の漢字テストをやってるんだか、
よくわからなくなってきます。

でも、
初めのうちこそ「何を言ってるんだバカ者」などと思っていたのが、
しだいに「この漢字、キミならどう読み上げる?」な~んて、
ヘンな期待に変わってきたりして。

やることいっぱいでキリキリの6月の仕事の中で、
笑いながらできる楽しい作業♪
(註:笑ってるのはあたしだけ。若手はいたって真面目で懸命です)