山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気194回 冬型が弱まるときの雲partⅠ ~山頂で観天望気 in 上蒜山(岡山・鳥取)~

2023-04-28 21:01:07 | 観天望気

2023年4月17日(月)に鳥取・岡山県境の上蒜山(1,202m)で見られた雲について、2回に分けて解説していきます。partⅠでは、天気図からその日の天気をある程度イメージしていく方法についてです。この日は、冬型の気圧配置が次第に弱まって、西から高気圧に覆われていく気圧配置でした。冬型が強いか弱いかは等圧線の間隔で見ていきます。等圧線の間隔が狭ければ狭いほど冬型は強まり、上蒜山など日本海側の山岳では風雨や風雪が強まります。逆に、等圧線の間隔が広がれば広がるほど、風は弱まって天気も回復していきます。そこで、登山前日に、登山当日の予想天気図を見て、等圧線が次第に込んでいくのか、それとも変わらないのか、広がっていくのかを確認しましょう。気象庁の予想天気図は、24時間ごとなので一日の変化を見ることができませんが、ヤマテンの「山の天気予報」では3時間ごとの予想図が見られるので、是非利用してみてください。

 

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それでは、早速、登山前日に確認した予想天気図を見ていきましょう。

 

図1 当日午前6時の地上気圧+降水予想図

図2 当日午後3時の地上気圧+降水予想図

図1を見ると、北海道の東海上に低気圧があり、その周辺で等圧線が込み合っています。また、九州の西の海上(東シナ海)では、周囲より気圧が高く、高気圧になっています。このように、日本列島から見て東側に低気圧、西側に高気圧という気圧配置を、冬型の気圧配置と呼びます。等圧線は日本列島で縦縞模様になりますが、このときは既に九州では線の間隔が広がってきて、冬型が西から弱まってきていることが分かります。

 

図1と図2を見比べますと、図2の方が等圧線の間隔が開いています。また、図1では蒜山のすぐ東側で等圧線が狭くなっています(赤い矢印)。このように、等圧線の間隔が狭い所の近くでは、まだ強風が残る可能性があります。

 

次に風向きを見ていきましょう。風があるとき、山では海側から風が吹くと天気が崩れる傾向にあるので、海側から風が吹くかどうかを見極めるためです。風は、気圧が高い方を右手に見て等圧線にほぼ平行に吹くので、等圧線の向きから判断しても良いのですが(図1の場合、西側が気圧が高いので、北から南へ風が吹く)、850hPa面(高度約1,500m)の気温・風予想図を使う方法もあります。

 

図3 850hPa面の気温+風予想図

図3を見ていただくと、線に羽根のようなものがついた記号が沢山あります。この羽根の出ている方向が風向きを表しています。見方については、図4を参照してください。

 

図4 風向きは羽根の出ている方向で判断する

図3を見ていただくと、蒜山付近では左上に羽根が出ていますので、左上からの風、つまり北西風になります。日本海からの風ということになりますので、蒜山では雲が発生しやすい風向きです。

 

雲が発生しても、雲がやる気を出さなければ、天気を大きく崩す雲にはなりません。逆に、雲がやる気を出して、ぐんぐんと成長していけば、落雷や強雨(雪)をもたらす、危険な雲になっていきます。雲は1.上層に寒気が入るとき 2.地面付近に温かく湿った空気が入るとき にやる気を出します。今回は、冬型の気圧配置が弱まっていくときなので、地面付近には冷たい空気が残っています。従って、2の可能性は低いので、1について見ていきます。上層の寒気は、高度約5,700m付近の500hPa面の気温で見ていきます。4月下旬から5月上旬頃は、マイナス24℃以下の寒気が入ると雲がやる気を出すことが多くなります。また、前回(193回 http://sora100.net/course/kantenbouki/2947 )で学んだように、850hPa面(高度約1,500m)との気温差で判断することもできます。

 

図5 当日午前6時の500hPa面の気温予想図

図6 当日午後3時の500hPa面の気温予想図

図5を見ていただくと、蒜山付近はマイナス24℃の寒気から脱しつつあることが分かりますが、まだマイナス21℃位の寒気が残っています。図6では、マイナス18℃以上の暖かい空気に覆われています。したがって、蒜山付近は次第に雲がやる気を失っていく空気の状態だということになります。こうした状況を頭に入れて、partⅡでは実際に雲を見ていきましょう。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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雲のワンポイント講座 第13回 ~雨あがりに見られる雲~

2023-04-22 13:41:29 | 観天望気

今回は、雨あがりに良く見られる雲の紹介です。雨が上がったときは、空気の中に水蒸気が満ち満ちています。空気は、もうこれ以上水蒸気が含めない、人間で言うと「これ以上、食べられないよー。」という状態になっています。そういうお腹いっぱいの状態のときに、雨によって土や畑に浸み込んだ水分が蒸発して水蒸気が空気中に出てくると、空気は水蒸気を含める限界を超えてしまうので、それを吐き出してしまいます。その吐き出した分が雲になっていくのです。写真1は、まさにそんなときに出来た雲です。

 

写真1 土や畑などから放出された水蒸気によってできた雲

写真2 森林からの水蒸気の放出によってできた雲

木々は呼吸をしているときに、水蒸気を放出します。雨あがりでお腹いっぱい状態の空気に、水蒸気がプラスされるので、雲ができ始めます。雨あがりに森の中で霧ができることが多いのは、木たちの呼吸のためなんですね。

 

文・写真:猪熊隆之

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雲のワンポイント講座 第12回 ひつじ雲→おぼろ雲は雨

2023-04-20 15:30:48 | 観天望気

ひつじの群れのような雲が空に広がることがあります。この雲を高積雲(こうせきうん)、またはひつじ雲と言います。一方、空一面にムラのない、一様な灰色の雲が広がることがあります。この雲を高層雲(こうそううん)、またはおぼろ雲と呼びます。おぼろ雲は太陽がおぼろげに見えることから名づけられました。

 

ひつじ雲がおぼろ雲に変わっていくようなとき、天気が崩れることが多くなります。4月18日は、まさにそのように雲が変化した日でした。

 

写真1 朝、長細いタイプの高積雲が現れる

写真1のように、雲がいくつも平行に並んでいるのは、空気中に重力波と呼ばれる波が発生するからで、このような高積雲を波状高積雲と呼びます。重力波によって雲ができる仕組みについては104回の観天望気講座をご参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/aacf74d5655eb3aa18757eaae0cc8f00

写真2 次第に空を埋め尽くすようになる高積雲

高積雲は写真1のように、空の一部分だけ現れているときには、天気が崩れることは少ないのですが、写真2のように全天に広がり、特に西側の空に隙間がない状態だと、天気が崩れていくことが多くなります。

 

写真3 高積雲に隙間がなくなり、高層雲に変わっていく

高積雲が塊状の雲に対し、高層雲は全天を覆う、切れ間のない雲です。通常はムラのない写真4のような雲になりますが、今回は大気が乱れていて、ムラのある高層雲になりました。

 

写真4 ムラのない高層雲

写真5 西側の空がさらに暗くなり、乱層雲(雨雲)に変わっていく

写真5のような空になると、まもなく雨が降り出します。

天気が崩れるパターンはいくつかありますので、ひとつずつ覚えていきましょう。

 

文・写真:猪熊隆之

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八ヶ岳マウンテンミーティング(YMM)開催のお知らせ

2023-04-19 20:02:43 | おしらせ

八ヶ岳山麓の山好きグループによる手作りの山岳イベント「八ヶ岳マウンテンミーティング(略称、YMM)」を5月28日(日)に開催します。3回目となる今回は2019年の初回以来のリアルでの開催となり、弊社代表の猪熊隆之がイベントMCを務めます。

日時:5月28日(日)10時~16時
場所:長野県茅野市民館(JR茅野駅東口直結)

多彩なゲストによるトークセッションやマーケット、ワークショップまで、登山をもっと楽しくするプログラムをご用意しております。無料でご参加いただけますが、一部ワークショップのみ要実費となります。イベントの詳細は公式HPでご確認ください。

https://yatsugatake-mm.com/

ぜひお誘い合わせの上、ご参加いただけましたら幸いです。

株式会社ヤマテン
八ヶ岳マウンテンミーティング実行委員会

 

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ゴールデンウィーク期間の「連休期間予報」と「おすすめ山域」につきまして

2023-04-19 10:25:36 | おしらせ

ゴールデンウィークの「7日間予報」につきまして、ご案内申し上げます。

発表日時:①4月26日(水)17時半頃、②4月30日(日)17時半頃
予報対象期間:通常の2日先までの予報に加えて、①5月3日(水)までの1日ごとの予報、②5月7日(日)までの1日ごとの予報
予報対象山岳:
利尻山、大雪山、飯豊山、燧ヶ岳、谷川岳、剱岳、槍ヶ岳、赤岳、甲武信岳、丹沢山、富士山、木曽駒ヶ岳、北岳、八経ヶ岳、大山、石鎚山、久住山、宮之浦岳

連休期間予報は、スペシャル予報の詳細予報ページにて、【気象予報士のコメント】と【専門天気図】の間に表示されます。
掲載期間は、予報発表から約24時間のみとなりますので、ご注意ください。
グループ分けやご利用上の注意点につきましては、下記の記事をご参照ください。
https://help.yamatenki.co.jp/hc/ja/articles/4402158621209 

なお、4月27日(木)発表の「おすすめ山域」(対象は全国の山岳)は5月2日(火)までの情報、5月2日(火)発表では5月7日(日)までの情報を掲載します。

皆様のゴールデンウィーク期間の登山計画や、気象リスク軽減のお役に立てれば幸いです。

株式会社ヤマテン
山の天気予報係

 

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