山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座92

2017-01-16 15:34:34 | 観天望気

さて、今回はクラブツーリズム社で開催していただいた、「山の天気を学ぶ飯盛山スノーハイキング」の際に見られた雲についての紹介です。

開催された1月15日(日)は冬型が強まり、上層に一級の寒気が流れ込んだめ、ヤマテンでも大荒れ情報を各山域に発表していましたが、飯盛山は八ヶ岳、奥秩父、南アルプスなど高い山々に四方を囲まれ、風の影響が小さいこと、天気も大崩れはしないこと、雲を見たり、寒気の厳しい冬山のリスクを学ぶにはむしろ良い条件であることから、予定通り催行しました。

期待通り、なかなかいい雲や自然現象が見られました!

さて、当日の天気図です。

図1:1月15日9時の地上天気図(気象庁提供)

日本列島の東海上と北海道付近に低気圧、図の左上のシベリアに高気圧がある典型的な冬型の気圧配置です。日本列島には等圧線が南北に走って縦縞模様となっています。等圧線の間隔が東京/名古屋(仙台)の距離より狭いときは、開けた尾根上や稜線で強風になりますが、今回もそのパターンです。等圧線の間隔については以下の表も参考にしてください。

図:山と渓谷2016年4月号より

 

冬型の気圧配置が強いときは、日本海側の山岳だけでなく、太平洋側の山岳にも雪雲が侵入してきます。特に、日本海との間に高い山がない所では雪雲がかかりやすくなります。

図:岳人2017年1月号より

目的の山に雪雲が入るかどうかは、地図で確認しましょう。今回は、飯盛山ですので、周囲に高い山があり、雪雲は入りにくい場所ですが、北風が吹くときは、千曲川に沿って日本海からの湿った空気が入りやすくなります。天気図を見ると等圧線が南北に立っていて北風が吹くことが予想されます。

 

ということで、登山口に着いたときには雪が降っていました。下の写真は飯盛山山頂付近から南西方向を見たものです。

写真1:飯盛山山頂付近からの南アルプス、甲府盆地方面

写真の右側が北西方向、左側が南東方向です。北西からの季節風によって、雪雲が諏訪方面(右方向)から侵入し、八ヶ岳と南アルプスの間を通って左側の甲府盆地方面に移動しています。図の右から左にかけては斜面が下っているので、雪雲は緩やかに下降していきます。空気は下降すると温まっていくので、雪雲は蒸発して弱まっていく様子が分かります。青い囲み線の中の雲を見ると右側の雲の方が発達しており、左側になるにつれて雲がちぎれて小さくなっていることが分かります。

また、赤い囲み線の中は雲からレースのように白いものが垂れ下がっていますが、これは降雪です。降雪が蒸発しながら地上に降り注いでいる様子が分かります。図の右側では降雪があるのに左側にはないのは、雪雲が弱まっている証拠です。

写真2:やる気を出した雲(積乱雲)

上の雲を見ますと、雲の底は真っ黒になっており、上方にも成長しています。このように背が高い雲はやる気を出している証拠です。

雲のやる気については下記サイトもご参照ください。

http://www.sangakujro.com/%E9%9B%B2%E3%81%8B%E3%82%89%E5%B1%B1%E3%81%AE%E5%A4%A9%E6%B0%97%E3%82%92%E5%AD%A6%E3%81%BC%E3%81%86%EF%BC%88%E7%AC%AC10%E5%9B%9E%EF%BC%89/

そして、雲の右側の下(青い囲み線)は雲から筋のようなものが伸びています。これは尾流雲と言って雲や降水が蒸発しながら消えていっているものです。雲の中で雨や雪の粒子が成長してくると、雲よりも数百万倍も体積が大きい雨や雪が落下して、その周辺の空気がひきづりおろされて下降流になっていくのです。赤い囲み線の部分はまだそこまでいっていませんが、雲粒が落下しかけている様子が分かります。このように雲の中で尾流雲ができているということは、いつ雨や雪が降りだしてもおかしくありません。

また、このように真っ黒な雲は発達した積乱雲である可能性があり、落雷や突風などにも注意が必要です。そのようなリスクがある場所にいるときは、すぐに避難しましょう。今回は雲頂高度から落雷や突風の心配はないと判断しましたが、一般の方には見分けが難しいので、逃げたほうが無難です。

さて、この日は広島や京都で大雪になるなど、普段雪の少ない所でも雲がやる気を出して、あちこちで悪さをしました。その原因は冬型が強かったことと、もうひとつ、上層の寒気です。

この季節は500hPaで-30℃以下になると、雲がやる気を出しやすく、-36℃以下になるとめっちゃやる気を出します。ヤマテンの500hPa気温予想図を見ますと、

 

 

 

マイナス36℃線が飯盛山付近まで南下してきています。そして、マイナス30℃以下の寒気が中国地方から京都、名古屋付近まで南下しました。ということで、雲がやる気を出した訳ですね。

冬型が強い弱い、上層の寒気で天気はガラっと違います。また、山によって雪雲が発達したり、弱められたりします。それを目の当たりにできたツアーでした。皆様お疲れ様でした。

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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