山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

雲のワンポイント講座第24回 ~日本海側の疑似好天~

2024-03-15 15:12:41 | 観天望気

日本海側の山岳では天候が急変することが多く、朝のうち晴れていて昼頃から暴風雨、または猛吹雪になることがあります。

そのようなときに気象遭難が多発します。こうしたリスクを予想するには事前に予想天気図を確認することが大切ですが、登山中に雲の変化から天候悪化を読み取ることができます。

今回は、天候が急激に悪化するときの典型的な雲の変化について解説します。

 

疑似好天の朝(3月8日)。嵐になる4時間30分前。西の空に巻層雲が広がっているが、この段階では急激な天候変化の兆しはない。

西の空に組織的な積乱雲の端が(上端が毛羽だっているのが特徴)。さらにその前面に積雲が現れる。このわずか1時間後に、嵐になる。

嵐になる40分前の空。上端が毛羽だっている雲が先ほどより接近し、その下の雲の底がさらに暗くなる。

嵐になる30分前の空。いよいよ雲の暗い部分が接近してくる。

嵐になる20分前の空。

嵐になる10分前。雲からレースのように垂れ下がっている部分、降雪雲(降水雲)が見られる。

嵐になる5分前。すぐ近くまで降雪雲が迫る。

激しいアラレが降り出し、雷鳴も。

アラレの後は吹雪に。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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猪熊隆之の観天望気講座199回 ~天気図と地図から天気が良い山を選ぶ方法~

2024-02-26 17:18:37 | 観天望気

今回は、天気図と地図から天候が良い場所を選ぶ方法についてです。

2024年2月19日に「山頂で観天望気講座」を竜ヶ岳(山梨県)でおこなう予定でしたが、2日前に同じ山梨県の九鬼山に変更しました。

理由は、当日予想される気圧配置から竜ヶ岳では雨と霧で視界が悪く、空や雲を見るのに適しないと判断したことと、九鬼山など山梨県東部も雨予報でしたが、地形の影響で天気の崩れが小さく、視界が効くので空を見ることができると予想したからです。

図1 竜ヶ岳、九鬼山の位置と駿河湾からの湿った空気の通り道

富士山麓の竜ヶ岳は、ダイヤモンド富士など富士山の展望台として知られる山です。空や雲を見るのにも適しており、富士山のどこに雲が発生するかや、雲の種類によってその後の天候を知ることもできるので、山の天気を学ぶツアーや、観天望気講座を過去に何度か実施してきました。

 

竜ヶ岳は駿河湾からの湿った空気が入りやすい場所にあります。これは奥安倍の山地と愛鷹山の間、富士川に沿って湿った空気が山に遮られることなく直接入ってくるからです。図1をご覧ください。今回のように南から南西の風が吹くと、駿河湾からの湿った空気はオレンジ色の矢印のように、竜ヶ岳方面や富士山、道志・丹沢方面へと流れていきます。

一方で、九鬼山は南西側に富士山があり、南から南南西側に道志山塊や三国山などがあるために南からの湿った空気が入りにくい特徴があります。そのため、下層(上空約2,000m以下)で湿った空気が入るときには、これらの山で湿った空気が堰き止められ、雨雲もこれらの山を越えるときに弱められます(ただし、低気圧本体の雨雲など、中層(上空約3,000~6,000m)の雲がかかる場合には、山より高い雲のため、これらの山を越えて九鬼山でも雨になります)。

その辺りを雨雲の動きで見てみましょう。

https://www.youtube.com/watch?v=CdLhZckIhl8

この雨雲の動きを見ても分かる通り、竜ヶ岳には強い雨雲が断続的にかかる一方、九鬼山にはほとんどかかっていません。実際に、登山中、雨がぱらつくことはあっても、傘や雨具を必要とする雨は降りませんでした。

写真1 青空が上空に見える時間も(2月19日 九鬼山にて)

上の写真のように、南側にある杓子山や御正体山を越えると雨雲が弱まり、青空が広がることもありました。

それでは、南~南西風が吹くことがどうして予想できたのか。

それは天気図を見ることで分かります。

図2 山頂で観天望気当日(2月19日)午前9時の天気図(気象庁ホームページより)

上図(図2)は、当日午前9時の天気図です。日本海西部には低気圧があり、東北東に進んでいます。一方、日本の東海上には高気圧があります。等圧線の間隔が込んでいきているので、高い山では風が強くなっていく気圧配置です。九鬼山でも山頂付近やその手前の南側が開けた場所で風がやや強まるときがありました。さて、本題に戻りましょう。風は、高気圧の周辺では時計回りに吹きます。そしてほぼ等圧線に平行に吹きます(実際にはやや気圧が低い方に横切るように吹く)。このように、等圧線の向きから風の向きを知ることができます。今回は高気圧の西側に入るため、富士山周辺では南から南西風が吹きました。

図3 850hPa面(上空約1,500m)の気温と風予想図(山の天気予報「専門天気図」より i.yamatenki.co.jp/)

また、気象庁のホームページなどで見られる天気図で分かりにくいときは、850hPa面の風向を参考にすると良いでしょう。風向の見方は、下記を参考にしてください。棒から羽根のようなものが出ていますが、その羽根に向かって風が吹きます(図4)。

図4 風の向きと風の強さの見方

このように、事前に天気図から風向きを読み取り、地図から湿った空気が入りやすい場所を予想することで、天気の崩れが小さい山を選ぶことができます。

ぜひ、皆さんもチャレンジしてみてください。

ヤマテンでは、山で雲の見方を学ぶ「山頂で観天望気」を不定期で実施しています。

 

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雲のワンポイント講座第23回 ~雨氷が発生するしくみ~

2024-02-26 17:10:37 | 観天望気
 

今回は、雲ではなくて、雨氷についてです。

今日(2024年2月22日)は、長野県中部で8年ぶりに大規模な雨氷(うひょう)が発生しました。

写真1 木に付着した雨氷

雨氷が発生するときは、停滞前線が日本付近に停滞するときが多いです。前線は暖かい空気と冷たい空気がぶつかる所にできますが、地上付近だけでなく、上空に向かって延びています。前線の北側では地面付近に冷たい空気が入る一方で、上空には暖かい空気が南から流れ込みます(図1)。

図1 雨氷が発生する様子(図の右側が北、左側が南)

前線の上空には暖かい空気があるので、落下してきた雪は暖かい空気を通る中で雨に変わり、それが地面に落ちていきます。一旦、雨に変わると、氷点下の空気を通っても余程低温になったり、長い間落下しない限り、再び雪に変わることはありません。

しかしながら、氷点下の中でかろうじて水滴でいる雨のため、木や草、地面などに付着するとたちまち凍り付いてしまうのです。それが雨氷です。

長野県中部では2016年に大規模な雨氷が発生しました(写真2,写真3)。

写真2(上) まるで雨氷の額縁(背景は蓼科山)/写真3(下) 雨氷に彩られた山

実際、今日の館野(茨城県)のエマグラムを見てみると(信州の近くには高層気象観測地点がないので)、上空2,500~3,000m付近に0℃以上の暖かい空気の層があり、そこを通ったときに雪が解けていることが分かります。また、その下の上空800~1,500m付近では、それより気温が低い空気の層があることが分かります。ヤマテンのある長野県茅野市は高原になっているので、標高800m~1,200m付近に氷点下の冷気があり、標高1,500m付近の八ヶ岳山荘では今朝3℃位と山麓より暖かく、黒百合ヒュッテや高見石など標高2,000m以上でも雨になりました。雨氷が出現する条件が揃っていたことが分かります。

次はいつ発生するのでしょうか?また、出会えることを期待しています。ただし、倒木や停電などの災害になることもあるので、ぬか喜びはできませんが・・・。

文、写真:猪熊

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猪熊隆之の観天望気講座198回 車窓からアルプスの天気を予想しよう ~特急あずさ・中央道編~

2024-01-19 14:23:24 | 観天望気

東京方面から八ヶ岳や中央アルプス、北アルプス方面に向かうとき、中央線の特急「あずさ」や中央高速道路を利用する方が多いと思います。実は、登山口に向かう道中の車窓からでも分かることが沢山あります。今回は、冬型の気圧配置が強まるときの天気です。

冬になると、日本列島の東側や北側に低気圧、中国大陸に高気圧がある冬型と呼ばれる気圧配置が多くなります。冬型と言えば、日本海側では雨や雪、太平洋側では晴れという天気が代表的ですが、冬型の気圧配置が強まると、北アルプスや御嶽では猛吹雪となり、中央アルプスや八ヶ岳、南アルプス北部でも吹雪となることがあり、稜線では暴風が吹き荒れます。したがって、そのような天気のときは、森林限界を超えるのは危険です。

図1 冬型が強まるときの気圧配置


冬型が強まるかどうかは、予想天気図で確認するのがおすすめです。図1のように、等圧線が日本付近でびっしりと走り、間隔が狭いときは冬型が強いときです。

冬型が強まるときは、特急「あずさ」では勝沼~塩山間で左手に見える南アルプスの山並みに注目します。中央道では、一宮御坂から甲府昭和IC間でほぼ正面に見える南アルプスに注目します。

写真1 塩山付近から西の方角の空。


写真1では晴れている日に見えるはずの間ノ岳や北岳、鳳凰山が雲に隠れています。このような雲に白根三山や鳳凰山が覆われているときは、南アルプスの北部や八ヶ岳、中央アルプスでは吹雪いており、稜線では強風が吹き荒れています。北アルプスでは恐らく猛吹雪となっていることでしょう。

写真2 鳳凰三山~甲斐駒ヶ岳にかかる雲


韮崎を過ぎると左手に鳳凰三山が見えてきますが、写真2のように、山に雲がかかっているときは冬型が強いか上層の寒気が強い証拠です。いずれにしても山は吹雪いていると思った方が良いでしょう。鳳凰三山~甲斐駒ヶ岳でこのレベルだと、八ヶ岳や中央アルプスはもっと悪い天気になっているはずで、北アルプスは猛吹雪や大雪に見舞われることが多くなります。このようなときは、小淵沢付近から雪がちらつき、富士見駅付近では吹雪いていることもあります。

進行方向右側の席を取った場合には、八ヶ岳にかかる雲が参考になります。八ヶ岳にかかる雲から天気を推測する方法は、166回をご参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/31e7d862c5b21b5c161766de111cb9ea

富士山はこのようなときでも晴れていますが、上層の寒気が強いときは、写真3のように、富士山の山頂付近にモクモクとした雲が出ていることがあります。このようなときは、関東平野でも午後、天候が急変する恐れがあります。実際、この日は午後から天候が急変し、都心でも初雪になりました。

写真3 富士山にかかる“やる気”のある雲


また、富士山で東側にたなびいている雲(旗雲 はたぐも)が出ているとき(写真4)は、暴風が吹き荒れている証拠です。このような日は晴れていても上部で行動することは非常に危険です。

写真4 旗雲が出ているときの富士山


車窓からの風景で、このように目的の山の天気が推測できます。ぜひ、活用して安全に登山しましょう。
文・写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)
※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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観天望気講座197回 寒冷前線の接近、通過に伴う雲の変化

2023-12-24 14:36:57 | 観天望気

今回取り上げるのは寒冷前線と呼ばれる前線が接近して通過していく際の雲の変化について見ていきます。

 

まず寒冷前線とは、暖かい空気と冷たい空気の境目で、前線の周辺では狭い範囲ですが天気の急変をもたらすような積乱雲(せきらんうん)と呼ばれるタイプの雲が発生しやすい場所です。この寒冷前線が近づいてくると、晴れていた空が急に暗くなり、ザっと雨や雪が降ってくることがあります。

 

この日の天気図を見てみましょう(図1)。北海道付近に低気圧があり、低気圧から南~南西方向に伸びている青いラインが寒冷前線と呼ばれる前線です。

 

図1 11月28日6時の天気図(赤矢印の先が写真の地点)(気象庁提供、ヤマテン加筆)

写真1 ヤマテン事務所周辺から見た西の空

写真2 ヤマテン事務所周辺から見た北西の空

寒冷前線が接近してくる前は、まだ青空が多いですが(写真1)、寒冷前線の接近に伴い、北西の空には雲が広がり始めています(写真2)。

 

写真3 尾流雲が見られるようになる(白い囲みの部分)

寒冷前線が接近してくるにつれて、西や北から雲行きがさらに怪しくなってきました。白い囲みの部分では、レース状のモヤモヤした雲が見られていますが、これは尾流雲と呼ばれ、雲から落ちてくる雨や雪が地上に達する前にできたもので、地上に達する前に蒸発している様子が見えています。この尾流雲が見られると、そのあとに雨や雪が降ってくることが多く、尾流雲が地上に達すると降水雲と呼ばれます。

 

図2 11月28日9時の天気図(赤矢印の先が写真の地点)(気象庁提供、ヤマテン加筆)

写真4 尾流雲から降水雲になり雨が降り出す

図2の天気を見ると、まさにヤマテンの事務所周辺を寒冷前線が通過していくタイミングとなります。写真4は前線通過時の様子で、空は一面雲に覆われて、先ほどの尾流雲が地上に達し降水雲となり、このタイミングで事務所周辺でも雨が降りました。

 

図3 11月28日12時の天気図(赤矢印の先が写真の地点)(気象庁提供、ヤマテン加筆)

写真5 雨上がりの東の空には虹が

寒冷前線による雨や雪は降っても短い時間のため、天気の回復も比較的早いのが特徴です。12時には前線は東へ離れ(図3)、西の空からは日が差し込んできました。このタイミングで東の空にはキレイな虹が見られました(写真5)。寒冷前線通過後は、東の空に注目すると、キレイな光景が見られるかもしれませんね。

 

文:窪田純(株式会社ヤマテン)、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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