ふわゆる~な感じ

タイトルと実際の僕は全然違うと思います。
ふわゆる~な感じにできたらなぁと、日々のことを綴ります。

「となり町戦争」 by 三崎 亜紀 を読んで。(人生って大変)

2005-04-04 21:44:25 | 自己紹介
天才だって、広告に書いてあったし、自治体同士が戦争を始めるというおかしな設定が面白そうだったので、「となり町戦争」という本を読んでみました。久しぶりに読みたいって思った小説です。

なにか不思議でとらえどころの無い小説でした。
”きわめて普通な価値観を持つ主人公「ぼく」”の視点から、”自分の意思を見せず/持たずに戦争をしてしまっている「香西さん」という市役所の女性”と”穏やかな話し方、目をしているけど、当たり前のように人を殺すことができる、不幸な過去を持つ「主任」”を描いた小説と僕はとらえました。

「香西さん」は市役所の決まりごとや条例に従って、淡々と戦争業務をこなしていきます。多くの人や自分の弟が死んでいても、ほとんど「自分」というものを見せずに彼女はいつも淡々と業務をこなしてます。そしてたまに、かすかに「自分」が表情や声色になって出ちゃいます。出ちゃってもすぐにその「自分」を押し殺してしまいます。
彼女は、戦後の結婚相手まで決められていましたが、この小説の最後に主人公「ぼく」と海辺で抱き合いながら涙を流します。何も言葉にしませんでしたが、涙を流します。ここで僕は救われた気になりました。どうやったって人の自由な意思や気持ちは抑えることができません。

さて「主任」ですが、彼は人を殺すことを「奪うことではなく、与えること」だと言ってます。人はみんなそうだと思いますが、何かしら理由をつけて自分を正当化したがります。人はみな自分の意思で生きてるのではなく、心の奥底の強烈なパワーで生かされています。それが心の中で自分が生きるために理由がすりかわり、自分を正当化する方法を見出そうという意思が無意識に働きます。たぶん「主任」も自分が経験した不幸な現実を消化して、穏やかに生きるためにそのような考えに至ったんだと思います。人を殺すような経験の無い、自分が幸せだと思います。
物語の最後にこの「主任」はいなくなってしまいます。また、人を殺してしまったんでしょう。きっとそんな自分を正当化しなくてはいけない現実が嫌になったのでしょう。そんなことを考えなくてもいい場所へ、心の奥底の強烈なパワーで生かされている自分を連れて行き、また穏やかに生きたくなったんだと思います。そこでは少なくとも不幸な過去を思い出さなくてもいいかもしれませんし、嫌な思いをして過去の記憶がよみがえる度に自分を正当化する必要がありません。「主任」は穏やかに生きたかったんです。

不思議でとらえどころの無い小説でしたが、やっとここまでこの本について文章が書けるようになりました。

さて、この本を書いた人は天才だろうか?と考えました。僕にとっては、心の一番柔らかい部分をくにゅくにゅされた村上龍の「海の向こうで戦争がはじまる」の方がよっぽど天才の文章だと思います。心のなかの一番柔らかい部分をくにゅくにゅする小説なんて他には無いから。。。それに比べると天才度は、村上龍の方が僕の中では上です。

きわめて主観的な文章でした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿