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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

二つの書評・・ブロー・ザ・ウィンド

2022-09-07 19:31:15 | 憂生日記 その1

前回応募作の「白蛇抄」同様、やはりこれらの作品にも「憂生ワールド 」と呼べる物が確固として存在している。

細かい心理描写の積み重ねによって織り成す著者の人間ドラマ は、恋愛というテーマを掲げながらも、決してそこだけには留まらない。とりわけこの三作品《蛙・・他)に関しては、「人間」と云うものを真っ直ぐ見据え、人が生きるという事を誠実に問う姿勢が終始貫かれており、静かな感動に満ちている。

● まず『ブロー・ザ・ウィンド 』は、「大切な人の死」を乗り越えられずに苦しむ女性の葛藤と、そんな彼女を愛し、見守る男性とが次第に心を通わせ強い絆で結ばれてゆくという、恋愛小説の王道とも呼べる物語。

文章には「青さ」が残るものの、心理描写に長けた著書らしく、精緻に主人公らの心の機微を描きとっている。

また「吹き返した風が風見鶏 を再びくるくると回らせ始めるとレフイスに早くおいでよといわれているように思えてアランは足を早めた」といった一文に著者の感性の鋭さ、作家としての嗅覚のよさがきらりと光っている事も見逃せない。

おそらく是は、タイトルの「ウィンド」を意識して挿入された一文であろう。二人に「しあわせの予感」

がほんのりと感じられる表現が秀逸である。

構成的にも読みにくさは無い。

だが、やはりきにかかるのは冒頭部分である。振り返って読まなければ判断できない事が多いのだ。

 

幼馴染の残した1冊の日記が主人公に投げかける波紋、

//ありえたかもしれない未来//
に、揺さぶられる主人公の心情が、繊細でイマジネーション あふれる筆致で描かれととも好感が持てます。
亡くなった者を想う切ない悲しみと今を生きる人間への愛しさが交錯しながら、
全体に優しい「風」を感じるのは
「海」という背景がストーリーに豊かな表情をあたえているからでしょうか?
主人公を支えるアランに温かな人間味があり、
情感豊かなラストシーンが印象的でした。
読者の深い共感を呼ぶと共に、今後の筆者に大きいな可能性を感じさせる作品です。


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