goo blog サービス終了のお知らせ 

憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

邪宗の双神・18   白蛇抄第6話

2022-12-22 11:18:41 | 邪宗の双神   白蛇抄第6話

伽羅から聞かされた事で澄明に見えて来た物があった。
それで直、澄明は残りの二人を集めた。
伽羅により波陀羅という女鬼からもたらされた話しをする。と、
「双神はおそらく、政勝を使って
一穂様とかのとのシャクテイを得ようとしているのだと思われます」
「シャクテイ?」
不知火は聞き返してきた。が、善嬉は腕を組んだまま黙って澄明の続きを待っていた。
「性の根源力・・・気・・と、言って良いかと」
思い当たる言葉もなく澄明はそう説明すると、不知火が
「成る程・・・で、政勝を使うとは??」
不知火の疑念をはっきりと言い正したのは善嬉の方で
「出きるものか。政勝は、龍が子孫だぞ」
今や公然の秘密となった事を言い放った。
澄明はその善嬉に無念そうに首を振った。
「いえ。黙っておりましたが、政勝の思念を振るほどの妖力を持っております」
「なんと?」
不知火は事の大きさがどうも予想を越していると考えていたし、
善嬉はそうなると政勝と相対さねばならなくなるのかと臍を噛んでいた。
「それでは政勝にも黒き影が着いておったのか?」
「いえ。それは無いのですが。
かのとは夫婦事で政勝の様子が妙だと言ってきました。
一穂様の方に対しても政勝が妙な事をしかけ・・」
「妙?」
「一穂様は覚えておられませんが・・・男色・・の如き・・・」
「ま?政勝が?」
「どちらからとものうだそうです。白峰が言うにはどちらにも意識が無かったと言います。おそらくその通りでしょう。
かのとに対しても、政勝は我がした事の思念が一切なかったのですから」
「そういう事か」
善嬉が得心するので不知火が
「双神は一穂様とかのとのシャクテイを得るが為罠を張っているのは判った。
が、どうやってマントラを口伝させる?」
尋ねれば、澄明が
「それが為に政勝を術中に嵌め様としていたのでしょう?」
不知火の足らぬ言葉の底が見えず同じ事を繰り返すと、
不知火は双神にはそれが出来るのだなと思い黙りこんだ。
「む・・・」
不知火の言葉に触発されて白銅の中でも絡んだ糸が解かれると
ひのえに尋ね返した。
「いや!?それなら既に政勝はかのとの時にマントラを唱えて居ろう?
もう既に二人ともおかしくなっておろう?」
「と、いう事は口伝する伝い手が必要であるという事だろう?
双神自らの口伝は独鈷の事でも判るが
その姿を現さねば出来ないと考えられぬか?」
「思念を振るだけしかできぬと?」
「じゃろう?第一、波陀羅という女鬼に反古界を作っていたと言うのに
波陀羅が伽羅に喋る事を止めれぬという事も可笑しい。
奴らが思念を振れるのはその事だけではないのか?」
「すると・・・・いずれ、政勝達の前に姿を現すという事か?」
「もしくは・・・・伝い手が忍びよってくるか?」
「その波陀羅という女鬼が伝い手になるという事も考えられるな?」
「それは、恐らく無理でしょう」
三人の推察を聞いていた澄明がそう言う。
「信じられるのか?」
善嬉は澄明の言葉の裏になんぞあるなと踏んで聞いてみた。
「いえ。波陀羅がという事でなく、
白峰の話では天空界におわす黒龍が
かのとと政勝殿の守護に入っているという事です。
此度の政勝の行動を一喝して正気に帰らせたのも黒龍だと言いますから」
「ふー――ん。
と、なると双神は益々一穂様に焦点を宛てて来るという事になるかの?」
と、善嬉が言う。澄明はそれに対して
「判りません。が、かのとという女子の性と
一穂様という男の性の両極が欲しいが故の行動に思えますから」
答えると、今度は不知火が得心した様に呟いた。
「成る程の。かのとならすでに何時でも政勝の手中におる女子だから、
双神も慌てずとも良いという訳か」
「政勝のかのとへの妙な行動は何処かで、一穂様に繋がっていたという事でしょう?」
かのとに対しての政勝の不思議な行動があった同じ時刻に、
一穂の方がどんな思念が沸かされていたのかは探り様も無いが、
澄明の言葉からその事が一穂の中のまだ幼い性を目覚めさせて行く
何らかの手伝いになったのではないか、
あるいは起爆剤を与えたのではないかと思い至って三人は顔を見合わせた。
「つまり、政勝に独鈷のような役割をさせようという目論見か」
「澄明。一穂様をどう護ればよい?」
「とにかくは・・・伝い手が現われるか・・・双神自ら現われるか」
「やはり、その女鬼が事を利用するだろう?」
てんでが勝手に気懸りな事を口にするのであるから、澄明も返事に窮していたが
「判らない事があるのです」
と、言うと、三人はぴたりと黙りこんで澄明を見た。
「先に不知火が言うた事で確かに
何故、かのとだけでもマントラを唱えさせればよいものを
なぜ、唱えさせなんだかという事です」
「両極揃うのを待っておるという事でないのか?」
「ええ・・・。だから、何故待たねばならぬのかという事が・・・」
「政勝の中に両方が無いと口伝できぬという事か?」
「ええ。そう考えると波陀羅に独鈷がマントラを教えた事も
二人の子に教えた事も納得がいくのではないですか?」
「よう・・・判らぬ。順を追うて話してくれぬか?」
「つまり、双神から口伝を受けるには、
両方の性の交渉を持った者でないと受けられないのでは?」
「そういう事か。となると波陀羅は口伝する事ができぬと言う事であり、
波陀羅の二人の子の内男の方はできるという事か?」
「判りませぬ。一樹という男は男に対しては受け手で、
女子に対しては当然、使手ですから、
その形でも両極揃うたという事なのか、
独鈷からの口伝でも一樹には、伝い手の技力があるのかどうか・・・。
只、言える事は口伝できる者はそんなには多くいない」
「そうじゃろうな。そのような者があちこちにおれば
魂が腐食した男や女もごろごろ居て、
とっくに双神の事なぞ明るみに出ておったろう」
「それと性の根源力が要るなら、そう言う、俗にいう両刀の
相手構わず多くの者と交渉を持つ者を探して行けば良さそうなのに、
まだ性の事さえ定かでない一穂さまを狙うてみたり、
政勝殿は、かのと、かのとで・・・・普通なら一穂様に」
「そこかもしれぬ」
不知火がうめく様に言った。
「え?」
「かのとと一穂の共通点は政勝に近しいと言うだけで、
偶々、標的になったのかもしれぬと、思っておったがの。
波陀羅の子とてマントラを他の者で試そうと言う気はなかろう」
不知火はそう言うと続けた。
「つまり、何らかの感情が混ざり合ったシャクテイが欲しいのではなかろうかの?」
不知火の言葉に何おか考え込んでいた澄明はふと、両の手で顔を覆った。
その様子を見ていた白銅が澄明の肩を抱くと
不知火も善嬉も白銅の様子に察する物があって立ち上がると社の外に出ていった。
「ひのえ・・・・」
白銅が澄明の背に廻り込む様にして澄明を囲む様に抱き込むと
「白銅・・・すまぬ・・・」
白銅に詫びながらその胸に寄りかかって行った。
「どうした?」
優し気な白銅の言葉に
「双神に何があったかは知らぬ。けれど、あれらも必死なのじゃと思えて。
シャクテイを求めているだけならまだしも、
あれらの心の底は淋しゅうて、淋しゅうて餓え狂うておる」
「阿呆う。また、そういう脆さを出しよる。
御前の、凡そ、何もかもを許すその優しさが時に罪を作る事を覚えておかねばならん」
「白銅?」
「御前がそれを例え様も無く憐れだと思う裏側にあるのは、
白峰の事でわしを諦めようとした御前自身の悲しい通り越しがあるせいだ」
「・・・・・」
「哀しかった。辛かった。淋しかった。
なれど、その自分を認められる立場で無いと思いこんで自分を偽ったわの?
その心の底に生じた童女がな、
悲しい者を、辛い者を、淋しい者を見ると御前の心の上に現われてくる。
が、の、それは決して、相手の為なぞでない。己が為の慰めの涙だ」
「・・・・・」
「何故なら、どうあがいても今のお前にはわしがおる。
それを忘れて要らぬ同情なぞされたら向こうも御前の幸せぶりに腹を立てるだけだ」
「白銅・・・わたしは・・・」
「何も言うな。お前が事はわしが命じゃと思うておる。それを護れなんだわしが・・・」
白銅の胸に哀しい後悔を湧き上がらせたくない。
白銅に己を責めさせる言葉を言わせたくない。
その思い一心で何時の間にか澄明は白銅のその口を己の口で塞いでいた。
その澄明をさらにしっかりと抱き寄せると白銅が紙縒りを引いて
式を生じさせると外の二人に放ったのは言うまでもない。

現われた式神に顔を見合わせていた二人であったが
「わしは一穂様を・・・・」
善嬉が言うと、不知火が
「わしは波陀羅の子の事、それと、藤原永常と言う陰陽師の事、探って見て来るわ」
御互いの行動を決めると二手に分かれていった。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。