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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」1

2022-11-20 21:22:53 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
久方の休日であるというのに総司は、書庫の中である。一冊の本を手に取ると其の場所に立ち尽くしたまま、書かれた流暢な文字に目をおとしてゆく。「沖田はん。お昼どすえ」した働きのお勝が呼びに来た前で、総司は本を書棚に戻すと大きな伸びをしながら「もう・・・そんな刻限か」と、笑った。「お好きどすなあ」朝に総司を見たきり、それきり部屋にいなくなった。また、書庫の中にはいりはったと、お勝は見当をつけていた。豪商の . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」2

2022-11-20 21:22:37 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
お勝の男という言い方はいささか野卑である。が、この際他の言いようが無い。お勝の男はお勝の亭主でもない。かといって、お勝と恋を語らうだけの若造でもない。お勝は男の抱える事情を鵜呑みのまま男と女の一線を超えた。超えた以上、お勝も覚悟をつけた。一緒になれる仲でもない。一緒にいれる時まで一緒にいて、「骨はあたしが拾ってあげまひょ」そう決めた。何故なら、男は新撰組の志士だった。無論、この事は誰も知らない。沖 . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」3

2022-11-20 21:22:21 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
こそと音がすると居間の襖があく。見上げた勝のまなざしの向こうに背の高い男の影がある。「おお。くうておるな」見廻りを口実に沖田の様子を窺いに来た土方が後ろ手で襖を閉めると沖田の側に座った。「土方はんは?」沖田より先に勝が土方の昼を尋ねた。横目で勝の傍らの盆にある飯椀でそれと察した土方は「ここほどの馳走ではないが、すませた」ぶっきらぼうに答えられると、お勝もどうも土方が苦手であるのを隠せないらしく、取 . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」4

2022-11-20 21:22:04 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
『新撰組がいいか・・』そうまでして大和のおのこの生き方を新撰組にもとめるか。ますます、土方の中で新選組に重みが増してくる。土方が益荒男の生き様を己の手の上に載せる峻厳に慟哭さえ覚えようかというに沖田の命の灯はいつきえはてるか。『平穏な世になったとて、惚れた女子と暮す先はないか』それよりこの先を共に暮らしてみたいと思えるような女子にあいまみえることさえないか。おそらく沖田の命が尽きるまでに平穏無事の . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」5

2022-11-20 21:21:43 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
『それほどの恋でもないか、それほどの鈴音でもないか』土方はこっそり己に嘲りを向けてはみた。『それでも、鈴音。お前は俺を慕ってくれる』女への甘えごと何もかもを包み、許す女はやはり土方には鈴音しかいない。どこかで鈴音の存在で己の男としての在り様を確かめている。だが、総司は女に対峙する男という部分を切り捨てて生きていられる。無論。男にとって女と対峙する男だけが男の生き様ではない。むしろ、ほんの少しの男の . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」6

2022-11-20 21:21:26 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
「じれったいの」土方の眼が痛い。総司は渋った返事を返したことの上手い言いぬけをさがすか、それでもこれを機会に二人にとってよき結末に結ぶ話が出来ぬか、を選択せねばならなくなってきていた。良き結末と云うのは結句脱党をすんなり許されることでしかない。総司には、ああは言ったが、土方は間違いなく立場上、佐部里信太次の恋を許すわけが無い。だが、佐部里信太次も勝をどうしたいのだろうか?新撰組をどうしたいのだろう . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」7

2022-11-20 21:21:10 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
「ねえ。ねえ。ねえ」突然の声がひびいた。「なんだ?」土方が声の方を見ると十くらいの蜆売りの小僧がたっていた。いかつげな土方に怖気も奮わせず「ああ。おじさんじゃないんだよう。そっちの」総司のほうを指差し手招きして見せると「大事な用をことづかってきたんだ」土方の存在がさも胡乱であるというように目配せをして総司にこっちに来てくれともう一度手招きをしてみせる。「え?私に?」総司がとまどうのも無理がない。見 . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」8

2022-11-20 21:20:55 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
土方がまず聞きたい事は総司が何故、鈴音のことにこだわらないかと云うことである。「おどろいたんだろう?」土方に女がいたことにである。「ええ・・・まあ」総司にとっては当然であろう。恋はご法度と唸っている新撰組の副隊長自らに女がいる。「まあ・・その・・なんだ」土方も説明が上手く出てこない。隊を抜けるような色恋じゃないんだ。と、言えばそれで済む所が総司にはそうはいかない。総司とここに来るまでに交わした話を . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」9

2022-11-20 21:20:37 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
「私は佐部里信太次さんに真剣に生きてほしいんです」総司の口から出た言葉の意味合いを量りかねて土方は口をつぐんだ。「お勝さんにも、思い半分。新撰組にも思い半分。こんな器用な事が出来る人じゃないと思うんです」それで、総司は「思い半分」をどうすればいいと、いいだすつもりなのだろうか?「で?どうしろというんだ?」土方は総司の先を促した。答えは単純明快すぎる。新撰組を選ぶか、お勝を選ぶか。「私は、佐部里信太 . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」10

2022-11-20 21:20:23 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
「実は・・」用意していた言い訳を切り出そうとした佐部里信太次は土方に言い訳を崩壊させられた。「佐部里。女の匂いがするぜ」「え?」虚を衝かれ佐部里も絶句した。「女ってのは、甘酸っぱい匂いがするっていうぜ」あくまでも土方の経験から割り出した推量ではないと、いいぬけの余地を残しておく事にも余念がない。土方の断定しきってない言い方に佐部里信太次も言いぬけを考え付いていた。「ああ?おかしいな?」口中で呟き、 . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」11

2022-11-20 21:20:00 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
『沖田さん。貴方が土方さんに話したんでしょう?どう、話したかは知りませんし、それを責める気はありません。でも、私の勝への気持ちは土方さんの言うようなうさをはらすためのものでも、死んでゆく私の生きていた証を、血を残すために勝を利用しているのでもありません』是を土方に言えば、いや、既に口に出せば『それでは、勝をどうするきだ?新撰組をすてるきか?』と、つめよられる事になる。佐部里信太次にとっては勝の事は . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」12

2022-11-20 21:19:46 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
屯所から原田の家に戻ろうとする、沖田の背に土方が声をかけた。「俺も、一緒にでよう」「土方さん?なにか?」総司はたずねた。「野暮な事をきくな」土方が出る用事が、昼間の一件のことであると、其の答えで総司もやっと気が付いた。「それに、すこし、話がある。みちぶちにはなそう」総司と屯所をでるのは、土方にとっても隊の者の手前つごうもよい。総司と一緒では、土方が私用にでるとはおもわない。ましてや、其の私用が女と . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」13

2022-11-20 21:19:33 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
『土方さん私は一世一代、たった一度だけ貴方をうらぎります』土方の読みの通り勝を連れて佐部里信太次が出奔するなら、勝と佐部里信太次の恋を護って見せると総司はきめた。小道を歩み始めた土方が振り返って総司に告げた。「後であおう」土方は今日、佐部里信太次を切り捨てる腹で居る。ぞっとする思いが早鐘のように鼓動を打たせる。総司は迷った。土方の新撰組への誠はこんな形で昇華するしかないのか?他にぬけみちはないのか . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」14

2022-11-20 21:19:14 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
夜も深けるというのに、総司は文机の前にじっとすわっている。勝に昼間の事を話せば、土方の意志をもはなさねばならなくなる。佐部里信太次が勝を選び新撰組を捨てるなら佐部里信太次を切る事になるが、お前はどうする?こんな問い質し方があるだろうか?問われれば勝は恋しい男を護るため、佐部里信太次には勝のことなぞ、本気なぞでないと、いいのけようとするだろう。そして、それが証拠とばかりに勝は佐部里信太次との縁をきる . . . 本文を読む

壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」15

2022-11-20 21:19:02 | 壬生浪ふたり・俄狂言・「恋語り」
「土方さん」二人の思いを確かめたら・・・土方はやはり、きるのだろうか?「勝さんの前で」佐部里信太次を切らないでくれと総司は言おうとした。「総司、俺が佐部里信太次を切らねば成らないとするなら、女のほうもそんな事はとっくに覚悟の上でふかみにおちているんじゃねえのか?」「・・・」命かけて恋を選んだんだ。命なぞなくなっても、もともと覚悟の上。どうって事ない。かまわしない。汚辱に塗れた思いでだかれるより、恋 . . . 本文を読む