萩尾望都作「ポーの一族」より ―キリアン・ブルスウィッグに捧ぐ―
少し、けだるい昼下がりだった。キリアンはもう一度鏡を見なければいけない。今、鏡に自分の姿が映らなかった。そんな気がした。恐れていた因子がとうとう増殖しはじめたのか?バンパイヤであるエドガ―に血を吸われ昏睡に陥ちいったマチアスが目覚めた。キリアンはそのマチアスに噛まれてからこの五月でまる二年になる。キリアンは変化を恐れた . . . 本文を読む
5年制の寄宿舎学校にテオといられるのはもう2年間だけだった。その間にキリアンは何一つ残さず塵となって砕け散ってしまう時を迎えるかもしれない。テオの言うとおり、単に人より成長が遅いそれだけの事かもしれないが、万が一の事を考えておかなければならない。いずれにせよ、この2年の間に答えは見えてくるキリアンは次の朝早く、庭の温室に向かった。マチアスが川の流れの底に居たロビンに引きまれその同じ日に代わりの生贄 . . . 本文を読む