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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

ー銀狼ー 1  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:47:01 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
業火を背負うか。揺らめいた影のうしろから、鬼火が立ちのぼる。澄明は歩む暗影を見つめ続けた。畳のへりから陽炎の如き沸き立ち集まる影がまたひとつの人型になるとやはり、先の暗影と同じ鬼火が立ち上り、まとわりつく。「どこへ?」澄明の声にわずかに耳をそばだてたようであるが、立ち止まりもせず、ふりむきもせず、答えようともしない。その夜はそんな怨亡が六体現れた。まんじりともせず、夜が白むを待つと澄明はまず、怨亡 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 2  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:46:43 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「なるほど・・」使いなるもの大きな黒い山犬だった。山犬は澄明に背をむけ、背中におぶされと示す。「おまえのあるじは、いったい、どうなっておる?」澄明の問いかけに答えず、澄明がせなにつかまると山犬ははしりだした。飛ぶがごとく、谷をこえ、岩をとび、みるまに、烏たちがとびさわぐ森のきわにおりたった。山犬はおおきな岩のむこうに一礼をし、澄明の到着をしらせていた。そこにーなにものかーがいるのは、間違いが無い。 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 3  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:46:26 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
犬神は阿波、伊予、土佐あたりの山奥に生息する。澄明はこの長浜において、犬神の実体を見たことは無かった。だが、その犬神は多く人に憑き、狐狸の類の憑き物とは違い、代々、その一族にかかっていく。犬神に憑かれると多く、精神に錯乱をおこし、狂気を見せる。だが、反面、犬神の力で、多くの富をえて、安泰に暮らせるという側面もある。「犬神は、白峰のように懸想するのだ」共に成れぬ相手でありながら、思いを寄せてしまう。 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 4  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:46:08 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「たつ子が、賤ヶ岳にすまう山の主に嫁いで、そして、その時になって、私は私が犬神であることにきがつかされた。たつ子は賤ヶ岳の麓の湖にその身を潜め、一男一女を設けたのち、わたしのせいで、気がふれてしまったのだ。狂ったたつ子は何度も、命をたとうした。だが、精霊がそんなに簡単に、存在をなくすことができるわけがなく、 たつ子は水の流れに身を任せ、琵琶の湖にたどりつくと、その身を石にかえた」「なんと・・・」 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 5  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:45:51 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
白銅が一番最初にここに降り立つのも無理は無い。朝から姿をくらました澄明の気配を追って、東の山に向かっていたからだ。「白銅・・・この前から沸いてきている怨亡の正体が判ってきた」「ふむ・・・」式神の口伝から、澄明が灰色の狼の傍らにいることはわかっていたが、それがことが、怨亡に結びつくとは思っていなかった。瓢箪から駒とはいわぬが、思わぬ糸口が見えたようだと得心する白銅に銀狼が訝しい声をかけた。「怨亡が沸 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 6  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:45:32 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
片割れを思う白銅の気持ちをみれば、銀狼はたつ子の背子である山の主の思いを見せ付けられる。 目の前の白銅のように、我が妹背を思う山の主の思い。 それさえ、たつ子から奪い取った。山の主を苦しめ、たつ子を苦しめた己でしかない。 それであるのに、悔やむなという。 なんとかしてやるという・・。 この男なら・・出来るかもしれない。根拠ひとつとてないのに、犬神は不思議な安心感に包まれていた。 次にや . . . 本文を読む

ー銀狼ー 7  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:45:14 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「繕稀は前世を読めます。先ほどは貴方の前世、今は、怨亡の前世を読んでいると思います」澄明に説明されるといっそう、銀狼はあっけに取られる。「なに?私の前世?怨亡にも、前世があるのか?いや、あるとして、読めるものなのか?いったい、私の何を読んだ?私の前世に何の関係があるという?」矢継ぎ早にたずねてくるのは、銀狼自身の理解がおよばぬせいである。銀狼も取り乱していると自分でもきがついた。「おしえてもらえま . . . 本文を読む

ー銀狼ー 8  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:44:56 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「なんだ?また、木乃伊か?」突然の乾いた声はかんらと明るい。不知火らしく、抜け目無く澄明たちのすぐ傍におりたつように、山犬に指図したのだろう。「不知火・・あいかわらず、こうるさい男だな」繕嬉のにくまれ口などものともせず、不知火は銀狼のそばににじりよった。「ふ~~ん」かすかに首をひねると、「あはは」と笑う。「澄明、おまえではらちがあくまい。こやつ、白峰と同じにおいがするわ」澄明が敗退を喫した相手は、 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 9  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:44:38 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「わからぬか?」澄明たちの反目をおもしろそうに眺めるとぽそりとたずねる。「雷を食らうというのだから、いづなは、誰の傍におりたがるや?」「それは・・当然、雷神でしょう」答えた白銅があっと、声を上げた。「もしかすると?波陀羅の一件の雷神?」榛の木に雷を落とし、榛の木の精霊を真っ二つに裂いてしまった雷神は落雷の衝撃で精霊に融合してしまったのである。そして、澄明たちの活躍で榛の木の精霊が元ひとつの身体に戻 . . . 本文を読む

ー銀狼ー 10  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:44:22 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「おまえは、いづなだった頃に、雷神の傍らに随身のごとく、はべっていたのだが・・・。雷神は、こともあろうに、若狭から、京の都までつづく、三十三間山、息吹山、比叡山、近江富士・・これらを総括する山の主の妻女に想いをよせた」「雷神がですか?いづなだった私でなく?」因縁が同じ事を繰り返すというのなら、山の主の妻女に懸想したのは、前世のいづなであるべき、気がする。だが、銀狼には、見えない前世の世界である、ま . . . 本文を読む

ー銀狼ー 11  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:44:05 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
澄明の屋敷はむこう一里にわたる結界が施されている。むろん、結界の中は浄化されている。出口を求める怨亡が浄化された場所へむかえば、結界の外に吐き出される。この作用をしってか、単に出口を求めた結果、澄明のもとに浮かび上がることになったのか、定かではないが、雷神が知らずに生み出した怨亡は本来の目的である、いづなへの復讐にかりたてられ、銀狼のもとへ向かった。「あなたの言うとおりだ・・。ここしばらく、得たい . . . 本文を読む

ー銀狼ー 12  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:43:45 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
大岩を梃の要領で動かすとき、銀狼の側に傾かぬように大岩の転ぶ道筋をつくるためである。あたりに梃になる倒木がないか、探しにいくようにと、白銅が澄明に言う。 「土の気は女子の手を傷める。手ごろな木があったら呼ぼうてくれ」気「はい」 夫の心使いに素直に従うと澄明は倒木を探すため、その場を離れた。猩猩を見張っていた山犬の一匹が澄明に従った。「あのようになるまで・・お前たちはずっと、銀狼を守っておったの . . . 本文を読む

ー銀狼ー 13  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:43:27 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
ーいずな?-前世がひょいと顔をだすことがある。一瞬浮かび上がったいずなの言葉をかみ締めて澄明は雷神の胸中を慮った。確かに朋友であるいずなの姿をみつけられなくなった雷神はいずなをさがすに間違いがない。20年以上の月日を榛の木のなかですごし、現世にもどってきてみれば、いずながいない・・。ーそういえばー榛の木から雷神がいできてから、雷が鳴ったのは、何度あったろうか?雷を何度とどろかせても、いずなが現れな . . . 本文を読む

ー銀狼ー 14  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:43:07 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
榛の木の焼け焦げた根方の脇の新しい芽が今の精霊の棲家である。その芽は鮮やかにのびあがり、澄明の胸元まで勢をあげていた。「いなづち・なみづち」澄明が精霊の名をよばわると、はたして「おお。澄明か」精霊がならびて、澄明のまえに浮かび上がった。「息災でおるな?」「無論じゃとて、なにもかも、おまえのおかげじゃ」にこやかに微笑む澄明をすかしみる精霊である。「して?我らを呼び出すとはいかに?」判りの早い精霊であ . . . 本文を読む

ー銀狼ー 15  白蛇抄第17話

2022-09-10 13:42:50 | ー銀狼ー   白蛇抄第17話
「澄明」白銅の声に澄明は頷いた。あの畳針は悪童丸の陽根を祀って封じこめてみせたふりと同じくはたまた、藤原永常が孔雀明王の台座の下に保管したのと同様に今は二人の住いの祀り主である久世観音・であり慈母観音であり、救世観音の台座の下に封じ込めている。*注*陰陽師でありながら、観音を祀ると言う部分は第3話ー白峰大神ーに、寄る*救世観音の法により、雷神が畳針を見つけ出すことは不可能なのだ。その針を掲げれば、 . . . 本文を読む