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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

宿業・・・1   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:02:37 | 宿業   白蛇抄第7話
佐奈と朋世からこの物語は始まってゆく。 佐奈の指先が細かく震えていた。佐奈のしでかした事に脅える眼のまま、少女は僅かに身体を動かした。男、いや、少年がもう自分を押さえ込むことはないと判ると少女ははだけられた着物の前を合わせていたが、今更逃げる気もうせはてていた。陵辱の痕に少女が気付くと、呆然としたまなざしでその血の色を見定めていた。―何かが死んだ。自分の中の何かが死んだー血の色は朋世の瞳の中でじ . . . 本文を読む

宿業・・・2   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:02:18 | 宿業   白蛇抄第7話
佐奈が見せれる事はもう何もしないという事だけであった。佐奈は伸ばした手を引き込めると立ち上がった。立ち上がりながら、佐奈は自分の口から出てくる言葉を一旦は飲み込んだ。が、今。その言葉を少女にかけることしか、少女を慰めるすべがなかった。同時に己を正当化させ愚かな佐奈自身を慰める言葉であった。「お前が・・・好きじゃ」口をついた言葉を、佐奈は自分でも、そうなのだと言い聞かせていた。少女の瞳から、つううう . . . 本文を読む

宿業・・・3   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:01:58 | 宿業   白蛇抄第7話
「なぐさみものにされただけだったわよ」幼馴染のお甲が笑って言い放った。村の神事の夜にお甲は定太に夜這われた。「これで一緒になれる。と、おもったのに、うまくゆかないもんだね」と、付け加えた。思う人に忍ばれる事を願って村の女子達は、しん張り棒をそっとはずしておく。「生娘じゃなかったのが、きにいらなかったんだろうね」お甲はあっけらかんといいのけた。しん張り棒を自からはずした以上、誰が夜這うて来ても、致し . . . 本文を読む

宿業・・・4   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:01:39 | 宿業   白蛇抄第7話
木陰から佐奈は少女をじっと見ていた。無事に村への抜け道にたどり着くのを見届けると佐奈は再び森の中に走り出した。走り出しながら「あれが・・・いかんかったんじゃ」佐奈は呟いていた。少女に出会う前、森外れにある炭焼き小屋で佐奈はくたびれた身体を休めていた。積み上げられた薪の後ろに隠れて佐奈は身体を伸ばした。いつの間にか、佐奈が深い眠りに落ちていたと、気が付かされたのは女の妙な声が聞こえたからだった。「陸 . . . 本文を読む

宿業・・・5   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:01:21 | 宿業   白蛇抄第7話
水を飲み干し、佐奈は身体にまとわりついた血を洗い流した。 「く・・・うう、あわう」奇妙な声がひどく苦しげに聞こえてきていた。佐奈は声の主を探し始めた。よどみの淵に突き出た川の曲がりはなの岩の上にそいつがいた。「河童(かわっぱ)か」佐奈は目を凝らして河童をみた。苦しげにうめく声は確かに河童の喉から漏れ出していた。よくよく見れば河童の足に杭が貫いており、河童は杭を引き抜こうとしながら引き抜ききれぬ痛 . . . 本文を読む

宿業・・・6   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:01:02 | 宿業   白蛇抄第7話
夜半を過ぎ、朋世の寝間の脇の戸が微かにきしんだ。何度となく、朋世がしん張り棒をはずしたかどうかを確かめに来ている男であろう。それがたった一人なのか、それとも、何人かなのかは朋世にもわからない。が、そっと今宵も戸が開かぬ事を確かめるだけだったはずの男の手が止まった。―はずしてある―男は息をのみこんだことであろう。そして、確証を得るために男はもう一度戸を開き始めてゆく。そっと、忍び込んだ男は朋世の布団 . . . 本文を読む

宿業・・・7   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:00:44 | 宿業   白蛇抄第7話
次の日。朋世は、小さな竹篭をだかえて、山に入っていった。「なんだい?いっしょにいこうかい?」朋世の背中から声をかけてきたのはお甲だった。春の山は、恵みの宝庫である。蕨やぜんまいを摘むのは、女子の仕事でもある。「うん」お甲と、一緒ならば心強い事である。朋世を先に立たせて歩いていたお甲であったが、ふと、「朋ちゃん。あんた・・」口ごもった。「なに?」お甲のようなはきはきした娘を口ごもらせた事がなんである . . . 本文を読む

宿業・・・8   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:00:27 | 宿業   白蛇抄第7話
定太がお甲の元に来るようになったのはお陸に愛想を着かされたからだったが、お陸が定太に愛想尽かしを食らわせたのは、お陸の中に周汰が入り込んだせいであるのをお甲はしっていた。「くそお・・・周汰のやろう」思わず定太が呟きお甲に挑んでくると狂ったようにお陸の名を呼んだ。そして、頂点に達する前になると「くそお。なんでおまえはお甲なんだよ」うっかり女をはらませてはいけない夜這いの定法どおりに脈を打ち出した物を . . . 本文を読む

宿業・・・9   白蛇抄第7話

2022-08-27 21:00:10 | 宿業   白蛇抄第7話
あれから・・・・―もう何度か周汰に抱かれた―五月の空に鈍い雨音が開き、山田の苗が慈雨を受けて伸びたった。朋世は炭焼き小屋に雨を逃れていた。遅い春に蕨はもう葉になり始めていたが、最後の摘み物のつもりで朋世は山に出かけていった。雨が降り出すのは判っていたが昼を過ぎてだろうという朋世の予想は外れてしまった。篠つく雨というが、まさにその通りに雨はそぼそぼと地べたを濡らし始め、やがて、朋世もぐっしょりと濡れ . . . 本文を読む

宿業・・10   白蛇抄第7話

2022-08-27 20:59:52 | 宿業   白蛇抄第7話
村の共同浴場というと実に聞こえがよい。竹垣で風をさえぎった露天風呂でしかないのである。そこで男は時折女を知らされることがある。お陸の手管に落ちた男。お陸との接合をもくろんで浴場に足を運ぶ男。どちらの馴れ初めが先なのかは定かでなくなった男にお陸は久方ぶりに顔を合わせた。「周汰さん」口説いたのか、口説かれたのか。身体を合わせなくなって、久しい周汰である。身体の疼きを癒されるだけを望んだ男ならお陸ももう . . . 本文を読む

宿業・・11   白蛇抄第7話

2022-08-27 20:59:35 | 宿業   白蛇抄第7話
朋世が周汰の元に嫁ぎ三年の月日が流れていた。生まれた子に周汰は草汰という名を与えた。「草は根強い。どんな事があっても地に根をはっていきる」畑に生える雑草ほど強い物はない。二つになった草汰を、膝に抱きかかえ周汰はほおずりをする。「それに何よりも、おまえにようにておる」だからこそ尚のことかわゆいと、周汰は言う。仲の良い夫婦でもある。そろそろ二人目が欲しいと周汰は言うが、言った口の下から人が聞いたら赤面 . . . 本文を読む

宿業・・12   白蛇抄第7話

2022-08-27 20:59:18 | 宿業   白蛇抄第7話
「わしは・・・」と、定太はつぶやいた。お甲に対してもお陸に対してもくだらぬ男でしかなかった。朋世に対する周汰の気持ちは確かに誠であろう。ゆえにお陸に対しての扱いは、くだらぬ女をくだらぬ男として扱ったという意味においてこれも裏側では誠でありえるかもしれない。だが、定太はどうであろう?お陸にただの肉欲をぶつけ、お陸をなくせばお陸の代わりにお甲を慰んだ。周汰はお陸を望まなかった。己の肉欲である事を十分わ . . . 本文を読む

宿業・・13   白蛇抄第7話

2022-08-27 20:58:58 | 宿業   白蛇抄第7話
夜中のお甲の寝間の戸を叩く者が居る。夜這いと言う村の慣習を疎ましく思いながらお甲は布団の中に潜り込んだ。お甲の傍らには三つに成る、娘が寝ている。甲は夜這いを無視しながらそっと娘の寝息を聞いていた。「この子がおるから・・もうよいに」と、いつものようにお甲は戸を開こうとはしなかった。が、戸を叩く音が変わった。「え?」この戸の叩き方をするのは、峯吉か、作次か。もう一人思い当たる娘の父親の名が浮かんだ。「 . . . 本文を読む

宿業・・14   白蛇抄第7話

2022-08-27 20:58:40 | 宿業   白蛇抄第7話
朋世は今日はひとりである。正確には草汰が側におったが、遊びつかれたのか草汰は転寝をし始めると、本当にぐっすりと眠り込んでしまっていた。畑に猪が出てくる。今日はその猪を狩ると村の男衆がこぞって、山に出かけて行った。若い衆には、いの一番にお呼びがかかる。「いやだとはいえぬわの。そんなことよりも朋世の側におる方がよいに」いつまで続くか判らぬ狩に周汰はため息をついた。「まあ。はようにしとめるまでよ。帰って . . . 本文を読む

宿業・・15   白蛇抄第7話

2022-08-27 20:58:22 | 宿業   白蛇抄第7話
軽く、うとうとした朋世は周汰でない男の手に目覚めさせられていた。「あ?」朋世が何おか言おうしたとき、男は「静かにせねば子がおきるに」と、朋世を制した。「あ?」男は佐奈であった。「わしの子じゃの?」佐奈は紛れもない事実を確かめるように尋ねると、朋世が草汰を思い、静まったのを良い事に朋世のほとに手を差し込ませていった。「ほ。満足させられておるようじゃの。かわいがってもらえておるようじゃの」朋世の肉の鬱 . . . 本文を読む