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憂生’s/白蛇

あれやこれやと・・・

七日七夜・・・1    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:03:52 | 七日七夜    白蛇抄第4話
「はっ。笑っておいでよ」邪鬼丸が人間の女に夢中になっていると笑われた事が、伽羅の自尊心を傷つけた。人間の女なぞに負けておるのかと笑われたのと同じだった。「あんたこそ、その内、人の血が恋しくなってほたえ狂うんだ」そう言った伽羅だったがはっとした顔をして鏑木丸を見た。その顔で、他愛の無いしっぺ返しの言葉でないと、鏑木丸が気が付いた。「どういう事だ?」「はあっ」大きく息を吐出すと伽羅は「いいよ。言うよ。 . . . 本文を読む

七日七夜・・・2    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:03:37 | 七日七夜    白蛇抄第4話
「伽羅」伽羅を呼ぶ声が響いた。邪鬼丸の声であることは判っているのだが、鏑木との後だけに流石に伽羅も心の内が穏やかでない。できるだけ平静を装ったつもりだった。「な、なんだよ」「ほ。連れない答えだな。ぼうずの物で満足したって事かい?」「な、何の事さ?」「とぼけるな。おりゃあ、あそこの木の上で、お前が鏑木の物に跨って踊り狂ってたのをずうっと見てたんだ」「え・・・」「伽羅。来い」邪鬼丸が伽羅の手を掴むと、 . . . 本文を読む

七日七夜・・・3    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:03:21 | 七日七夜    白蛇抄第4話
気が済まぬのは、鏑木丸である。頭上で乱行をおこなうのを黙って見た後は、その足ですぐ新羅の元に走っていったのである。我の男にすると言うたのが新羅と邪鬼丸のこともある。邪鬼丸を諦めて鏑木一本にするという事であると思うたのが己の子供ぶりであり、女の業の深さに謀れたと思うと如何せん悔しくてならない。「新羅。我の男が木の上でほたえ狂うておるぞ」「え?」「行ってみて、我の目で確かめて見ればよい」脱兎の如く駆け . . . 本文を読む

七日七夜・・・4    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:03:07 | 七日七夜    白蛇抄第4話
「安堵龍!?案、暗,土、竜」当て嵌まる簡単な字を思い浮かべて一語ずつ音を発っしてかなえは、地面に小枝で字を書いて見せた。アンドリューはそれをなぞるとかなえの書いた下に同じ様に字を書いてみせた。かなえは次に「か」「な」「え」と、一言ずつ区切って、かなえと地面に書いてみせた。「くぁ・ぬぁ・え?」「ああ・・そう。かなえ」「くぁぬぁえ」「そうです」アンドリューはじっと地面を見ていた。そして暗の字を指さし「 . . . 本文を読む

七日七夜・・・5    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:02:50 | 七日七夜    白蛇抄第4話
森が騒がしい。鬱っとおしい者がおるなと思う光来童子、鏑木丸の大人名である。その光来童子がふと、歩みを停めた。途端、その森の茂みの中から飛び出してきた男の子を避ける事も出来ず鉢合わせをするかのように行きあたってしまった。が、よく見れば女子である。男のようにたっつけ袴姿に髪を一括りに結い上げている。逃げると思うた向こうから、ぐいと近寄ってくると「ああ。暗土竜」目の前に飛び出してきた女子は光来童子をそう . . . 本文を読む

七日七夜・・・6    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:02:35 | 七日七夜    白蛇抄第4話
光来童子の消えた辺りをじっと見ていたかなえの後ろから、憐れなほどの息遣いが聞こえてきた。「は・・ひい・・・かあ・・かなえ様・・・ふうう」後ろから現れた海老名はぜいぜいと息をしながら「言う事を聞かずに・・・探しましたに・・・ほんに三つ子より悪い。聞いてもらわねば」思うまま心の内を口にだすものだから、何をいっているのかさっぱり要領を得ない。「海老名。父上の矢はあそこにありますに」開けた森の向こうにまで . . . 本文を読む

七日七夜・・・7    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:02:18 | 七日七夜    白蛇抄第4話
是紀は海老名が泣いた時のことを思い出していた。「嫁に行かぬか?」後添えではある。が、悪い話しではない。子は一人。姑、姑女はいない。が、云と言わない。あまりの強情につい「未通女のままか?男も知らぬような女なぞ女ではないわ」と、言った。言ってから、しもうた、と思った。「ならば、海老名はなんですか?」ただの乳母桜だとは言えない。「未通女ではいけませぬか」「役に立たぬわ。女子は男あってこそ女子じゃ。子を産 . . . 本文を読む

七日七夜・・・8    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:02:02 | 七日七夜    白蛇抄第4話
冬が過ぎた。光来童子に逢える事を出来なくさせた雪もようよう消え果てた。春になると、小川がせせらぎ出す。雪解けの水が冷たかろうに、蕗のとうが芽を出すのはいつも、決ってその小川の端が壱等早いのがかなえには不思議だった。冬になると火の見櫓まで、雪の上に足跡がついてしまう。それに冬になると雪で扉がすぐ開かない事がある。その為、冬には櫓の上まで梯子を外からかけてあるのである。櫓の上の台座の扉も固く閉められて . . . 本文を読む

七日七夜・・・9    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:01:48 | 七日七夜    白蛇抄第4話
大台ケ原の居室まで一飛びで帰りくると、もう夕焼けに空が赤くなってしまっていた。「明日も晴れる」が、童子の心の内は晴れる事は無い。微かな後悔を押し退けて果てない喜びが胸の高鳴りを一層高くしているのにである。御互いの気持ちが繋がると二人の間の垣根を取り払いたくなる。光来童子の中に芽吹いたものを欲望と呼ぶにはあまりに切ないものがある。「いかぬ。かなえは人間じゃに。これ以上は決して、ならぬ」そう呟く。その . . . 本文を読む

七日七夜・・10    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:01:30 | 七日七夜    白蛇抄第4話
一方かなえの方はと言うと。これも同じ様な事態になってしまっていた。城にぬける狭い横穴を屈み込みながらやっと火の見櫓の階の裏に出て来ると膝を折り曲げ、頭を低くして階の下を潜り抜けた。「あっ、あっ」そこに仁王立と言うが、まさにそんな風にして顔まで仁王の顔で海老名が待っていた。「そういう事で御座いましたか」よもや、こんな抜け道があるとは思っていなかった海老名である。忍ぶように火の見櫓に歩んで行くかなえの . . . 本文を読む

七日七夜・・11    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:01:15 | 七日七夜    白蛇抄第4話
春になるのを待って主膳は是紀のところへ出かけて行く。やれ茶の湯の道具立てじゃ、観梅じゃ、茶会じゃと、是紀もあれこれ用事を作っては、主膳を呼ぶ。主膳も、何やかと自分からよく出かけてくる。馬で飛ばしても近江からここまで半日はかかる。朝暗い内から馬を引き出し駆け通しにやってくる。「かなえ。茶の用意をしておけ」是紀の後ろから、かなえに軽く会釈する主膳を振り返りながら、是紀はかなえに茶の湯の仕度をしておく事 . . . 本文を読む

七日七夜・・12    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:00:56 | 七日七夜    白蛇抄第4話
身体を屈め低い潜戸を抜けて茶室に入るとかなえが座って待っている。「早う御座いましたな」「おお?おおう」狩りの獲物が良くなかったのかと思ったが是紀の顔突きの機嫌が良いのを見て取ると、かなえは主膳に向かって笑いかける。「父の御守も、大変で御座いましょう?」何があったか判らないが是紀の機嫌の良い顔は、我が親ながら可愛い子供の様なのである。そのように是紀に笑顔を作らせた主膳は何をしたのであろうか?「この父 . . . 本文を読む

七日七夜・・13    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:00:38 | 七日七夜    白蛇抄第4話
是紀が馬屋を覗いて見れば、青波も馬具の手入れに怠りが無い。青波は引き入れた三頭に飼葉を与え晒し布でその身体を拭き上げ終わると、どかりと腰を下ろしその膝の中に鞍を置き紗沙の布で拭き上げ艶をだしている。「よう、磨きおるの」「あ、はい」是紀が声をかけると青波は立ち上がって「黒毛の事ですか?」と、察しが良い。「おおう。どうじゃな」「まだ。十日ばかり掛りましょう」「そうなのか?」気に入りの葦毛の子を孕んだ黒 . . . 本文を読む

七日七夜・・14    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:00:22 | 七日七夜    白蛇抄第4話
その夜遅くかなえは馬屋に足を運んだ。思った通り黒影の番の為に青波は馬屋に泊まり込んでいた。人の入ってくる気配に馬達が脅えた様であったがその主が誰か判ると馬も静まり返ってしまう。「遅うに・・・誰であろう」歩んでくるものの静かで、身体の軽い足音がかなえでは無かろうかと思うと青波の胸が高鳴るのである。「青波」「あ」想う人である。青波は居住まいを正しながら「どうなさいました?黒は、大丈夫で御座いますに。こ . . . 本文を読む

七日七夜・・15    白蛇抄第4話

2022-12-10 11:00:07 | 七日七夜    白蛇抄第4話
怒声が劈くかのようである。「せ・・せ、青波が良い?もう一度言うてみろ」その怒声に恐れる事もなくかなえは繰返した。「青波が所で無ければ嫁に行きませぬ。主膳の所に行くなら、死にます!」言い放つかなえの眼の色を覗き込んでいた是紀であったが正気で言っておると判ると「おのれ」刀を掴むと馬屋に向かった。「青波を討つはお止め下さい。父上の御許しなからば、かなえは死にます」後ろから走りくるかなえがそう、叫ぶ。「お . . . 本文を読む