植物生態学者の見た「自然と山の幸」

刻々と自然は移り変わり,人工の景観が,自然の植生を破壊する。さあ!大変。せめて食べられる野生植物のすべてを次世代へ残そう

エビガライチゴの実り

2008-08-06 21:36:57 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
エビガライチゴ(ウラジロイチゴ)Rubus phoecolasius Maxim.
落葉低木,茎は斜上して伸長し,鉤針を疎生。茎,枝,葉柄,花序に,長い柄のある紅色の腺刺を密生し,葉は,ふつう3小葉。花の咲かない枝では,5小葉のものも出る。葉は,ときに3裂して,下面は,綿毛に
おおわれ雪白色。

花は頂生などして,総状か散房状の花序につき,花序はさらに複合して,枝の先に円錐状の花叢をつくる。萼は背面に紅色の腺けを密生し,軟毛もあり、裂片は尾状に伸長し,花時に開き,集合果が熟れると,再び開くが,それ以外のときは直立し,閉じている。花弁は小形で,きわめて淡い紅紫色,倒卵形で,長さ4-5mm,直立し,萼裂片の長さの3の分の1くらいしかない。集合果は球形,紅熟する。
◎完熟した果実を摘み集める。未熟果は脂(やに)っぽくて,味がわるい。色づきの薄い未熟果がまじらない
ように,完熟果を摘みとる。生食したり,ジャム,ジュースをつくれる。
ゼリーや,寒天などで固めて,冷菓をつくると,色が美しく,味もいい。
◎ていねいに洗い,加熱してから布で漉し,核をとり除いて,果汁を煮ると,フルーツ・ソースができる。
◎3倍量のホワイトリカー,ウオッカなどに漬けると,深紅色になり,中甘口のリキュールができる。

ウラジロマタタビの実り

2008-08-04 14:32:07 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
●サルナシ(シラクチヅル,コクワ)Actinidia arguta (Sieb.et Zucc.)Planch.ex Maxim.
樹木や岩などに絡み,幹は高さ30m,径10-15cmに達する落葉性木質のつる植物。葉柄は長さ2-8cm,しばしば淡紅色を帯び,葉は楕円形,広楕円形,広卵形など,短鋭尖頭,基部は円形か浅心形,長さ6-10cm,幅4-7cm,細鋸歯縁,厚質,上面は緑色,光沢があり,下面は淡緑色。
花は5-7月,白色5弁,径10-15mm,雄花の雄しべは,葯が暗紫色。両性花と,雄花と,雌花があり,
単性花と両性花が雑居する雌雄混株,雌雄異株がある。液果は広楕円形,長さ2-2.5cm,緑色→帯黄緑色に熟す。
北海道,本州,四国,九州で,低山帯の林縁にはえ,南千島,サハリン,ウスリー-中国-朝鮮に分布。

◎春の新芽を葉をつけたまま摘みとって,あえもの,煮びたし,きんぴらに。新芽,新葉を天ぷらにする。
◎果実は初秋から熟しはじめる。9-10月に摘みとって,生食,砂糖煮,料理の付け合せ,デザートなどにする。
野生の猿梨の実には,おなじ属のキウイ・フルーツと共通する味覚があり,果実は小さいが,果肉は,質が緻密で,味が濃厚。果物としては,キウイにおよばないが,リキュールの味は数段上。

●ウラジロマタタビ Actinidia hypoleuca Nakai
葉の下面が粉白色を帯び,萼片は,ほぼ無毛。本州(関東以西),四国,九州に分布。(写真はウラジロマタタビ)

ハナイカダも,7月下旬に黒く実る

2008-08-03 14:41:33 | ワイルド・フードなどの料理,その他利用法
ハナイカダHelwingia japonica(Thunb.)F. G. Dietrich(ハナイカダ属)
北海道(南部)本州,四国,九州の山地林下にはえる落葉潅木。
奄美大島以南,琉球のものは亜種 リュウキュウハナイカダ subsp. liukiuensis(Hatusima)Hara とされ,葉幅が狭く,披針状長楕円形,長鋭尖頭,長さ5─18cm。
花は5-6月,雌雄異株。葉の上面,中脈に,淡緑色の小花がつき,花弁は(3-)4(-5)個,3角状卵形,
雄花は数個が束生,花径4-6mm,雌花は,ふつう1個がつき,花柱はごく短く,柱頭は3-4裂。液果は
扁球形,径7-11mm,8-9月に黒熟。わずかに甘い。
◎開きはじめた若芽を摘み,天ぷらにする。さっと塩ゆでし,冷水にとり,白あえ,だし汁などで,鮮やかな緑色を,さわやかに味わう。
黒く熟した液果を,生食したり,リキュールの材料とするのは,好ましくない,と考える。