ワラビ
「石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」
先日野鳥観察でいった平磯公園にあった石碑にあった歌です。
万葉集巻八の冒頭を飾る、志貴皇子(しきのみこ)が詠んだ歌です。
この歌は、小学校の教科書にも載っています。小学校では鑑賞するのに、教師からつぎのような問がでます。
「作者はどこからこの情景を見ているのでしょう。 滝の上、真ん中、下から見上げている場所から」
「教科書の解説文には「滝」と載っているけれど、どんな滝だとおもいますか。」
「さわらびは、その滝のどこにあるのでしょう」
「植物の萌え出ずる春の到来を歓んで詠んだ歌」を感じ取ればいいと思うのですが、視覚的に理解を深めるのが小学校の勉強なのでしょうか。
植物学者はまた別の視点でこの歌を見ます。「さわらび」です。
滝のある場所には、ワラビは生えないだろう。この歌の「さわらび」とは、「ゼンマイそれもおそらく渓流沿いによく生えるヤシャゼンマイ」(木下武司.2010.万葉植物文化誌.八坂書房.p.617)
落ち着くところは「ワラビ」の名が古くからシダ植物全般を指す和名で、なんらかのシダ植物が生えていたということに。
今回は ワラビ コバノイシカグマ科ワラビ属
世界各地に分布している。日本では北海道〜九州の丘陵地の草原や道ばたに生える夏緑性のシダ。日本に分布するものは北米に分布する亜種 subsp. Japonicum。(海老原淳 著.2016.日本産シダ植物標準図鑑Ⅰ.学研.p.367)。
和名についても諸説。新芽の様子が「子供の手」に例えた「童手(わらべで)」、「童手振り(わらべてふり)」が変化して「わらび」がなんとなくしっくりします。
ワラビはシダ植物では進化した部類になるのは、シダ植物の進化「二環網状中心柱」で述べた。
ワラビは、平均温度が 10℃以上になると萌芽しはじめます。不定芽は前年の秋にすでに形成されているので、地温(10~15 センチの深さの温度)10℃になると伸びはじめ、15℃以上になると急にのびはじめます。
ワラビは、肉質のやわらかいもの、堅いものがありますが、それは生育地の環境が左右するそうです。
ワラビは、乾燥を極端に嫌う性質があり、適度の土壤水分と空中湿度と、土地が柔らかいところだと柔らかいワラビがとれるとのこと。日当たりのよい乾燥地のワラビは固い理由はそこにあります。
たくさん取れたらどうします。
干しワラビ。アク抜きをしたワラビを広げて日にあて、カラカラになるまで干して保存。
ワラビの塩づけ。ワラビは、塩づけにするとアクが抜けるので、わざわざアク抜きをする必要はない。
ワラビの粕づけ。塩づけのワラビを塩抜きにして使う。
今週は暖かい日がつづきます。ワラビの活動が始まります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます