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記事紹介:アドビがAcrobat 7.0のリリースを急いだ理由

2005-01-29 06:03:59 | ソフト
 「和を持って尊しとなす」

 このような文化的な背景を持つ日本では、「稟議」はごく普通の制度といっていいだろう。メールを中心とした電子文書がビジネスの中心となった現在でも、この制度は生き残っており、机上から机上へ,紙の稟議書が回され、押印が繰り返されている。この稟議制度が、日本の社内文書電子化への一つの障壁である事は明らかだ。現在のところワープロ文書を印刷せずに、電子稟議書としてLAN上で閲覧し、その文書に電子的押印する場合、特殊なハード・ソフトを使用するのが一般的ソリューションだろう.しかし,現時点では,この問題に対する標準的ソリューションが確立されているとは言い難い.特に,電子文書のデファクトスタンダードであるPDFに対する電子押印方式の標準化は,この日本では必須と思われる.

 PDFがこの日本においても,紙文書の電子化に大きく貢献してきた事はご存じの通りだが,電子文書として万能というわけではない.例えば,PDF文書は他のワープロ文書と比べて,表示が遅く,非力なマシンではスクロールもままならない.また閲覧ソフトのAdobe Readerは,立ち上がるまでの時間が長く,PDFを開くことにストレスを感じるユーザーも多かったはずだ.さらに,PDFの編集には高価なAcrobatの購入が必須だったため,メールでPDFを受け取った校正者がAcrobatを所持していない場合,わざわざPDF文書を印刷し,赤入れした後,郵送するといったケースもあったと思う.

 しかし以前紹介した記事を読んで頂ければわかるとおり,最近登場した有償のPDF作成ソフトAcrobat 7.0と,無償のPDF閲覧ソフトのAdobe Reader 7.0によって,日本の文書電子化はさらなる一歩を踏み出せるかもしれない.

 Impress Enterprise Watchの記事「アドビがAcrobat 7.0のリリースを急いだ理由」には,この新バージョンのリリース目的が,Adobe日本法人の担当者によって語られている.

 これらの新バージョンの目玉は,弱点である処理スピードの改善はもちろんのことだが,無償のPDF閲覧ソフトのAdobe Reader 7.0によって,PDFへ書き込みが出来るようになった点だ.この書き込み機能があれば,Acrobatをインストールすることなく,また紙に印刷することなく,PDF文書の校正や注釈付けが可能となる.Adobeはこの書き込み機能の付加により,PDFの「業務フローへの組み込み」を狙っている.つまり,業務の流れにおいて,今までPDFから紙に変換(?)しなければならない部分を,極力減らすという作戦だ.先ほどのPDFによる電子稟議書の問題も,新機能の「電子印鑑」機能を利用すれば,低コストで可能となるだろう.ちなみに,「電子印鑑」は電子署名とは連動していないため,あくまでも「三文判」による押印と考えた方がいい.

 新バージョンの発表当初,「もともと稟議の習慣のないアメリカで生まれたPDFに,何故に電子印鑑機能が?」と疑問に思ったのだが,この記事によってその謎もとけた.PDFは,今後もさらに,日本文化を吸収し,日常業務にとけ込んでいくことだろう.

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