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PCとネットワークに関するニュースコラム.

さらばPentiumM,こんにちはCore

2006-01-08 05:38:00 | ハードウエア
あけましておめでとうございます.今回も手短に…

 「Pentium」といえば,ご存じの通り,現在でも頻繁に用いられるIntelのCPUの名称だ.詳しくはWikipediaの記述を読んで頂きたいが,本来このCPUは,「i586」という無味乾燥な呼称を予定されていた.しかし諸事情により,「5」を示すギリシア語と「要素」を示すラテン語から造語され,「Pentium」と呼称されることとなった.すなわち,一般的なLSIやICと同様に,このCPUにも,その呼称として数字(世代番号)が,密かに(?)割り当てられていたわけだ.

 このような命名方法は,「8080」などの8Bit CPU時代から,30年近くPCに関わっている私にとっては,なじみ深い慣習であり,重宝もしていた.なぜならCPUの優劣が,その名称である数字によって,簡単に判別できるからだ.例えば「8080」と「8085」ならば,「8085」の方が高性能,「80286」と「80386」ならば,「80386」の方が高性能,といったようにだ.ところが,この長く続いた Intel のセミコンダクタ屋的命名法も,ついに終わりの時を迎えたようだ.

 1月5日,「2006 International CES」の基調講演で,PentiumMの後継のIntel モバイルCPUの名称が,「Intel Core(コードネーム:Yonah)」となると発表された.「Core」のクロック・TDP・ラインナップについては,ITMediaの記事を参照して欲しい.基本的にはデュアルコアCPU(「Core Duo」)なのだが,現行のデュアルコアCPU「Pentium D」と異なり,同じくデュアルコアCPUのAMD「Athlon 64 X2」と同様,2つのコアがFSBを共有する.ちなみに二次キャッシュは個別ではなく,2つのコアで共有し,コア毎のキャッシュ割当量を動的に変化させる方法を採用している.但し,「EM64T」機能はないので,「Windows XP x64 Edition」等の 64bit OS は使用出来ない.詳しくは,アキバ総研の記事を参照して欲しい.

 すでに,この新CPUを搭載した企業向けノートPCが,NEC富士通から今月中に発売される予定で,今後少なくともほとんどのノートPCには,この「Core」が搭載されることになりそうだ.デスクトップCPUにも,今後,この「Core」が採用されるかどうかは,定かではないが,少なくともモバイルCPU分野において,「Pentium(M)」というブランドの確立している名称を, Intel はなぜ捨てる気になったのか?その答えについて,思い当たる節がないわけではない…

 すなわち「Core(核)」と言う名称は,「何かのデジタルデバイスの中心に存在する主要パーツ」を意味して命名されたのではないかということだ.言い換えれば「Core」は,単なるノートPC用CPUとして開発されたのではなく,STBやデジタルTV等のデジタル家電への採用をも視野に入れて開発されたのではないか.

 そしてもう一つ,気になることがある.

 「Core」という名称が,どうしてもSCE・ソニー・IBM・東芝共同開発のPS3用CPU「Cell」を想起させることだ.余談だが「Cell」は9個のコアを持っている(注:PS3では8個のコア).この「Cell」も,PS3だけでなく,サーバや様々なデジタル機器に組み込まれる事を想定しており,組み込み汎用CPUとしての地位を狙っている.これは推測だが,業務用ワークステーションだけではなく,一般のPCへの「Cell」の採用も目論んでいるに違いない.もちろんその為には,「Cell」用のWindowsが開発される必要があるが,Wintel は簡単に分裂しそうもないと考えると,それはかなり難しいことではあるだろう.

 しかしPS3が爆発的に売れれば,「Cell」の単価は,恐ろしく下がる事は間違いない.さらには,コア数増減によるスケーラビリティをも「Cell」は持ち合わせているため,スパコンも含めて,PC以外はすべて「Cell」CPUという Intel にとっては,悪夢のような世界が出現する可能性は否定できない.確かに,Intel は,ここらで手を打つ必要はあったのだろう.

 今後,PCから組み込み分野に攻め込む「核(Core)」と,PS3から攻め込む「細胞(Cell)」の壮絶な戦いが始まるのだろうか?確かに「細胞」よりも,「核」は固そうではある.しかし,その「核」を包み込んでいるは,「細胞」なのだが…



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