猿八座 渡部八太夫

古説経・古浄瑠璃の世界

菅生一座 説経祭文芝居の挑戦

2015年10月08日 22時39分48秒 | 菅生歌舞伎
 毎年、吉例の菅生歌舞伎が、10月11日(日)に開催されます。本年の会場は、ご存知「野口邸」特設舞台です。バスでお出での方は、東海大学菅生高校までお乗り下さい。
 今年の見所は、佐倉義民伝「甚兵衛渡し場の段」です。歌舞伎は色々な浄瑠璃を活用して演出して行きますが、菅生歌舞伎では、「説経祭文」を取り入れての芝居に取り組んでいます。それと言うのも、あきる野市(旧秋川市と旧五日市町)や隣接する日の出町は、説経祭文の家元薩摩若太夫を輩出した地域だからです。二宮神社の神楽師だった古谷平五郎(六代目)、伊那の加藤健次郎(九代目)、大久野の浜中平治(十代目)等、江戸時代から昭和初期にかけて説経祭文の伝統がこの地域で受け継がれました。戦後、すっかり衰えたのは他の地域芸能と同じ運命でしたが、その十三代目を勤めたのが私でした。かつて、二宮神社で行われた古谷一族による二宮歌舞伎では、説経祭文で芝居を行った記録が残っています。
 ひょっとすると、説経祭文で芝居をするということ自体、百年ぶりぐらいのことかも知れませんが、それ以上に、菅生一座が、義太夫浄瑠璃だけでなく、説経祭文も研究して取り入れ、多彩な演出を試みている所が、とにかく見所、聞き所でしょう。乞うご期待。



稽古寸景:番小屋での宗吾と甚兵衛

説経祭文 野口太夫  三味線  中田恭子