和翠塾ブログ

目黒都立大にある書道教室「和翠塾」のブログです。

変化する『舞』

2013-08-29 10:01:17 | 日記
森鴎外『舞姫』に登場するヒロインのモデルとなった女性の写真が、あらたにドイツで見つかったとのニュースに触発されて、小野鵞堂の『舞』を臨書してみました。



BGMはチェロの独奏。
豊かな低音が、内に秘めた情熱を覆ってくれるようです。
可憐に、美しく、清楚で、自分に誠実な舞姫をイメージしてみました。


何枚か書いてみると、テンポ感を変えて書いてみたくなったのです。



『舞』の原型はとどめていますが、読めないかも。
ここでは流れる線をゆったりたどり楽しみながら、ソシアルダンスをイメージして書いてみました。


さらにそれをデフォルメするとアラビア文字風というか、速記調というか、平穏な書体になりました。



それをバレエダンスをイメージして書いてみました。


踊る舞姫の姿が重なってきました。

本来絵画的な物は好みではありませんが、自然発生的なものは拒む理由が見つかりません。


じゃサンバを踊らせてみようと思って書いたのですが、

あのサンバのステップを表現しようとしすぎて、作為的になってしまいました。
これは駄目です。


では最後にROCKの王道、8ビートで


存在感はありますが、もはや舞姫ではなく、デスメタルのリズムにあわせてヘッドバンクする南米女子って感じです(笑)


というわけで、森鴎外『舞姫』に一番相応しい書体は、四番目のバレエダンス風舞姫のような気がします。

一つの文字にこだわり、思いつくイメージのままに書き進んでいくのは楽しいですね。

出勤前のあっと言う間の三時間でした(笑)



鴎外をしたってドイツから日本にきた21歳の美少女が、一年少しで帰国させられた時の心中を察すると、あまりにも切ない。
『舞姫』の中でヒロインエリスは自殺してしまうのですが、モデルになった舞姫も日本を去る船中で心は死んでいたのでしょう。

森鴎外が渡航費用を工面して呼び寄せたのでしょうか。

幸いなことに、その後モデルとなった女性はユダヤ系のドイツ人と結婚し、86歳まで長生きしたのちベルリンでなくなったそうです。

『舞姫』が単なる創作小説ではなく、自我の苦悩を語った作品であることが、日本文学史上に燦然と輝く源泉になっていることは間違いないのです。

そしてそのきっかけこそ、エリスの純粋なる情熱であったのです。

エリス無くして鴎外は無く、舞姫無くして近代日本文学は始まらなかったのであります。

めでたし、めでたし。




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