断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

原発と経済的効率性の話

2013-09-20 23:01:42 | 原発のはなし
まあ、普段から
経済的効率性に背を向けて日常生活を送り、
経済的効率性以外のものを求めて
生きるのだ、と、息巻いているおいらが
こんなことを書くのもなんだが、

やっぱり、世の中で生活している以上、
スローガンだけでは、生きていけない。
だから、多少なりとも、経済的効率性の話を
することにもなるのだが、

だが、やっぱりどうしても、
原発稼働継続を支持する気にはなれない。
経済的効率性を考えれば考えるほど、
どうも原発は、リスクが大きすぎるのである。
と、いっても、あくまでも経済的リスクの話である。

原発が非常に大きな固定費を必要としていることは
論を待たない。
それはつまり、それだけ償却期間が
長くかかる、ということだが、
それだけの話なら、それほど目くじらを立てることはない。
問題は、その固定費の性格である。

周知のとおりで、原発の資産廃棄費用は
現状では計算不可能である。
勿論、将来は不確実だ、という意味では
あらゆる固定設備の廃棄費用は、(企業会計原則の規定にも
かかわらず)合理的な計算が
不可能である。
だが、原発がほかの固定設備と異なるのは、
廃棄の際に生じる放射性廃棄物の処理方法のめどが全く立っていないことである。
つまり、固定資本の廃却処理について合理的に計算できない、
と、いっても、その計算できなさの内容が全く異なっているのである。
もしも、放射性廃棄物の根本的処理方法が決まらない限り、
中途半端な状態での保管を永続的に続けなければならず、
所要引当金の額は、無限大になってしまうのである。
さらに、原発の場合、大量の経常廃棄物、つまり
いわゆる「核のゴミ」が発生する。
これは現状ではガラス瓶にまとめて地下に保管されている、
とのことである。これが将来仮に処分可能であるとして
その処分のための費用は不明である。

現在、政府主導で、電力会社には
原発の問題を無化するための特別な会計原則を設けるという、
見栄も外聞もないことが行われているが、
実際、このような会計原則に従って
投資判断をする投資家は
馬鹿者以外の何物でもあるまい。しかしその話は、
とりあえず、ここでは良しとして、

そのような恣意的で馬鹿げた会計原則ではなく、
通常の会計原則を適用して考えるなら、
固定資産の廃棄費用および産出されるプルトニウム他
核のゴミの廃棄費用は、
当期費用として、売上原価の中で計算されることになる。
勿論、政府や電力会社はそれを嫌って
プルトニウムの再利用ということで
もんじゅを造ったり、いろいろやってみたわけだが、
結果は、ますます、この固定資産廃棄費用を
上乗せしただけである(莫大な
運転費用や固定費用のことは、この際無視する)。

さて、固定設備の廃棄費用は、
想定されるか同期間の間に積み立てられ、
そして、日本の会計原則の場合、
費用は稼働中に費用項目で、「資産除却費用」として
計上され、同額がそのまま
負債項目の「有形固定資産除却債務」(引当金)として計上される。
そして、それと同時に
資産(固定資産)にも同額が加算され、その額が同時に減価償却され、
勿論それは減価償却累計額に加算される。
資産が計算通りの期間で廃棄されるなら
その最終年月には、
資産の価値は、取得原価プラス廃棄費用累計額となり、
それは減価償却累計人一致し、
そして、それとは別に、固定資産除却債務が
引き当てられ、実際の処分時には
この引当金に相当するキャッシュフローが
捻出されることになる。
勿論、引当金が引き当てられているからといって、
それが支出される時点にそれだけの支出が可能な
流動資産が存在しているかどうかはまた別問題であり、
それがなければ、いくら引当金を引き当てたところで
意味がないことになるが、それはとりあえず、
おいておこう。(ついでに言えば、前にも言及した通り、
仮にそのような流動資産があったとしても
原発のような高額の処分費を要するもののために
その流動遺産を、仮に、一気にキャッシュ化するようなことがあれば
資産市場への影響は避けられず、実際には
ほとんど引き当てていることに意味はないのではないのだろうか、
とすら、思えるのだが、
そのことも、今回は置いておこう。)
今回問題にしたいのは、
ここで、突然、例えばシェールガスのような
全く別のエネルギー源が出てきて、
原発のほうが経常コストですら高い、
と、いうことになったら、
日本経済は、どうなってしまうのだろうか
(まあ、いまどき「日本」経済、というくくり方をすること自体
時代遅れという感じがないではないが、
まあ、一つの問題設定としては、ありえなくはない。)

原発が、経常コストの面ですら安くないことは
もんじゅの失敗が決定的となった今
(と、いうより、最初から決定された失敗であった、
と、いう人も少なくないが)
もはや争う余地はないように思えるが、
それでも原油価格の高騰や、
地球温暖化の問題もあり、
まだ、原発の経済的優位さを信じる向きもある。
しかし、もしも(と、いうことにしておくが)
ここで、例えば、シェールガス革命あるいは
好みによっては、メタンハイドレード革命などが起こり、
より安価な電力供給方法が海外で開発されたら
何が起こるだろうか、ということである。

そうなった場合、日本(電力会社だけ、というわけにはいくまい)は
重大な岐路に立たされることになる。
もし仮に、工業製品の国際的な競争力を維持しようと
考え、新しい発電方式を大々的に導入すると、
日本には、大量の、
除却費用積立不足の汚染施設が残されることになる。
除却債務の(と、いうよりそれに対応する流動資産の)不足分は、当然、
新しい発電方式二より供給される電力の利用料に
上乗せされることになるだろう。
新技術の導入にもかかわらず、以前と同様の
高い電力を、需要者は購入する破目になる。
あるいは、新技術の登場にもかかわらず、
わざわざ旧態依然の原発を利用し続ける、という選択肢もある。
十分な償却を終えるまで使わなければ、
せっかくの投資が無駄になる、というわけだ。
もっともこの場合、本当に固定資本の償却費用を負担しているのは
結局は、顧客ということになる。
よその国では、安価な電力を用いているのに、
わざわざ高価な原発の電力を購入しなければならなくなるからだ。
そうなれば、結局、電力を大量消費する産業は
外国へ移転せざるを得なくなるだろう。

こうしたことは、実際、まだ原発に代わる新しい
発電技術が開発されていない以上、
あまり深刻に考える必要はない、といわれるかもしれない。
だが、そうではない。
いやしくも、高額の固定資本を投資する企業であるなら、
こうした可能性については常に考慮していなければならない。
世界最小のハードディスクを開発した東芝や日立は
結局、フラッシュメモリーを開発したサムソンに追い抜かれ、
大きな減損損失を計上することになった。
NTTはISDNにこだわり、結局DSLの導入に遅れ、
日本全体がインターネットの普及に後れを取ることとなった。
電力各社が、最終的には
政府によって保護されているから、というような理由で
原発に大きな投資をし続けた場合、
そして、外国で、原発より効率的な発電技術が開発された場合、
現在の固定資本の減損処理及び償却・廃棄処理費用は大きな重しとなって、
日本経済全体にのしかかってくることになる。
こうしたことは、あらゆる固定資本に共通のことではあるが、
原発の場合、これが特に問題になるのは、
放射性廃棄物の処理方法にまったくめどが立っておらず、
単純な減損や廃棄処理で済ますことはできないからである。
そして、こうした可能性について考えていないことこそ、
日本の電力会社および政府の経済戦略の甘さを示しているのである。


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