≪か≫
『かわいい子には、普通学級を旅させよ』(2)
このカルタを書いたあと、
「やっちゃん」と「Naoちゃん」の顔が浮かびました。
Naoちゃんは、「水着にゴーグル」の、あのNaoちゃんです。
やっちゃんは、もちろん『やっちゃんがいく』のやっちゃん。
二人はいま小学校6年生なので、来春には卒業です。
ちょっと前に会にきて、入学して…というイメージなのですが、
気がつけばもう6年が過ぎていました。
よその子の成長は本当に早く感じます。
そういえば、先日、会報の印刷の返り際、
やっちゃんに「さとうさん、さようなら」とふつうに挨拶されました。
クソガキが似合うやっちゃんが優等生みたいで、
ちょっとつまらない感じもしましたが、
「ああ、大人になっていくんだなー」と嬉しくなりました。
それに、「水着にゴーグル」です。
そうして、二人の成長を、月に1回くらいのペースで
見たり聞いたりしてきました。
だから、『かわいい子には、普通学級を旅させよ』という言葉を書いたあと、
それぞれのお母さんは来年の春には
「普通学級を旅させてきて本当によかったー」と
心から感じるんだろうなーと思いました。
旅立つ6才のやっちとNaoちゃんを、
親の不安や特別な配慮で引き止めなくてよかったと、
心から思っているだろうなーと。
この6年間の生活は、この子だけの人生の宝物の日々であって、
何物にも取替え用のない日々だったこと。
それは、通り過ぎてみれば、
いえ、通り過ぎた人だけに当たり前のこととして
実感されることなのでしょう。
子どもがふつうの旅を、りっぱになし遂げる姿を、
6年間という同じ時間をかけて見守ってきたのです。
そこから見えるものは、旅の思い出だけではありません。
旅に出なかった場合の空白のアルバムが、
子どものすぐ隣にあったこともまた、改めて感じるでしょう。
普通学級を旅する子どもに6年間、寄り添ってきた人だけが、
この子はふつうの子ども時代を確かに過ごしてきたと、
何の迷いもなく感じることができるのです。
ふつうの旅をしてきたからこそ、
子どもの「障害」よりも、「ふつうの子ども」の顔、声、表情、
笑顔や泣き顔に合えたのですから。
そうして、あと3年経つと、
二人とも「高校に行く」と言います。
必ず言います。
そのとき、その子の「ふつうの言葉」、「ふつうの子どもの言葉」を、
ふつうに受けとめる親の感性を育てる為にも、
子どもを旅させることが必要なのです。
私たちの常識的な頭で考えるだけでは、
「0点でも高校へ」が当たり前だという答えはなかなか出てきません。
子どもの旅に寄り添うなかから、その旅の先にある風景の一つとして、
「0点でも高校へ」という、
山頂からの広大な豊かな景色に感動することができるのです。
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