今日の地裁判決は「無罪」ということですが、それは「暴行がなかった」というのではありません。「証拠」がないと言っているだけのことです。確かに、確かな証拠がなければ、どんな犯罪も「無罪判決」になるのでしょう。疑わしきは被告人の利益に。
裁判所は、真実を認定するところではなく、ただ単に、「法律」という方程式に沿って解答を出すところなのでしょう。
私は、お父さんの言葉を忘れないようにしたいと思います。
毎日新聞・佐賀地方版に、 2011年3月14日から16日、父親の意見陳述の記事がありました。一部をここに置きます。
□ □ □
取り押さえ審判・証言録 父親の意見陳述 (※ 抜粋)
◇警察は証人を隠した
…審判の論告求刑公判が2月28日に開かれた。求刑に先立ち、安永さんの父孝行さん(49)が被害者参加人として意見陳述した。
【警察の捜査】
…健太が亡くなったことについて初動捜査が適正に行われたかどうか、非常に疑わしく思っている。
例えば、(現場近くの飲食店で、当時の)高校生2人が「警察官が健太を殴った」と言っていたと証言した。しかし、警察官はねじ曲げ、隠した。その結果、2人は法廷には出てこなかった。このように、警察官が健太を殴ったところを見ている人は何人もいるのに、警察官はその証言を積極的に収集しようとせず、意図的に隠した。
【証言誘導】
法廷に立った(当時高校生の)女性は「警察から『(安永さんの)体に当たっているのを見ていなかったら、たたいていなかったかもしれないのですよね』と言われ、取り調べの際に誘導された」と証言した。
このように、警察側の証人はほとんどが誘導されて調書を取られたのでないか。取り調べ段階で警察に誘導されているからこそ、法廷での被告側証人の言うことは、みんなバラバラでちぐはぐ。自分で見たことを言っているなら、証言は一致するはずだ。
他方、検察側の証人2人の証言はほぼ一致していた。それは、それぞれが真実を語っているからこそだろう。
◇なぜ健太の死が不問に
警察官らが、健太を死亡させたことについて最初から真摯に謝罪していれば、この事件を問題にすることはなかったと思う。警察官が最初からうそばかりをついたからこそ、この裁判になった。
私は間違いなく、事件当日、病院で警察官から「健太がバイクを蹴って逃げたから取り押さえた」と説明を受けた。その時、警察官らは保護とも精神錯乱とも一切言っていない。
健太の叔母も、翌日警察署に行った際は「警察官らが自転車で蛇行運転をしている健太に気づき、アルコールの影響か覚せい剤使用を疑った」と説明を受けた。
事件直後の警察官の説明通り、警察官らが健太をアルコール中毒か薬物中毒と思い、それが突然逃げたと思ったからこそ、激しくしつこい、正に逮捕と言うべき取り押さえをしたのだろう。
警察官は、これまで何十件、何百件と保護をしてきたはずだ。それが、どうして今回に限って、対象者である健太が亡くなったのか。それはまさしく、取り押さえをした警察官らに、健太を保護するつもりがなかったからだ。警察官が最初から保護するつもりで健太に近づいていたら、健太はびっくりして抵抗することもなかったと思う。それを警察官らは、後から保護と自分たちに都合のいいように組織的に取り繕った。後から平気で保護と説明を変え、ごまかすばかりで何の謝罪もなかった。だからこそ、現場で何があったか調べるためにこの裁判を起こした。
被告は裁判で「自分の日常生活が一変した」と述べたが、日常生活が一変したのは、突然理由もなく未来を閉ざされた健太と、突然健太を失った私たち親族の方だ。
◇最高刑で裁いてほしい
【保護行為】
被告は取り押さえ行為について、正当であったとばかり繰り返すが、本件行為は、抵抗する健太を力任せに両手錠にしてその後も押さえ続けるなど、明らかに過剰だ。
警察はいつも保護という名でそのような過剰な取り押さえを行っているのだろうか。保護とは警察官の違法行為の免罪符なのか。私はそれが一番怖い。保護と言いつつ、こんな過剰なことが行われるなら、罪を犯した容疑者に対しては、もっとすごい取り押さえが行われているということか。健太はまぎれもなく知的障害者であって、まぎれもなく保護という名の取り押さえ行為の結果、死亡した。死亡させてもそれが保護であり正当だというのなら、警察官の服装をしていればすべて許されるということか。
私は、すべての警察官に、警察官である前に人であってほしいと思う。被告だけでなく、健太の取り押さえにかかわった警察官すべてにそう言いたい。
警察は、正に弱者が頼っていくところで、道に迷った人、困っている人に手を差し伸べる。健太はそのような警察官だからこそ、あこがれていた。その健太がどうして警察官の手によって死ななければならなかったのか。警察による弱い者いじめは、健太で最後にしてほしい。
【量刑意見】
警察官が謝罪や説明をせずに、証拠隠しを繰り返し、健太が亡くなったことの責任追及もなされていないことに大きな不満を持っている。
被告が、自分の取り押さえ行為のどこが悪かったかについて見直すつもりはない、と法廷で述べたことにも、大きな怒りを感じている。このままでは健太は浮かばれない。
被告を特別公務員暴行陵虐傷害罪の最高刑で処断してほしい。
(この企画は蒔田備憲、田中韻が担当しました)
毎日新聞 2011年3月16日 地方版
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