「守りたい思い」と「守られるもの」(その6)
「本当に聴いてもらう」とは、どういうことだろう、と書いて、ふと声が聞こえました。
「私たちは、聴いてもらうことに飽き飽きしています」
どこで聞いたのだったか。
どこで読んだのだったか。
探してみたら、向谷知さんの『技法以前』という本でした。
この本の第4章は、【「聴かない」ことの力】といいます。このことを書きだすと、みつこさんのところに帰れなくなるので、気になる所だけ紹介します。最初の言葉は、正確には次の通りです。
◇
「向谷知さん、変に思わないでくださいね。
生意気と思われるかもしれませんが、
自分の気持ちを正直に言わせていただきます。
いままで息子のことでは、関係者のみなさんには、
本当に一生懸命、毎回同じような私たちの生産性のないお話を、
辛抱強く聴いてもらってきました。
でも、言わせてください。
私たちは、もう、聴いてもらうことに飽き飽きしています。
こんな言い方をして御免なさい。
でも本当の気持ちです。
ずっと『それは大変ですね』『よく、やっておられますね』と
聴いてもらって五年が経ちました。
でも慰めはもう結構です。
私はこの現実を変えたいんです…」
◇
「統合失調症をかかえる一人息子は、二十代で統合失調症を発症し、すでに十五年以上が経過して、現在はほとんどの時間を家で過ごしている。トラブルの内容は、家の近くにあるレストランを訪れる車のドアの開閉音や客の話声が『自分に対する嫌がらせ』だと言って、店に苦情を入れたり警察に訴えたりする行為が続き、両親としても対応に困り果てている。…現在では一日30錠を超える量の服薬している…」
◇
そして、遠く北海道の向谷知さんを訪ねたのでした。
地元の主治医や看護師、ワーカーはどんな時間でも、家族や本人の訴えや相談をじつによく受け止め、話を聞いてくれるという、その後に出た言葉が、はじめの言葉です。
「私たちは、もう、聴いてもらうことに飽き飽きしています」
「聴くこと」、「受けとめること」は、
じつに不思議で難しいことのようにも思えます。
最新の画像もっと見る
最近の「『みつこさんの右手』と三つの守り」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(451)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(28)
- 0点でも高校へ(395)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(161)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(133)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(58)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(85)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(352)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事