ワニなつノート

高校と、自分の居場所 (その7)

高校と、自分の居場所 (その7)


定員内で不合格にされる子どもの苦しみに対する無感覚と、
「入試」という権威に対する従順のために、
この社会は今の形の高校入試を続けています。


平成20年・中学3年生の生徒の数。
118万8725人。

この内の758人だけが、
最終的に定時制高校からも
「定員内不合格」にされ見捨てられているのです。

わずか0.0006%の子どもです。

その子たちだけが、
中学からは「もう終わり」と投げ出され、
高校は「席が空いていてもお断り」と門前払い、
ほとんどの職場からは「中卒お断り」と拒まれるのです。

子どもの頃から見ているテレビのドラマにも、
マンガにも、現代を中卒で生きる人の情報はほとんどなく、
世間は、「中卒」や「中退」を、
「落伍者」のように扱うのみ。


3月の終わり、定時制の最後の追加募集でも、
「定員内不合格」を出す選抜入試。
(約120万人のうちの数百人を、
頑なに拒む入試選抜とは、「何を選抜」しているのか。

「教師が、こいつには教育するだけ無駄だと、
生徒を拒むこと」を、選抜というのだろうか。
ここまでの「少数者」を除外するための制度は、
選抜というよりは、差別抹殺の仕組みというべきだろう。
(いや、選抜とはそれが正しい意味だったか…。)

「0.0006%に入るのがいやだったら、
そうならないために必死で競争しろ。」

しかし、ほとんどの子どもにとって、
それは「競争」するまでもなく、
ほとんど何の努力さえせずに「勝てる」競争でしかありません。

それでも、高校に向けて中学生を競争させるためには、
それが必要だと考えられているのでしょう。

高校入試は、義務教育の最後の仕上げの儀式です。
この社会が、「義務教育」を終える15歳の人に課す
「儀式」です。

今年は、758人が、この制度の犠牲になりました。
たった758人を捨てるこの制度に、何の意味があるのか。


    □    □    □

ユダヤ人を指すのは義務                 
= 良心の呵責不要。

すし詰めになって運ばれていくことは前から皆知っている。 
= 良心の呵責不要。

児童の大量銃殺は合法的                 
= 良心の呵責不要。

5分遅刻して出勤するのは、職務規定に反する。      
= 良心の呵責。

荷揚げ場での勤めをグウタラするのは義務観念にもとる。  
= 良心の呵責。

ガス室にガスを流し込むのは決まり。           
= 良心の呵責不要。

昼休みの延長は許されない。      
したがって、やはり良心の呵責。


   □    □    □


「高校は義務教育じゃない」、
「15になれば就職も出来る」、
そういう社会を目指すのであれば、
こんなに高校を作るべきではなかったのです。

高校進学率を50、60%程度に抑え、その上で、
中卒でちゃんと就職できる社会を作ればよかったのです。
それを、誰もが高校くらい行きたいと、
子どもに高校くらい行かせたいと、
次々と高校を作り続けてきたのです。

養護学校に在籍する障害児も含め、
すべての子どもに後期中等教育の機会を与えるという
大義名分のもと、国をあげて高校を増やし続けてきたのです。

しかもこの少子化の時代、
次々と高校を統廃合している時代に、
全国でたった数百人の子どもたちだけを、
高校から排除する仕組み。

「高校は義務教育じゃない」「自分で働け」
税金で建てられた学校、
定員分の教員も準備された学校、
そこに席が空いているのに、
座らせないということを繰り返し続ける制度。

それは、やはり、見せしめであり、
生け贄としか、私には感じられません。
そうではない、という納得できる説明を、
この24年間、一度も聞いたことがありません。


そして、そうした高校のあり方、
教員の意識をそのままで、
来年から「高校無償化」になろうとしています。

高校に入りたいという0.0006%の子どもを、
席があるにもかかわらず捨てておいて、
高校生になった330万人分の授業料は、
無料にしましょう、支援しましょう、と言うのです。

どう考えてもおかしいでしょう。

高校生336万人の授業料を援助する予算があるなら、
1000人の子どもを定時制高校に
入れることができないわけがありません。

いや、人として、それが先だろうと、私は思います。


   ★    ★    ★


平成元年の高校生の数。
564万4000人。

平成20年の高校生の数。
336万7489人。



200万人も高校生の数が減っている今、
1000人の子どもの高校教育を
保障できない理由はありません。

絶対にありません。
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