ワニなつノート

 つばさのものがたり~

 つばさのものがたり~


「でもね、私の背中にはまだ羽がないの」

すると、先生はにっこり笑って、えりの肩に手を伸ばした。
「ここに、あるじゃない」

驚いてえりが振り向くと、先生の手が翼の形をなぞっていた。
「ほら、ここに」

えりの目に、つばさの輪郭が見えた。
「わたしの?」

「あなたの背中でしょ」

「昨日はなかった」

えりは、もう一度、自分の背中を振り向いた。
さっきの輪郭が、まだ目に残っている。
でも、なにもないようにも見える。
さっきのは、なんだったんだろう…。

「消えちゃった…」
えりが消えそうな声でつぶやく。

「だいじょうぶ、消えてはいないわ。
でも、いつでも、だれにでも見える訳じゃないから」

「ほんと?」

「ほんとうよ。
あなたのつばさは、蝶のようなふんわりした大きなつばさなのね。
あなたはそのつばさで、みんなと一緒にいたいって願ったんでしょ」

「うん。でも……」

「でも?」

「どうしてもくり上がりができないの…。
何回やっても、何回きいても、すぐにわからなくなっちゃうの。
だから、ここじゃなくて、また、
わたしにあった教室に戻った方がいいって…」

「あなたはみんなに会いたくて、ここにきたんでしょ。
くり上がりのためじゃないんでしょ。」

「うん…」

「それなら、ここでゆっくりやればいいわ。
ここには、くりあがりより大事なこと、
楽しいことがいっぱいあるわ。」

「うん」
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