昨日から、『リハビリの夜』という本を読み始めました。
「脳性まひの小児科医が、
自分の子どものころのリハビリ体験を…」
という言葉につられて、手に取りました。
まだ最初だけですが、
「介助される」側の子どものことばを聞くことができる、
という予感は当たりでした。
わたしが「言葉のない子ども」の「感じるだろうこと」を、
いつも勝手に書いてきたことが、
決して的外れではなかったという思いを感じます。
小学生の「私」は、毎年、夏休みの終わりに、
片道5、6時間かけて山奥の施設に行き、
一週間ほどのリハビリの強化キャンプに参加していたそうです。
□ □ □
「そんなまなざしの先で、
私は体の緊張を強くして、「障害児」になる。
私が持つ私自身についてのイメージというものは、
ほんとうに置かれた環境によって変わるもので、
この施設に来ると小学校の教室にいるときに抱く
私自身へのイメージは消えて、
そのかわりに潜在化していた
「障害児」という自己イメージが引っ張り出された。
小学生の私は、リハビリのときぐらいしか
障害を持った他者に出会うことがない。
周囲を見渡すと、施設にきたほかの子どもたちも
私と同じように小さくなって、
外界のどこにもまなざしを注げずにいる人間特有の、
うつろで落ち着かない目をしていた。
それはまるで、今の私を鏡に映したみたいだった。
どこを見ても私だ。
「私」たちはまなざしによって
「私たち」にさせられる。
「私たち」は、
そんな大人たちのまなざしを避けるように、
畳の敷かれた大人のいない休憩室へと這っていく。
(57)
『リハビリの夜』 医学書院
【著者紹介】
「熊谷晋一郎 1977年生まれ。
小児科医。
新生児仮死の後遺症で脳性まひに。
以後、車椅子生活となる。
小中高と普通学校で統合教育を経験。
大学在学中は地域での一人暮らしを経験。
東京大学医学部卒業後、千葉西病院小児科での勤務を経て、
現在、東京大学先端科学技術研究センター特認講師。
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